【2010年 第6回 欧州発金融危機と顧客心理】 金融危機から顧客を守れた理由
岩田 亮 ⇒プロフィール
筆者は今年春に資産運用講演会を行いましたが、聴講いただいた方々から、「今後も投資のアドバイスをしてほしい」という要望が多数寄せられたため、約20人で投資の勉強会を立ち上げました。
この勉強会の参加者は年齢層が高く、投資の初心者が大半です。
年齢が高いからなのか、初心者が多いからなのか、助言をするとすばやく反応する投資顧問客と違って、なんとなくのんびり構えている印象です。
執筆をしている現在は5/25の夜です。
すっかり相場は荒れはて、リーマンショックを彷彿とさせる事態となってしまいました。
筆者が全ての関係者に「リスク資産からの資金待避」の助言、もしくは「売り指令」を出したのは、ゴールデンウィークの前のことでした。
そして実際に、日経平均株価は当時の11,054円から9456円まで下落し、半月で14.5% もの急落となったわけです。
その間、海外の株(欧米、新興国共)も1割~2割の急落、ユーロ円や豪ドル円などの為替も1割以上下落しましたから、おおよそ日本人の持っている株や外貨預金、投資信託などの大半が、大きく値を下げたことになります。
リーマンショックの時、やはり私は同じように退避指令を出しておりましたが、その時も、そして今回も、相場に慣れてきていた投資顧問の顧客は即座に反応しました。
しかし新規の勉強会の方々に対しては、なかなかその緊急性のニュアンスが伝わりきれません。
結局半数の方々は、タイムリーな情報をもらっても機敏に動くことができずに、リーマンショックに引き続き、再び資産を大きく減らしてしまうのです。
“いったん大きく資金を減らすと再起が難しい” というのが私の最大の主張点ですから、歯がゆい思いをしたのは言うまでもありません。
しかしこの度は、彼らとのこれらのやり取りの中から、「一般的な投資家がもつ典型的な感情」を再認識、もしくは整理することができました。
1.いったん売却することで含み損を確定するのがとにかく厭。(塩漬けの素)
- 放っておけばまた上がると言われているか、自らもそう信じこんでいる。
3.証券を短期で売ったり買ったりすることは面倒くさい。
4.信用取引(空売り)は怖いから厭だが、FXで大もうけをしてみたい。(少々意味不明)
これらの感情をお持ちの相談者に対し、投資助言者は時に心を鬼にしなくてはなりません。
その責任の重さから決断が躊躇されることも多いのですが、助言を引き受けた以上、きちんと相談者をお守りしようと思えば、私はあえて背中を押します。
初心者はいつも迷っていますし、なかなか思い切れないものです。
でも、親切のつもりで投資判断をご本人に任せた結果、「救えたのに救わなかった」となれば、自らの存在価値を疑うことにもなりかねません。
※背中を押すには投資助言登録が必要です。
さて現在のマーケットですが、筆者はこう判断しています。
結論から申しますと、状況はリーマンショックの時と酷似しており、当面の間は相当の注意を要すると考えます。
リーマンショックの原因は、それまで膨らみに膨らんできた投機マネー(デリバティブ)が、膨らみ過ぎたことでコントロール不能になり、一気に逆流(投資された資金のアンワインド:巻き戻し)が起こったことにありました。
バブルによって起こったリーマン危機は、再びバブルを創造することでしか解決できない…欧米の首脳はそう判断したのでしょう。
その後の株価の回復や新興国不動産の高騰は、不良債権の粉飾と財政政策(バブル創造政策)によって、無理やりに作られてきたものです。
そう、あっという間にあの投機マネーのバブルが再創造されたのです。誠に手際のよいオペレーションだったように思います。
しかし、無理は随所にひずみを生みます。
このところの欧州発の信用不安、欧米の金融に対する規制強化などをきっかけとして、再び投機マネーは一気に縮小:アンワインドを始めています。
起こっていることは、きっとあの時と同じ。当面混乱は続くと思われます。
このコラムが掲載されるまでには半月ほどの時間がかかるようです。
6月のその日、マーケットはどんな様子でしょうね?
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