【2008年 第11回 「マンションのペット問題」】マンション管理コラム
佐藤 益弘(サトウ ヨシヒロ)⇒ プロフィール
マンションの3大トラブル最終回として今月は「ペット問題」についてです。
不動産経済研究所の調査によると、98年には709戸だったペット可マンションの供給数(首都圏)は02年には3万592戸まで拡大し、5年間で実に43倍へとその数を膨らませています。
こうした現状の背景には先行きの見えない経済への不安から開放されたい、という「いやし」効果を期待する心理が働き、さらに少子高齢化により家族の一員(代替)としての存在を求める結果の表れであり、かわいい愛玩動物から人生の伴侶動物(コンパニオン・アニマル)へ我々人間のペットに対する意識も変化してきています。
そのため、マンションでも「犬や猫を飼いたい」という要求は高まる反面、「集合住宅でペットを飼うことはいけない」といった意識も色濃く残っています。
ペットに関するクレームは「泣き声」「臭い」「抜け毛」が大半ですが、他の居住者に迷惑をかけることを懸念しての遠慮が作用しているからなのです。
さらに飼育規定に関する管理規約があいまいなこともトラブル原因のひとつといえます。
よく見かけるのが「他の区分所有者に迷惑又は危害を加える恐れのある動物を飼育することは禁止」といった条文ですが、抽象的すぎて対象となる動物が判明しません。
結果として各居住者は自分の都合のいいように解釈し、現実として右条文は機能していないに等しくなるのです。
そこで、こうした“グレーゾーン”を排除するためにも「ペット飼育細則」を作成し、飼育賛成・反対両者の立場を尊重しながら互いの共通認識を明文化することが不可欠となります。
具体的にはペットの範囲の定義付け、汚損・破損・傷害が発生した場合の損害賠償をはじめとするペナルティー、予防接種・不妊・去勢などの日常管理、そして飼い主自身のマナー啓蒙などです。
また、飼育者同士の親睦やトラブル時の相談窓口となる「ペットクラブ」を立ち上げることも有効です。
管理組合でペット飼育全般を監督することは業務が煩雑化する恐れもありますので、専門機関を発足させて特化させることも効果的です。
ペットトラブルの本質は「ペットを飼う」ことではありません。
ペットを飼育しても他人に迷惑をかけなければ問題は起こらないわけですから、飼育することの是非を問うのではなく、「どうすれば迷惑がかからないか?」を詰めることが重要です。争点を読み違えないようにしたいものです。
このコラムは、熊本日日新聞(2004年3月15日)に掲載された「快適マンション考」を加筆修正したモノです。
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