自立者がくらすシニアのすまい【2013年 第12回】

【2013年 第12回 自立者がくらすシニアのすまい】高齢期の介護とすまい

岡本 典子 ⇒プロフィール

有料老人ホームは安心だけど食事時間が決まっているなど集団生活で堅苦しいので、自由にマイペースでいきたい。そんな自立の人や軽介護の人がくらしやすいような工夫が施されたすまいが、今注目のサービス付き高齢者向け住宅とシニア分譲マンションです。

 

 

 

 

 

 

 

サービス付き高齢者向け住宅とは

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は2011年10月、それまでの高齢者専用賃貸住宅(高専賃)などを整備して、比較的元気な高齢者のすまいを増やしていこうと、国土交通省と厚生労働省がタイアップしてスタートさせた制度です。10年で60万戸を目標に、補助金を出し、税制優遇、金利優遇を行い、2013年12月5日時点では全国で4,123件、133,213戸が登録されています。バリアフリー仕様で、見守りサービスと相談サービスを備えた賃貸住宅ですが、介護サービスや食事サービスはオプションという点に注意が必要です。

高齢者に一番喜ばれるのは食事サービスで、多くのサ高住で用意されています。ただし、1日3食とは限らず、朝と夜、昼と夜、夜だけというところもあります。
問題は介護サービスがついていない点ですが、サ高住の1階に介護サービス事業所が併設されているところや、提携の事業所から各居室に訪問介護が手配されていることをアピールしているところもあります。しかし、介護付き有料老人ホームとは異なり、あくまで別契約を結び、契約した時間だけ居室に来てもらい介護を受ける方式で、自宅に居るのと同じ使い方です。併設されていても、その提携事業者と必ず契約しなければならない訳ではなく、転居前から利用している懇意な事業者があれば、そちらからサ高住の部屋に継続してきてもらうことは可能です。
また、2012年4月から登場した24時間定期巡回随時対応型サービスを行う介護事業者と提携しているサ高住であれば、安心感が高いといえます。特にサ高住内に併設されていて、その事業者と相性が良いようなら、何かあってもすぐに部屋に駆けつけてもらえることから、入居者、事業者双方にwin-winであるといえます。

サ高住は金額的にも付帯するサービス内容においても玉石混淆なため、契約する前に「介護が必要になったときどうなるのか」を確認することが大切です。
万が一、重介護になったり認知症が進むと住みかえが必要になる場合には、住みかえ資金を別途確保しておかなければなりません。

 

 

シニア分譲マンションとは

自由に暮らせる選択肢のもう一つがシニア分譲マンションです
が、こちらは分譲のため、さらに充分な検討が必要です。
入居者が自由に使える大浴場やフィットネスルーム、娯楽室などの共有施設が配備され、フロントにはコンシェルジュが配備されているところが多いようです。また、好きなときだけ食事を摂ることができ、オプションで掃除などの家事サービスを利用できるなど、高齢期のくらしに便宜が図られ、シニアライフ
を謳歌できるよう考えられています。そのため、運営管理費は毎月5~6万円程度と、一般のマンションに比べ高くなっています。
介護が必要になると、介護サービス事業者と契約してマンションの自室に来てもらうことになります
が、サ高住と同様で、要介護度が重くなったり認知症が進むと、そこでの生活が困難になることがあり
ます。
シニア分譲マンションはその名の通り分譲であるため資産になり、相続も可能です。
ところが、万が一住み続けることができなくなり売却となると、一般住宅のような流通ルートが確立されていないため、現状ではなかなかスムーズに買い手が見つからないケースが多々見られます。もし、売却できない場合でも高額な運営管理費や固定資産税は支払い続けなければならず、新たに入居一時金を支払って介護付き有料老人ホームに住みかえる場合には、管理費はダブルで支払い続けなければなりません。これらを充分考慮の上、慎重に検討することが必要です。

自立者のすまい探しの注意点

高齢期のすまい探しは、「介護が必要になったとき、どうなるか、どうするか」が一番気がかりです。
サ高住やシニア分譲マンションは自由を謳歌できる選択肢ではありますが、住みかえが必要になるかもしれないことも考慮の上、それに見合った資金を確保しておくことを忘れてはなりません。そして、住みかえが必要になれば家族や周囲の人のサポートが必要になりますので、理解と協力を求めておくことが大切です。

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