【2013年 第6回 在宅介護の限界】高齢期の介護とすまい
岡本 典子 ⇒プロフィール
介護保険制度では、要介護度別に介護保険サービスを1割負担で使える限度が決められています。それを超えると10割、つまり全額自己負担となるため、多くの場合、限度額内のサービスですまそうと考えます。では、1割負担分だけで充分な介護が受けられるのでしょうか?
介護保険サービスの支給限度
介護保険を使いたい場合は要介護申請を行いますが、認定により要介護度が決められ、それに基づいて1割負担で使える介護保険サービスの支給限度が決まります。要介護度が高くなるほど1割負担で使える介護保険サービスが増えていく方式です。
具体例で見ていきます。
脳梗塞で倒れ、その後遺症で半身麻痺と言語障害が残る66歳の太郎さんは要介護3の認定を受けまし
た。65歳の妻花子さんが介護し、近くに住む長女舞子さん(40歳)が時々手伝ってくれています。太郎さ
んの希望で、介護保険サービスを使いながら、無理のない在宅介護を続けています。
在宅介護をはじめるにあたり、手すりを付けバリアフリー改修を行い、ポータブルトイレを購入しまし
た。これは1割負担となる介護保険を利用しました。
太郎さんのケアプランと自己負担額は下記の通りです。
介護保険の利用は訪問看護、訪問介護、デイケア、ショートステイの利用で、介護が楽になるようにベッドと車イスをレンタルしています。
このように花子さん、舞子さんという2人の介護者がいる環境でも1割負担分を超過し、38,240円/月かかっています。介護保険の1割負担分だけでは無理のない介護が受けられるとはいえないことがわかります。
在宅介護が可能な条件
太郎さんのように在宅介護を希望する人が多いのですが、在宅介護が可能かどうかは、要介護者の状況と介護する家族の「介護力」がどの程度あるかにより決まるといえます。
「介護力」をはるかに超える負担を続けると、介護する家族が病気になったり、足腰を痛めたり、介護放棄に繋がることもあります。また、介護のために仕事を辞め、介護に専念する人が年間14~15万人いますが、これは避けなければなりません。なぜなら、家族の収入源が要介護者の年金と貯蓄の取り崩しに頼ることになるからです。
さて、極端な例ですが、資金がふんだんにあるなら、在宅介護は可能といえます。
介護保険では1割負担で使える介護サービスには限度があり、受けられるサービスも範囲が決められています。例えば、老夫婦だけの家庭でも、介護保険サービスで作ってもらえる食事や洗濯は要介護者の分だけです。一方、一般の家事援助や家政婦さんを利用すれば、掃除、洗濯、庭の手入れ、ペットの世話など、契約によりさまざまな家事サービスを受けることができます。
夜間もずっと介護を受けたいなら宿泊介護も受けられますし、旅行に連れて行ってほしいならそれも叶います。
しかし、これらの民間サービスをふんだんに利用すると料金はそれ相応に嵩み、多額な資金が必要にな
ります。十分満足できる介護を受けるには、月額100万円以上かかると考えましょう。
つまり、要介護度が高くなり在宅介護を続けるには、家族の負担が高くなるか、費用負担が高くなるかのどちらかといえます。
在宅介護の限界のめやす
介護保険をフルに使って、あまり無理をせず、家族がそれぞれの生活を維持していける状況を前提にす
れば、「在宅介護の限界は要介護3程度まで」といわれています。
もちろん要介護度が同じでも、個別の状況は全く異なります。要介護4でも可能なこともありますし、
老老介護では要介護2でも厳しいケースもあります。
在宅介護の限界を感じたら
要介護者と夫婦など家族が最期のときを惜しむように、心を通じ合って安らかに在宅ですごすのが理想
ではありますが、介護するのは体力、気力とも傍からはわからない苦労が多いものです。家族に負担がかかり過ぎると、上記のようにさまざまな問題が生じてくるのも現実です。
昨年から24時間定期巡回・随時対応型サービスがスタートしました。
まだ日本中どこでも利用できるわけではありませんが、在宅介護を支援する方向に進んでいることは間違いありません。まずは身近なケアマネージャーさんに相談するのがよいでしょう。
しかし、どうしても在宅介護が難しいようなら、施設を利用することも考えてみましょう。
一昔前までの施設のイメージとは変わりつつあり、施設は身近になってきました。そのため、要介護になる高齢者が増大する状況下、多くの人が施設を利用したいと思うようになり、特別養護老人ホーム(特養)など、料金が安い公的施設は思い通りのタイミングで入所することが困難になっています。
在宅介護が難しくなったからすぐに施設に入所できる状況ではないことから、ケアマネージャーさんと密に連絡を取りながら相談にのっていただき、家族が通いやすい施設に早めに申し込みをしておくことも検討してみましょう。
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