【2014年 第4回 】クラウド・ファンディング。知っておきたい、投資・経済・金融の考え方
有田 宏 (アリタ ヒロシ)⇒ プロフィール
ベンチャー企業にとっての新しい資金調達手法、クラウド・ファンディング。それはどんなものなのでしょうか?そして個人がクラウド・ファンディングで事業に資金を提供する場合の注意点は?
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1.クラウド・ファンディングとは?
クラウド・ファンディングという言葉をご存知でしょうか?クラウド・コンピューティングという言葉もあります。この場合のクラウドは”cloud”、雲という意味です。インターネット網を雲と見立て、個々のシステムは上空に浮かぶ雲すなわちインターネット網とのデータのやり等で作業を行うシステムを言います。一方、クラウド・ファンディングのクラウドは”crowd”、群衆という意味です。多くの群集、すなわち多くの人々から、それぞれ少額のお金を集めベンチャー企業などの資金とし活用する仕組みのことです。
多くの人々からお金を集めて事業を行う仕組みとしては、クラウド・ファンディングが初めてではありません。災害からの復興事業のために多くの人から寄付を募ることも、広い意味でのクラウド・ファンディングと言えるかもしれません。また地方自治体への寄付制度の「ふるさと納税」も同様でしょう。
これらと、今行われている狭い意味でのクラウド・ファンディング・ファンディングの大きな違いは次の2点があると思います。
1お金の用途が具体的
災害復興のために寄付を行っても、自分のお金がどの会社のどのような資金に使われるのか、一般には定まっていません。クラウド・ファンディングではお金の受取先の会社、さらにはどのような事業に使われるのかは明確になっているケースが多いです。さらには事業の中でも、設備の購入資金や市場の開拓資金など、より分かりやすくなっている場合もあります。
2インターネット上での募集が中心
少ない経費でより多くの人からお金を集めようとすると、現状ではインターネットが最も効率的です。資金集めに多くの経費をかけては、調達コストが高くなり事業的に採算が合わなくなります。そして事業の具体的な情報公開もインターネットが適しています。
2.クラウド・ファンディングの種類
クラウド・ファンディングはその形態により3つに分けられます。
1寄付型
対価を求めない寄付金として資金を調達するものです。市場経済では成り立ちにくい社会貢献型の事業が適しているでしょう。
2購入型
対価として現金ではなく、資金の供出先の企業の商品を対価として受け取るものです。
3投資型
貸付金や出資金として事業に資金を提供するもの。事業の収益から配当や償還金を受け取る形ですが、配当の代わりに投資先の商品で受け取る場合もあります。ファンド形式をとっているものもあります。
3.投資型クラウド・ファンディングの規制緩和
寄付型と購入型のクラウド・ファンディングについての規制は殆どありませんが、投資型クラウド・ファンディングは金融商品取引法等の規制を受けます。流動性の低い投資型クラウド・ファンディングを扱う業者は第2種金融商品取引業者でなければなりません。
特に株式の場合、未上場株の取引は金融商品取引業者といえどもグリーンシート登録銘柄以外は扱うことが出来ません。クラウド・ファンディングにより株式を募集しようとする会社は殆ど新興企業で、上場はおろか、グリーンシートにも登録されていないケースが大半です。したがって、金融商品取引法の
下では、投資型クラウド・ファンディングで株式を募集する場合、ファンド形式をとる以外の方法は実質上閉ざされていました。
そこで、新しい資金調達形態の投資型クラウド・ファンディングを伸ばそうという政府の意向もあり、今年(2014年)5月に金融商品取引法の改正が公布さre
、株式での投資型クラウド・ファンディングが解禁されました。ただし、それには次の条件が有ります。
1募集総額1億円未満かつ1人当たり投資額50万円以下。
2仲介業者に対してネットを通じた情報提供と事業内容のチェックを義務付ける。
4.規制緩和の影響
今回の緩和措置に伴い、未公開株がらみの詐欺事件が増えることも考えられます。ただし、投資型のクラウド・ファンディングは現実的にはインターネット専用商品と言ってもよいでしょう。電話等での勧誘は、それ自体怪しいと見なければなりません。また、ことさら利殖を強調するのも本来の趣旨から外れます。詐欺業者と思ったほうが良いかもしれません。
日本国内において投資型クラウド・ファンディングで資金を募る業者は原則として第2種金融商品取引業者でなければなりません。金融商品取引業者の区分は次の表を参照してください。なお第1種金融商品取引業者は証券会社のことです。1社で複数の区分を登録することもできます。
不審に思えば、金融庁のサイトで第2種金融商品取引業者かどうかを確認してください。第1種金融商品取引業者は、多くが第2種も登録しています。ただし、名前が有っても、業者名を詐称している場合もありますので、注意してください。
クラウド・ファンディングの趣旨は、利殖よりも社会のためになる事業を応援しようとする仕組みです。いうなれば、自分のお金が社会のためにもなり、結果的にいくらかは自分にも返ってくる、ということだと思います。ここのところをきちんと押さえておく必要があるでしょう。
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