【2005年 第3回】 住居費 ~家計にゆとりをもたらす広い持ち家~ 老後
鈴木 克昌 (スズキ カツマサ)⇒ プロフィール
家計の支出全体の中で住居費にかかる割合は、地域によってかなり差があります。
これは、地価の違いによるところが大きいと思われます。
住宅ローンの返済
住宅ローン返済や固定資産税も実質的な住居費に含めて考えると、地価の安い地域は、それだけローンの借入額も土地に係る固定資産税の負担も少なくて済み、また、一般に賃貸住宅の家賃も低い傾向があるからです。
住宅ローンの返済があると、実質的な住居費の点で、持ち家か借家かによる違いはそれほどありませんが、ローン返済が終わった後の老後の家計を考えたときには、持ち家と借家の間には、非常に大きな格差が生じることになります。
信越・北陸地域の住居特性
国勢調査(2000年)のデータ(下表参照)をみると、信越・北陸地域の世帯では、全国1位の富山県を筆頭に、総じて持ち家率が高くなっています。
また、総務省のまとめた「社会生活統計指標 -都道府県の指標-2005年」(下表参照)によると、信越・北陸地域には、持ち家の一戸建て比率が高く、1住宅あたりの延べ面積が広いという特徴があります。
民営賃貸住宅の家賃や、消費支出に占める住居費割合(住宅ローンの返済を含まない)にはバラつきがありますが、富山・福井の住居費割合は全国で最も低い水準にあります。
信越・北陸地域には、2世代・3世代の同居率が高いという特質もあります。それが住宅の広さの要因にもなっていると推測されますが、持ち家率の算出にあたっては、他世帯との同居も「持ち家」に含まれるため、同居率の高さは持ち家率の高さにもつながっているとみることができます。
富山県の消費支出
富山県の消費支出の内訳を見ると、「その他支出」の割合が35.3%で全国1位、「その他支出」の中でも「こづかい」に分類される使途不明金の割合は全国平均の2.3倍と、格段に高くなっています。
これは、前述のとおり世帯の「財布」の数が多く、各人の自由に使えるお金が多いためです。
このことは、高齢者の暮らしの豊かさにもつながると思われます。
冒頭で述べたように、無職の高齢者世帯の家計収支が全国平均では赤字であるという状況を考えると、3世代同居を基本としたライフスタイルが家計を豊かにし、老後の生活にもゆとりをもたらしている富山県の例は、核家族化が進む今日にあっては、希少価値があると言えるかもしれません。
参考:信越・北陸地域の住居特性
【2005年10月26日00時00分】
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