【2017年 第3回】10年でもらえる年金 一番やさしい年金のはなし
菅野 美和子 ⇒プロフィール
2017年8月から、「10年でもらえる年金」がスタートします。これまで老後の年金をもらうには、保険料を納めるなどの準備期間が原則25年必要でしたが、10年に短縮されます。今まで期間不足でもらえなかった人も、10年を満たしていれば8月以降(9月分から)年金をもらえるようになります。関係ないと思っているあなたにも関係があるかもしれません。
◆10年で年金がもらえる!
老後の年金(老齢基礎年金や老齢厚生年金)をもらうのには、保険料を納めた期間、保険料が免除された期間、カラ期間の合計が原則25年(300月)必要でした。保険料を納めた期間や免除された期間は別として、カラ期間は、少しわかりにくいかと思います。
日本に住む人は国民年金へは強制加入となっていますが、強制加入にならないケースもありました。
強制加入でない人は年金制度に加入しなくても法律違反ではないのですが、そのままでは老後の年金をもらうのに必要な25年を満たせず、結局、年金をもらえないということになりかねません。そこで、強制加入ではない未加入期間については「カラ期間」として25年にカウントすることになっています。
代表的なカラ期間として、1986年(昭和61年)3月までのサラリーマンの妻の期間があります。要するに、このように25年間せっせと準備して、老後の年金をもらうというのが今までの制度でした。ところが、老後の年金が10年でもらえるようになるのです
プラスになる人は、年金を受け取るために必要な期間が10年以上25年未満で現在無年金になっている人、無年金となることが予想されていた人です。期間不足で年金を受け取れなかった人が救済されます。
対象者には手続き書類が送付されます。8月1日からスタートする制度です。手続きすれば平成29年9月分の年金から受け取れます。
◆10年未満であきらめる前に
無年金となっている人の中には、年金制度への加入期間が10年に満たない人もいるでしょう。
しかし、年金記録が10年未満という人も、あきらめる前に調べてみましょう。先に説明したカラ期間は年金機構では記録されていません。
サラリーマンの配偶者であった期間、学生で国民年金に加入していなかった期間(1991年3月まで)、海外に住んでいた期間などがありませんか。20歳のときは大学生で、国民年金に加入していかなったという人は、在籍していた大学から証明書を取り寄せることができれば、カラ期間として認められ、10年を満たすことも考えられます。
カラ期間ばかりではなく、まだまだ統合されていない年金記録も残っています。
働いていたのに厚生年金の記録がないという場合は、持ち主不明の年金記録から自分の記録が出てくるかもしれません。
25年にほど遠く、老後の年金はもらえないとあきらめていた人は、年金記録を探しても無駄と思い、これまで記録探しをしてこなかったことと思います。しかし、事情が違ってきました。10年未満だからとあきらめる前に、確認してみる価値はあります。
◆年金額には期待できる?
年金がもらえるということと、生活していけるだけの年金をもらえるということは別です。
老齢基礎年金は満額で779,300円(平成29年度)。これは40年間保険料を納付した場合の金額です。保険料を納めたのが10年であれば、年金額はこの4分の1。年額20万円にも満たない額です。
もらえるとしても、満足できる額ではないでしょう。ただ、老後の年金は終身受け取れるもの。毎年の額は少なくても、長生きすることにより、効果は大きくなります。
再度、老齢基礎年金は20歳から60歳までの40年間保険料を納付して満額になるということを理解しておきましょう。10年でもらえるから10年だけ納めればよいと考える人も出てくるかもしれせんが、それは間違いです。きちんと保険料を納めることは、将来の年金額につながります。
定期的に受け取れる年金がうれしく思える日が来ると思います。今の努力が未来につながると考えてみてください。
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