【2013年 第2回 超高齢社会における介護の現実】高齢期の介護とすまい
岡本 典子 ⇒プロフィール
年々高齢者が増えていますが、それにより介護が必要になる人も増えていきます。最期まで自宅でくらしたいという思いはあっても、同居の家族がいない、家族も高齢で十分な介護ができないという状況があります。
要介護認定者数は548.6万人
厚生労働省介護保険事業状況報告(暫定)によれば、平成24年10月末における要介護(要支援)認定者数は548.6万人で、第1号被保険者(65歳以上の人)に対する割合は18.0%です。これは、高齢者になると、およそ5人に1人は何らかの介護が必要になり、要介護(要支援)認定を受けていることを意味します。とはいえ、要介護(要支援)認定を受けていても、まだ自分で何とかやっていけるとか、家族が介護しているからと、20%以上の人は介護サービスを使っていないのが現実です。
介護する人はだれ? その負担はどのくらい?
実際介護しているのは誰なのでしょうか。
『平成23年度高齢社会白書』を見ると、その中に厚生労働省「国民生活基礎調査」(平成19年)を基に作成したグラフがあります。
やはり同居の家族が60%、男女別では女性の割合が高く71.9%。男性は28.1%ですが、徐々に男性の介護者が増えていく傾向です。内訳を見ると、一番多いのは配偶者。さらにその下の介護者の年齢に目を移すと60歳以上が多く、特に男性介護者の高齢化が目につきます。
介護者等からみた主な介護者の続柄
要介護度別に、どの程度介護に時間を要しているかを、同じく「国民生活調査」による下の表でご覧ください。
平成16年と19年の比較では、介護にかかる時間が長くなっていることがわかります。
また、当たり前なのですが、要介護度が高くなると介護する時間が長くなっている様子もきれいに表れています。
問題なのは、重介護になると「ほとんど終日介護が必要」な割合が高くなることです。
要介護5ではほとんど一日中つきっきりで介護しているケースが52.7%という数字に注目してください。
これではフルタイムの仕事はできません。
要介護者の隣にいて、在宅勤務でできる仕事に変わるなど、何らかの対処が必要です。
同居している主な介護者の介護時間
介護離職
介護が原因で仕事を辞める、仕事を換える。
やむにやまれぬ選択ですが、毎年14~15万人(「就業構造基本調査」(平成19年))が職場を去っています。
介護しながら時間的自由がきく仕事を見つけるのは容易ではありません。
仕事を辞めれば、生活費は親(要介護者)の年金が頼りになります。
いずれ介護から解放されたら復帰すればよいと思っていても、終日介護で長らく現場を退いてしまうと、激動の時代に取り残されるおそれもあります。
―「仕事と介護の両立」がベスト―
それには利用できる介護サービスは上手に使い、親族やご近所さんの力も借り、何とか乗り切る道を模索するのが大切です。
両立させていくための長期的な介護計画を立て、実現できるような環境作りを綿密に行いますが、そこでは「介護休業」を利用します。急きょ休んで通院の付き添いをしなければならないときなどは「介護休暇」を使います。
いずれ親の介護が…と心配な人は、仕事を辞めずに有効な手段を適切に使えるよう、日頃から介護している人の話に耳を傾ける姿勢が大切です。
遠距離介護
遠方にいる親の介護をしなければならない場合もあります。
遠距離介護の難点は、何かあってもすぐに飛んでいけない、交通費が高くつくことです。
息子や娘の近くに居たほうが安心と、高齢になってから住み慣れた土地を離れ遠方への転居は必ずしもいいとは限りません。その家族の状況、親の性格などを考慮し検討します。
高齢者向け住宅や施設利用も選択肢
ひとり暮らしで見守りや介護を受けたい、家族と同居だが仕事が忙しく介護できないなどの理由から、介護保険施設や、ケアハウス(※1)、サービス付き高齢者向け住宅(※2)などに住み替える人も増えています。しかし、どこの施設でもよいというわけではありません。心身の状態や年金収入、持っている財産を考慮して施設を選択しなければなりません。一見同じような設備やケア体制であっても、完成と同時に満室になる施設もあれば、開設後何年経っても入居率が50%程度というところもあります。
介護される人に本当にあっているのか「厳選」する必要があります。
皆がよいと思っている施設は、やはり待機人数が多いのが現状です。
私がお尋ねしてみたちょっと気になる2つの高齢者住宅の状況です。
・ケアハウスA
以前見学し「ボランティアなど社会貢献に前向きに生活している人が多く、老後を楽しめそう」と脳裏に焼き付いていた施設です。交通の便もよく、ケアハウスなので安い。
最近聞いたところ、なんと待機者は106名。おおよそ8年待ちとか。
・サ高住B
3年ちょっと前に高専賃として建てられ、昨年サ高住に。それが今や人気で満室。広めの部屋を指定して入居できるかと聞くと、なんと4名の待機者がいると。
≪まとめ≫
介護の形はいろいろありますが、介護が必要な高齢者と家族が無理を重ねず、穏やかにくらしていけることがポイントです。柔軟に対応できるよう、行政や地域包括支援センターなどを利用して正確な情報を得ていきましょう。
※1ケアハウス:60歳以上の高齢者が入居でき、低額で食事や入浴など日常生活に必要なサービスがある高齢者向け住宅。
※2サービス付き高齢者住宅:国土交通省の基準(部屋の広さやバリヤフリーなど)をクリアし、高齢者を支援するサービスのついた高齢者向け賃貸住宅
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