【2008年 第9回 「マンションの駐車場問題」】マンション管理コラム
佐藤 益弘(サトウ ヨシヒロ)⇒ プロフィール
今回から3回にわたり、集合住宅の3大トラブルとされる「駐車場」「ペット飼育」「上下階の騒音問題」について、マンショントラブルの現場をお伝えしていきたいと思います。
一般的に、駅や買物施設に近く利便性が高いことがマンションの立地特性として上げられますが、半面で十分な広さの敷地が確保しにくく駐車場台数が希望者全員分を満たせないことがあります。そのため駐車場を利用できる人とできない人の間に不平等が発生し、トラブルへつながるのです。
国交省が実施するマンション総合調査(平成15年)によると、駐車場設置率は全国平均で59.6%という結果が出ています。
(社)日本自動車工業会の調査(平成15年度)では全国乗用車世帯保有率が78.8%(複数保有率:38.3%)なので、数字上からも駐車場台数不足が恒常化し、マンション生活において切り離せない問題であることが分かります。
一方、軽乗用の使用実態では、人口10万人未満の市や郡部では軽自動車がなければ日常の生活に大きな支障をきたすことが分かった。
また、経済性やサイズ面から、女性の日常の買い物や高齢者の移動の手段として「足代わり」に使われていることも明らかになった。
そこで、対応策として最初に考えることが駐車スペースの増設でしょう。
空地が多ければ路面舗装し車輪止めをつけるだけで対応できますが、例えば、花壇を駐車場へ用途変更したり、また、自走式や機械式への立体化となると話は簡単ではありません。
マイカーを所有しない区分所有者にとっては受け入れがたい意見であり、立体化による日当り・通風遮断や機械式による騒音はマイカー保有者にも悪影響を与えますから、管理組合としては居住者同士の意見調整と合意形成をしっかり行なうことが必要となります。
さらに大掛かりな工事となれば費用負担の問題も避けては通れません。
余剰(不足)積立金残高を考慮して増設規模や資金計画を立てるようにしましょう。
一方、台数を増やすことができない場合は駐車場の使用制限を行なうこととなります。
特定の居住者が長期間にわたり専用使用しないように使用細則を定め、不公平感をなくすのです。
駐車場不足の程度・敷地外代替駐車場の有無、さらに駐車料金などを勘案しながら駐車場の運用ルールを作成して下さい。
最後に、駐車場使用料の取扱いについても言及しておきます。
6割近くの管理組合が駐車場収入の使途を管理費会計に充当しており(マンション総合調査)、定額収入の一部として会計運営を行なっています。
原則論からすれば、駐車場使用料と管理費はその性質が異なりますので、管理費会計として混同せず修繕会計へ計上できる資金的余裕がほしいものです。
このコラムは、熊本日日新聞(2004年1月19日)に掲載された「快適マンション考」を加筆修正したモノです。
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