【2010年 第4回 “リーマンショック” で起こったこと】 金融危機から顧客を守れた理由
岩田 亮 ⇒プロフィール
100年に一度…リーマンショックの世界同時株安をとらえて、よくこんな表現が使われます。
しかし、この表現は誠に誤解を生みやすいフレーズで、間違って解釈すると、今後も同じ過ちを犯すことになると思います。
「100年に一度」というフレーズには、「100年に一度の予測不能な出来事だったから…」というイクスキューズの意味合いと、「今後も100年間このようなことは起こらないから、安心して金融商品を買ってください」という販売側のセールストークが内包されていると思います。
100年前を振り返ると、確かに1929年の「暗黒の木曜日」から始まった世界大恐慌は、大変な株価の暴落を伴うものでした。
当時のデータを確認すると、ほんの2~3年でNYダウ平均株価指数が9分の1にまで暴落しています。
しかし実は、このNYダウの暴落は、一次大戦後の米国内の過剰な投機熱が一気に膨れ上がり、そしてそれが一気に破裂しただけの、案外うすっぺらな現象で(それが世界恐慌に発展したのは別の原因)、現代の根深い構造を持つ金融危機と比較すべきものではありません。
現代の金融危機の本質を筆者はこのようにとらえています。
日本と米国のそれぞれにおいて、GDPと株価指数を比較すると分かるのですが、日本においては1992年あたりで完全に株価バブルが解消しているのに対し、この頃から米国金融界では巨大なバブルが発生しており、それはITバブルの崩壊、リーマンショックを経てもまったく解消されずにいます。
このGDPと株価のかい離はまさにバブルで、それはレバレッジで資金を何十倍にも膨らませたマネーゲームによってもたらされます。
要するにそれは、「金融工学を駆使した(一般大衆には理解できない)金融商品を次々に生み出し、世界中のマネーをアメリカにかき集める」という米国特有の国家戦略であり、米国はまだその戦略を放棄しておらず、未だに作戦の真っただ中にあると言えます。
ただしこの戦略は、利己的な無理を通すために時々制御不能に陥るのです。
エンロンの問題などはまだ記憶に新しいところですが、まさに象徴的な出来事でありました。
かくして数年に一度は起こるようになった株の大暴落や金融不安は、米国がこの戦略を続けているうちはいつでも起こりえるのです。
今回のリーマンショック(米国発の金融危機)は、やはりマネーゲーム…具体的には資産担保証券やクレジットデフォルトスワップなどのデリバティブが制御不能になったことで起こりました。
その不良債権は天文学的数字でありながら、一般投資家には見えない場所に隠されたまま残っています。
デリバティブの残骸は火種です。
いつ何時、またその焼けボックリに火がつくやもしれません。そしてそんな火種が米国内に限らず、欧州など世界各国に存在することも忘れるべきではないでしょう。
昔の世界恐慌と昨今の金融恐慌はまったく構造が相違しています。
そしておそらく、このデリバティブ主導のマネーゲームがマーケットの主役を務めている状況下では、「今後も数年に一度は大暴落に見舞われる」ことを前提にすべきです。
マーケットは非常に危険な場所になりました。
かくして今後は資産運用のアドバイスにも高度な知識が求められ、よくデリバティブを理解しないと環境変化に対応できなくなったと考えます。
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