【2010年 第9回 高金利の日本 マイナス金利は不可能か?】 資産運用に必要ないまどきの経済知識
有田 宏 ⇒プロフィール
実質金利で見た日本の金利
円高が進んでいる。
原因としてはアメリカをはじめとした先進国経済の停滞。
中国の景気引き締め策。
そして日本でのデフレ進行。
リーマンショック以降、先進各国はこぞって低金利に突入。
日本も政策金利(無担保コールレート・オーバーナイト物)は0.1%。以前のゼロ金利時代は日本のみが低金利。
ところが今はアメリカが0~0.25%。ユーロが1%。
しかも日本はデフレ。
名目金利では日本も低金利になるが。物価上昇率を加味した実質金利ではどうか。
実質金利の計算式は以下の通り。
実質金利=名目金利-物価上昇率
名目金利に政策金利を適用し0.1%。IMFのWorld Economic Outlook(April2010)から2010年の年平均物価上昇率見込みを-1.4%としよう。
実質金利=0.1%-(-1.4%)=1.5%
同様にアメリカとそしてユーロ圏を代表してドイツ、それぞれの物価上昇率をそれぞれ2.1%、0.9%とする。アメリカの政策金利は0%として計算する。
アメリカ 0%-2.1%=-2.1%
ドイツ 1%-0.9%=0.1%
実質金利から見た日本は意外と高金利。
これでは円高も納得できる。
マイナス金利の可能性
円高対策ばかりではなくデフレを抑えるためには名目金利ばかりではなく実質金利の引き下げも必要になってくるだろう。
ただし名目金利はマイナスにはできない。
果たしてそうだろうか。
次に日銀の現在(2010年9月25日)各種の金利を見ていこう。
政策金利と基準貸付利率はマイナスにするには困難な面があるが、その他の金利はマイナス金利も適用できるのではないか。
まず当座預金。必要準備部分は金利がどうであろうが必ず預けておかねばならない。
一方超過準備部分の補完当座預金はおそらく銀行は引き出すであろう。
しかしそもそも日銀当座預金にお金が眠っていたのでは景気のためにはならない。
当座預金に眠っているお金を現金化し、貸し出しを通じて市場に還流させることが銀行の役割でもある。
これは補完当座預金金利をマイナスにすることは、役割を果たしきれていない銀行に対してのペナルティーの意味合いもある。
次に2010年の5月から始まった成長基盤強化のための銀行に対する資金支援。
通常、銀行への貸出金利をマイナスにすると無制限に融資需要が高まる恐れがあるが、この場合は成長に資する事業への融資ということで、銀行にとっての使途が限定されている。
日銀が管理を適正に行えばこのような恐れはないであろう。
むしろ名目的には低くとも、実質的には高い金利。
成長のための投資を考えている企業にとり、実質金利が低くなり投資の背中を押す効果も考えられる。
当座預金と成長基盤強化資金支援は金利をマイナスにすることも可能ではないだろうか。
あとはマイナス金利で現金を眠らせておく銀行に対しての対応。
多量の現金を抱えることは銀行にコストがかかる。
そして銀行の現金保有残高は日々正確に抑えることが出来る。
現金保有残高に一定のペナルティーをかけ税金を徴収することも技術的には簡単である。
デフレ脱却のためには眠っているお金をいかに市場に還流させるか、この視点が必要であろう。
この記事へのコメントはありません。