【2008年 第4回 「ねんきん特別便」の相談現場で見えたこと ①】年金コラム
佐藤 朋枝(サトウ トモエ)⇒ プロフィール
会社勤め = 厚生年金加入 ではない
改正に改正を重ねたため、ツギハギだらけになった年金制度。確かに理解するのは難しい。
当の社会保険事務所さえ、平成19年度から始まった70歳以上の在職老齢年金の計算方法を間違えていたという、驚くべき記事が新聞に掲載されていた。
しかし、年金の仕組みの全てを知るのは無理であっても、必ず押さえておきたいポイントはいくつかある。
年金問題で不利益をこうむらないための最も重要な手段は、基礎知識による自己防衛である。
「ねんきん特別便」を受け取った人の目に留まりやすい点は、年金の未加入期間だ。
厚生年金の喪失日と、次の厚生年金の取得日の間に空白の期間があいているケースでは、「こんなに働いていない期間が、あるはずはない。働いて給料をもらわなければ生活できないのだから、空白があること自体が変だ!」と相談窓口で訴える人が多い。
そこで相談者には、「期間調査」という用紙に、年金加入の空白期間に何という会社で働いていたか、会社所在地も含めて出来るだけ詳しく記入してもらう。
そして、社会保険事務所が「期間調査」に書かれた会社や、会社から厚生年金の加入の届出があった社員名について事務所内のデータを調べることになる。
その調査結果は、相談者本人に郵送で通知されるのだが、「事業所の厚生年金保険の加入記録がありません」「調査の結果、厚生年金保険被保険者名簿に名前の記載はありませんでした」などと、書面に記されている場合がある。
この社会保険事務所の調査結果に納得できない場合は、さらに昨年夏に総務省に設置された第三者委員会に申立をする方法もある。
第三者委員会では、社会保険事務所の記録データだけでなく、申立人の勤めていた会社や元同僚まで範囲を広めて、申立内容の真偽を再調査する。
厚生年金の新規適用日と試用期間の有無を確かめよう
会社が厚生年金の加入手続き(新規適用)を行うことで、事業主と従業員は厚生年金の資格を取得することができる。
つまり会社自体が厚生年金に加入していなければ、従業員は国民年金の保険料を自分で支払わなければならない。
法人で常時従業員を使用する会社は厚生年金に加入しなければならないが、必ずしも会社設立と同時に厚生年金の加入手続きを行っているとは限らない。
このため、会社自体の厚生年金の加入日(新規適用日)より前に働いていた期間は、従業員は厚生年金に加入することができないのだ。
厚生年金の新規適用日以降に入社しても、入社日=厚生年金の加入日、とは限らない。
会社によっては正社員に試用期間を設け、その後から厚生年金に加入されるケースもある。
転職などによって新しい会社で働く場合には、その会社が厚生年金の適用事業所であるか、試用期間(厚生年金に加入できない期間)があるか、事前に労働条件を確認することが大切である。
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