【2010年 第4回 ギリシャと比べた日本財政】 資産運用に必要ないまどきの経済知識
有田 宏 ⇒プロフィール
「オオカミが出た!」そのような嘘で羊飼いの少年。
村人を何度も騙し、本当にオオカミが来たとき「オオカミが出た!」と叫んでも村人に信じてもらえず、羊はオオカミに食べられてしまう。
これは嘘がもたらす悲惨な結果を意味する“オオカミ少年”の寓話だが、このような結果をもたらしたのは嘘をついた少年が悪いのか、少年の言葉を信じなかった村人が悪いのか?
「財政は危機的状況!」と日本の財務省は叫び続けている。
しかし新規国債は安定的に消化されている。
長期金利も2010年3月現在では1.3%台で安定。一向に財政危機がおとずれる兆候は無い。
その後の結末は?
懸念されていた財政破綻も起きずに、予想以上の景気回復により財政状況が好転。
あるいは、突如の長期金利の上昇、新規国債の未消化、ついに政府は利払いさえもままならずに…。
上の表はIMFが2009年の10月に公表した主要国の対GDP比政府債務。
下段は債務総額。上段は債務総額から政府資産を差し引いた純債務の予測値。
日本は債務総額では対GDP比227%、主要国では2位のイタリアを大きく引き離しての第1位。
一方純債務は115%と1位のイタリアに僅差で遅れることの第2位。
しかしこれも2012年にはイタリアを追い越しその差は以降広がる見通し。
イタリアといえばユーロ導入国で財政状況が特に悪い“PIIGS”の一員。有り難くない呼称の“PIIGS”といわれる全ての国の債務残高のデータはIMFからは公表されていないが、2009年と2010年度の対GDP財政赤字予測値は下の表。
ちなみに日本の財政赤字の対GDP比予測は2009年が10.455%。2010年は10.233%。財政危機に揺れているギリシャはそれぞれ6.398%、7.110%なので、数字だけを見ればギリシャよりも悪い。
ただしデータは問題が発覚する以前の2009年10月に公表されたもので、実際の赤字額はさらに膨れあがるだろう。しかしギリシャの動揺もあながち他人事だとは思えない。
ギリシャの場合、過去の財政の粉飾の疑いもあり、他のユーロ導入国から厳しい目で見られている。
ギリシャがもしユーロを導入していなければ、これだけ厳しく見られることも無かったのだろうか?
あくまでも仮定の話だが、もしユーロを導入していなければ、ギリシャ通貨の暴落、長期金利の急騰、ギリシャの危機はさらに大きくなっていたのではないだろうか。
財政赤字だけ見れば日本はだけが特別悪いわけではない。
世界金融危機のため世界中が深刻な財政問題を抱えている
。しかし国の抱えている莫大な累積債務、
これは日本固有の問題である。
重大な持病を抱えていれば人並みのムリは難しいだろう。
いまのところ財政危機の具体的な兆候は現れてはいないが、政府も財政への目配りは常に必要であろう。
兆候が現れてからでは対処は不可能になるかもしれない。
“オオカミが出てから羊を避難させても遅い”
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