【2013年 第3回 介護保険制度の概要】高齢期の介護とすまい
岡本 典子 ⇒プロフィール
団塊世代が続々と65歳を迎え、長寿化も進み、高齢化率がますます高くなる傾向です。世帯構成では、高齢者のいる世帯の半数以上が高齢者夫婦のみ世帯、おひとりさま高齢者世帯となり、介護保険の利用が増えています。
高齢者保健福祉政策の流れ
1960年(S.35)の高齢化率(日本人全体の中に占める65歳以上高齢者の割合)は5.7%でしたが、高齢者の増加に備え高齢者福祉政策がスタートしました。1963年には特別養護老人ホームが創設され、その後老人医療費無料化、一部無料化、在宅介護の充実(新ゴールドプラン)と変遷し、1997年に介護保険法が成立。2000年施行。それ以降3年ごとに見直されています。介護保険サービスは使いやすいと急速に浸透し、想定以上に利用されてきたことで介護保険の総費用が増大し、制度の持続が難しい状況です。
現在は2012年4月に改正された第5期介護保険事業計画に沿い、介護保険行政が進められています。
介護保険サービスを利用できるのは
岡本さん3月分コラムイメージ画像介護保険制度は、40歳以上の人が支払う介護保険料と、国・都道府県・市区町村の負担する税金で成り立ち、利用できる人は65歳以上の第1号被保険者と、40~65才未満の第2号被保険者に分けられます。
第1号被保険者は、原因を問わず市区町村から介護が必要と認定されれば介護サービスを使えます。ところが、第2号被保険者は介護が必要となっても必ずしも使えるわけではありません。介護保険の対象となる特定疾病(※1)により介護が必要と認定された場合だけ介護保険サービスを利用できます。
介護認定からスタート
介護保険サービスを利用するには、居住する市区町村の窓口、もしくは地域包括支援センター(※2)に申請しますが、本人、家族のみならず、事業者が代行することもできます。
申請すると、訪問調査員が心身の状況を確認に自宅などにきて、74項目の質問をします。
家族が立ち会い、介護日誌をつけている場合は提出しましょう。かかりつけ医の診断書も必要です。
それらを基に、保険、医療、福祉の専門家による介護認定審査会にかけられ、30日以内に要介護度(非認定~要支援~要介護5)が認定され、本人に郵送されてきます。
利用できる護保険サービス料は要介護度別の「支給限度額」が決まっていて、限度額内の利用なら1割負担ですみますが、それを超過した分は全額自己負担です。
認定が下りたら介護サービス事業者に連絡し、ケアマネージャー(※3)に身体や家族の状況に応じたケアプランをたててもらいます。何曜日に訪問介護、訪問看護、デイサービス、月に何日ショートステイといった具体的なプランで、それに基づき事業者と契約を結ぶと介護サービス利用が開始されます。多くの場合、介護度別の支給限度額内に収めるようプランニングします。
介護される人や家族にとってケアマネージャーは頼りになる存在で、面倒見がよく気が合うケアマネージャーを見つけることが肝心です。
重介護や認知症が進むと、施設入居も視野に
「最期まで自宅で介護を受けたい」と思っても、介護する人がいない場合に、一人でトイレに行けなくなる、認知症で日常生活ができなくなるようなら、施設への住みかえも考えなければなりません。自宅にいて訪問介護や訪問看護で十分なサービスを受けようとすると、1割負担で受けられる介護度別支給限度額を超過し高額になります。毎月数十万円かかっている人もいます。
そこで、ケアマネージャーは毎月定額で介護を受け生活できる介護保険施設を提案します。具体的には居住地域の特別養護老人ホーム(特養)、老人保健施設(老健)、介護療養型病床です。ところが、希望通りにすぐに入所できるとは限りません。特に最期まで住み続けることができる特養は人気が高く、待機者が200~300人というところもあります。
そのため、民間の有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に入居する人も増えてきています。
サ高住は見守りサービスと生活相談だけが義務づけられた賃貸住宅です。住宅内に介護サービス事業所を併設しているところもありますが、介護が必要になれば自宅に居るのと同じく個別に契約し、決めた時間だけ自室に来てもらう形式です。介護付き有料老人ホームのように24時間365日介護がパックされている訳ではありません。
しかし、最近は希望すれば看取りまでしてもらえるサ高住も出てきていますので、正確な情報収集が大切です。
(※1)特定疾病:アルツハイマー、関節リュウマチ、脳血管疾患など、老化が原因で介護が必要となると定められた疾病のこと。
(※2)地域包括支援センター:居住地域の高齢者が安心してくらせるように、介護、福祉、健康、医療など総合的に支援する公的機関。介護、介護予防、権利擁護などの相談にのってくれます。
(※3)ケアマネージャー:「介護支援専門員」といい、要支援・要介護者が適切な介護サービスを受けられるようケアプランを作成し、サービス事業者との連絡や調整を行う介護のキーパーソン。
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