【2008年 第8回 「居住者の高齢化・賃貸化への留意点」】マンション管理コラム
佐藤 益弘(サトウ ヨシヒロ)⇒ プロフィール
首都圏で2007年のマンション供給は6万戸前後に落ち込みました。
8年ぶりに8万戸を割り込んだ06年を19%程度下回る計算で、08年の供給は更に5.4万戸程度になる見通しです。
その一方で、首都圏では2015年には築30年超マンションが100万戸を超える試算があり、住宅ストックは今後も増え続ける傾向にあります。
「小さな自治体」といわれるマンションでも、こうした社会背景を反映して居住者に変化が見られるようになっています。
購入後、一部の不動産しか値上がりが期待できなくなった昨今では住み替えが容易でなくなり、また人口構成が少子高齢化していることもあり、マンション内で年配者と賃貸居住者の割合が増加しつつあるのです。
居住者が高齢化・賃貸化すると、はたしてどういう問題が発生するのでしょうか?
築古の既存マンションでは物理的・社会的なバリアフリー化が遅れがちとなり、日常生活に不便を来たしています。
低層物件ではエレベーターがない、急な階段や段差はお年寄りにはケガの原因となりやすく、「外出意欲」を奪う可能性もあります。
また65歳以上の家庭内事故死因は溺死(できし)が突出して多く、寒くてすべり易い浴室は危険がいっぱいなのです。
さらに悪質な業者による詐欺まがいのリフォーム工事営業なども一人暮らしの老人が狙われる傾向があり、新聞をにぎわせています。
管理組合としては物理的障害をなくすと同時に、訪問販売に目を光らせる、「シニアクラブ」などの自治会を結成して交流を活発化させる・・・トラブル発生を事前に予防する対策を心がけることが不可欠となります。
次に賃貸化については一番心配なのが「区分所有者としての意識の欠如」です。自らが生活をしなくなると管理組合運営に関心が薄くなり通常総会も足が遠くなりがちです。
賃借人の生活態度や専有部分の管理状態も気にならなくなり、最後は“家賃ありき”となるのです。
一方、借り手の意識としてはオーナーほど建物の維持管理に気を使わないため、乱暴な使用をすることも考えられます。
管理組合にとっても理事会運営に悪影響を来たす可能性が出てきます。
標準管理規約では「理事または監事は当該マンションに現に居住する組合員のうちから総会で選任する」と定めており、ただでさえ役員のなり手が少ないなか、さらに拍車をかける格好となりかねないのです。
時間の経過とともに居住者が高齢化・賃貸化することは至って自然ですが、未然に防げることも多々あるはずです。
管理規約を見直す、コミュニケーションを活発化させる、専門家を利用する、など日々の努力が求められます。
このコラムは、熊本日日新聞(2003年12月15日)に掲載された「快適マンション考」を加筆修正したモノです。
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