【2012年 第2回】「お金って何?親が知っておきたいお金
(貨幣)の役割」- お受験ママのこどものためのマネー講座
樗木 裕伸⇒プロフィール
日頃、当然のように使っている「お金」=「通貨」について、どれだけ説明できますか?金銭教育の入り口としてどうしてもしっかり伝えたいものです。
お金について話すタイミングは?!
こどもが成長してくると自分の周りことが気になり始めます。お母さんと買い物に一緒に行くと「紙」や「金属」を渡してお菓子やアイスクリームをもらっているのが不思議そうです。
でも、もっと大きくなってくるといつのまにか、お金を払えばモノがもらえるのが当たり前になり、不思議に思った頃のことを忘れてしまっているのではないでしょうか?本当は、その「不思議」に思ったタイミングを逃さず、いろいろ教えてあげたいところですが、逆に算数で「つるかめ算」や「比」の問題を解けるようになった中学受験前であれば、もっとお金(貨幣)の本質的なことも理解できそうです。これからお金を稼ぐための高等教育を受けるなら、お金の上手な使い方も教えてあげたいところですよね。
お金の基本的役割から学ぼう!
お金(貨幣)の基本的な役割は、「交換機能」「貯蓄機能」「価値尺度」の3つあると言われています。
ひとつ目は、「交換機能」
貨幣がない時代では、経済活動は「物々交換」でした。
例えば、
Aさんは、商品Xを持っていて、商品Yと交換したい。
Bさんは、商品Yを持っていて、商品Zと交換したい。
Cさんは、商品Zを持っていて、商品Xと交換したい。
とします。
Aさんは、BさんともCさんとも「交換」できません。BさんもCさんも同じです。でもAさん、Bさん、Cさんの3人がそろえば、下図のように、ぐるっと交換することで目的を達成することができます。だから昔は、「市」が立ったり、隊商(キャラバン)を組んで
交易をしてまわったんでしょうね。
新聞やニュースなどでマネーサプライ(通貨供給量)なんて用語を聞いたことないですか。モノ同士を100回交換したいときに、お金が1枚しかなかったら、1回1回交換が終わるまで待ってないといけないですよね。お金が100枚あれば、1回の交換時間で100回の交換ができるはずです。経済が大きくなってモノの取引量が増えてくると円滑な取引をするために、「交換手段」としてのお金(通貨)の流通量を増やさないといけなくなります。お金が「経済の血液」に例えられる所以です。この程度だったら、こどもに感覚的に伝えられそうですよね。
2つ目は「貯蓄機能」
では、2つ目の役割は、「貯蓄機能」です。
1つ目の役割だった「交換機能」と似ています。「交換機能」がニーズのズレを埋めてくれる役割でした。「貯蓄機能」は、交換における時間的なズレを埋めてくれるものです。
たとえば、
Aさんは、お米を作って売っています。
Bさんは、馬を育てて売っています。
Bさんは、米100kgでないと馬を売ってくれないといっています。Aさんは、1年で100kgの米を収穫しますが、そのうち1年間にAさん本人が食べる米の量は50kgです。Bさんが新米でないと馬を売ってくれないというと、Aさんはいつまで経っても馬を買うことができません(1年間何も食べずに我慢するわけにはいかないですものね)。
ここで、お金(貨幣)があれば、Aさんは、1年目はBさん以外の人に米を50kg売って、受け取ったお金を貯めておいて、2年目にまた米50kgを売って、1年目のお金とあわせて、米100kg分のお金でBさんの馬と交換できるようになります。
将来の交換に備えて、価値を貯めておくことができます。これが「貯蓄機能」です。
交換の時間的ズレを調整することで交換が成立しやすくなります。
FPが得意とするライフプランニングは、20歳~60歳までのいわゆる現役世代の労働で交換価値を蓄積して、老後の消費に備えるというお金(貨幣)の貯蓄機能なしでは、語れません。
こどものうちに、毎月のお小遣いを貯めると将来まとまったお金で高いおもちゃも買うことができる、という成功体験などを通じてお金の貯蓄機能を体感させてあげたいですね。
3つ目は「価値尺度」
スーパーで、200円のお醤油と500円のお醤油があることにあなたのこどもが気づきました。大きさは同じなのに値段が違うのをみて不思議そうにしています。あなたは、どのように説明してあげます?
大抵の方が、シールに記載されている表示を見て違いを見つけようとされるのではないかと思います。
そして「有機栽培」の大豆だとか、国内産だからなどと違いをみつけて説明してあげるでしょう。
では、1,000円と5,000円の口紅などのお化粧品ではどうでしょう。使ったことのあるブランドならその価値は実感しているでしょうが、使ったことのないブランドだったら、どうでしょう。5,000円のものの方が「良いモノ」だと思うのではないでしょうか。
お金の数量をあらわす価格には、その商品の価値を類推させる効果があります。これを「価値尺度」といいます。
例えば、国産車と外国産車があったとします。性能的に同じであっても国産車は200万円、外国産車は600万円で販売されていることがあります。理由は、輸入するときの物流コストが上乗せされているからですが、200万円の車と600万円の車では、600万円の車の方が高級そうな感じがしませんか?
車の「機能」だけにお金をはらうのなら、200万円。日本ではめったに買えないという「希少性・希少価値」にお金をはらうなら600万円、ということになるのでしょう。
お金は、「価格」という共通のモノサシで評価を可能にします。上記の例でいうと「その希少性という価値」を上回るお金の使い途が見つかれば、差額400万円は違った使われ方になるでしょう。
お金の上手な使い方とは、売り手がつけている価格と自分自身がもっている価格とのズレをうまく活用して、限られた予算でいかに自分がたくさん満足できるか、ということのような気がします。
現代の日本人は、一生のうちに3億円以上のお金を使っているという統計データもあります。その1割を工夫できただけでも3,000万円の貯蓄が可能なんですね。こどものうちから上手な消費行動を習慣づけることは、価値がありそうですよね。
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