【2016年 第4回 「紙をめくる」それとも「指を滑らす」本の未来を考える】生活に欠かせない持ち物!これからどうなるの?
小松 英二(コマツ エイジ)⇒プロフィール
移動で使う電車やバスの中は「使い方フリー」の空間。
瞼を閉じて休めている人、音楽を聞く人、語らう人々などさまざま。
その空間で本を読む人も少なくありません。
ただ、その読み方にも変化が。単行本や雑誌など紙の媒体から、スマホ画面などの読書に大きくシフトしつつあります。
今回は「紙の媒体VS電子媒体」の視点で本を取り上げます。
「活字離れ」が進んでいるわけではない
「紙の媒体VS電子媒体」を比較する前に、気になる「活字離れ」との指摘。本当にそうでしょうか。
確かに駅前の書店もコーヒーショップに。「本と読者をつなぐ書店」は岐路に立たされています。
でも電子書籍の勢いは増すばかり。
電車の中でもスマホやタブレット型端末からビジネス書、小説、コミックなどを読みふける姿は目立ってきています。
“若者の活字離れ”との指摘は、「紙で読んでこそ読書」といった考えに固執しており、視野が狭いのではないでしょうか。
考えてみればインターネットにおいても、「活字情報」が世界を駆け巡っています。
YouTubeなどの動画情報も広がっていますが、基本は活字情報でしょう。
かつて活字情報の発信は、ごく限られた人々(書くことを仕事にしている人や専門分野の有識者といわれる人など)でした。
でも今は、ブログやフェイスブックにいつでも気軽に活字情報を発信できます。
「指を滑らす媒体」スマホにより、活字情報を介して世界とつながる時代となったのです。
保有の満足感と反面スペース問題を抱える“紙の媒体”
電子媒体が普及する中で、劣勢となっている紙の媒体のメリット・デメリットを見ていきましょう。
まず、メリットから。自分流の本の持ち方ができます。
本棚に趣味のコーナーを設けることも、気になる調べ事も容易にできます。
筆者の本棚には、岩波文庫や歴史書など40年~50年前に読んだ本も並んでいます。
かなり紙焼けしていますが、支障なく読めます。また、ビジネス書や参考書などで新しい分野を勉強する際、マーカーで線を引いたり、書き込みしたりすることで、記憶に残りやすくすることも。
付箋をペタペタ貼り、必要とする情報に素早くアクセスすることも工夫しだいです。
一方デメリットは、かなりのスペースを占め、部屋を狭くすること。狭い家では「断捨離」は課題の1つ。
それに昨今本の値段は結構高い!1500円、1700円くらいなら何とか買う決断もつけられますが、2000円以上となると躊躇してしまうでしょう。
大事なことは本の中味と値段の関係ですから、一概に高低を語れませんが、本の値段は家計にズシリときます。
安価に入手できる反面眼の健康が気になる“電子媒体”
電子媒体ですが、まずはメリットから。
格納スペースがいらないことは最大のメリット。
操作方法さえマスターすれば、再び読むことや、探し出すこともさほど問題にはならないでしょう。
何といっても、紙の媒体よりも安いことは大きく、経済的な「お買い得感」は決定打です。
デメリットとして眼を悪くすることは無視できません。
筆者を含めた中高年の心配事に、眼の負担があります。
テレビを見ていても辛くなる世代には、電子媒体は大きな負担です。
また、紙の媒体より安いといっても、書店に並んだ数カ月後に、例えば1700円ほどの本が300~500円程度安いことは「お買い得感」でしょうか。
感じ方なので人それぞれですが、迷ってしまいます(このケースでは、筆者は紙の媒体を選びます)。
このように両者にはそれぞれの利点や欠点がありますが、浮かび上がってくることは「個別事情に左右されそうだ」ということです。
年齢、家のスペース、眼の負担、家計の事情、所有へのこだわりなど。
さらに、流行を追う者、流行を嫌う者など、個人の嗜好や考え方にも拠るでしょう。
電子書籍へのシフトには勢いがありますが、落ち着いてくれば、紙の媒体のメリットも捨てがたく、「棲み分けが続く」のではないでしょうか。
因みに筆者は、雑誌やビジネスハウツー本など、ぱっと読んで捨ててしまうような本は電子書籍で、深く味わいたい文芸作品などは本を購入し、最後は本棚に、といった棲み分けのイメージを持っています。
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