【2008年 第5回 「ねんきん特別便」の相談現場で見えたこと ②】年金コラム
佐藤 朋枝(サトウ トモエ)⇒ プロフィール
年金手帳番号がたくさん宙に浮いていた!
青またはオレンジの年金手帳を開くと、基礎年金番号が印字されていたり、あるいは基礎年金番号通知書という紙が添付されていたりする。
この基礎年金番号、導入されたのは平成9年1月1日からであり結構、最近始まったばかりの制度である。
それ以前はというと、国民年金手帳番号・厚生年金手帳番号(通称、国年手番・厚年手番)が使われていた。
つまり、厚生年金から国民年金に変わる時には、あたらしい手帳番号が付番されたのである。
転職時は、以前使っていた厚生年金手帳番号を会社に届け出て、厚生年金の再加入手続きを行ってもらうのが通常であった。
しかし、新しい会社では、前に使用していた厚生年金手帳番号を使わずに、新しく手帳番号を取得させて厚生年金に加入させるケースも多かった。
会社を変わる度に厚生年金手帳番号が付番されていった結果、ひとりで複数の厚生年金手帳番号を持つ事態が発生したのである。
平成9年1月1日の基礎年金番号の導入時、社会保険事務所はひとりで複数持っている手帳番号を一本化する事務作業を行った。
実際、本人にも複数の手帳番号を所持していないかどうか、確認の通知をしていたが、多くの人は受け取った郵便物の中身をよく理解できないまま、社会保険事務所に返信をしなかったというのが事実である。
ズサンな記録管理が問題の根本
平成9年1月1日以降、年金の事務管理は基礎年金番号ひとつで行われることになった。
しかし一本化の作業(統合)からもれてしまった手帳番号は、宙に浮いた状態となってしまった。
年金受給手続きの際、社会保険事務所ではコンピューターで氏名検索をして、基礎年金番号以外に本人と同姓同名の宙に浮いた年金記録がないかどうか、確認をすることにしている。
しかし結婚前の旧姓での記録であったり、コンピューターに登録された氏名や生年月日が間違っていたり等の理由で、本人確認が取れないまま、実に多くの記録が年金額の計算に含まれない状態で宙に浮いていたのである。
ほかにもコンピューター導入前、紙台帳で管理していた記録をオンライン化する際、たくさんの入力ミスが発生した。
名前の読み間違えでまったく違う呼び方で登録されていたり、資格取得時からではなく途中の記録から入力されていたり、実に杜撰な事務処理が行われていた。
このためコンピューター上は記録がなくても、大元の紙台帳には正しい記録が存在していた、というケースもたくさん見られる。
5000万件の宙に浮いた年金記録の持ち主を探すためには、国民一人一人の記憶(どこの会社に、いつごろ勤務していたか等)に頼らざるを得ない。
しかし30年、40年前の話や1、2ヶ月といった短期の勤務に関してとなると、記憶は曖昧で、照合作業がなかなか進まない要因になっている。
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