【2012年 第9回】 子育て世代はこんなときに生命保険を見直す!
ライフプラン別コラム – 子育て世代の生命保険入門
平野 雅章(ヒラノ マサアキ)⇒プロフィール
今の時点で必要な保障額を計算し過不足なく生命保険に加入したとしても、必要な保障額は変化していくため、生命保険の保障額も適切な時期に見直す必要があります。
今回はどんなときに生命保険を見直すとよいかを考えます。
子どもの誕生と進路によって生命保険を見直す
生命保険の死亡保障額を決めるには、必要保障額という考え方があります。必要保障額とは、家計を支えている人が亡くなったと仮定して、遺族の今後の支出と収入を見積もり、その支出額から収入額を差し引いた金額です。
遺族の今後の支出では、子どもの独立と配偶者の死亡までに必要な基本生活費(食費・光熱費・通信費・被服費など)と、子どもの教育資金、住居費用、葬儀費用などを見積ります。遺族の今後の収入では、遺族年金、死亡退職金、預貯金、配偶者の給与などを見積ります。多くの家庭では支出額より収入額が少なくなるので、足りない金額を保険で補うことになります。
(必要保障額の計算については、「第3回 子育て世代の死亡保障はどのぐらい必要?」で詳しく説明しています。)
新たに子どもが誕生した場合の必要保障額について考えると、遺族の今後の支出では基本生活費が増えるのに加え、子どもの教育資金があらたに必要となります。一方、収入では遺族年金が増えますが、通常、支出の増加を補えるほどではないため、必要保障額が増加することになります。
また、子どもの進路を小・中・高等学校と公立で考えていて、実際には中学から私立に入学したという場合は、必要な教育費が大きく増加するため必要保障額も増えてしまう可能性があります。
子どもが誕生した時に加え、子どもの進路が予定と変わる場合は、必要保障額をあらためて計算し生命保険の見直しを検討しましょう。
住宅を購入したら生命保険を見直す
住宅を購入する場合、購入資金は自己資金に加え、住宅ローンの借り入れにより支払うことになります。多くの金融機関では、団体信用生命保険への加入を住宅ローン借り入れの条件としています。団体信用生命保険とは、住宅ローンを借りた人が死亡した場合、住宅ローンの残債を清算し0にしてくれるというものです。つまり、住宅ローンを借りると、借入金額と同額で死亡保障の保険に加入したことになり、それまで加入していた生命保険と合わせると死亡保障額が過剰になってしまう可能性も高いのです。
住宅を購入したら、住宅ローンが清算されると仮定して必要保障額を計算し、生命保険の見直しを検討しましょう。
配偶者の収入が増えたら生命保険を見直す
子どもが幼いうちは専業主婦だった妻が子どもの成長により働き始めた、あるいは時短勤務やパートで働いていた妻がフルタイムで働くようになり収入が増加したという場合は、必要保障額の計算上、遺族の今後の収入が増え、必要保障額が減ることになります。しかし、そうした配偶者の収入の変化による見直しはすぐに行わない方がよいでしょう。新たな働き方が継続できるのかは、一定の期間を置いて判断した方がよいからです。
継続できると判断して生命保険の見直しを検討する場合は、必要保障額の計算で配偶者の年収額と収入を得られる期間をやや少なめに見積もるとよいでしょう。多めに見積もってしまうと必要保障額が計算上少なくなり、それに基づいて生命保険の死亡保障額を減らしてしまうと、あとで不足することになりかねません。
何もなくても定期的に生命保険を見直す
ここまで書いてきたようなことが起こらなくても、生命保険は定期的に見直した方がよいでしょう。必要保障額は遺族のその後の収入と支出の差額であり、通常、子どもの誕生をピークに月日の経過により減っていきます。死亡保障額が変わらない定期保険や終身保険に加入していた場合は、自然に保障額が過剰になっていきます。また、必要保障額の減少を想定して、少しずつ保障額が減っていく収入保障保険や逓減定期保険といったタイプの保険に加入していたとしても、想定通りのペースで必要保障額が減っていくとは限りません。(収入保障保険については、「第5回 子育て世代に合う収入保障保険のポイント」で詳しく説明しています。)
定期的に見直した方がよいもう一つの理由は、保険商品の変化です。例えば、たばこを吸わない人は保険料が安くなる「非喫煙体」という保険料率を導入した保険会社があるように、あらたな仕組みで保険料を抑える商品が出てくるかもしれません。また、この5年ほどで考えても、一部の保険会社による保険料引き下げやネット生保の登場もあり、死亡保障の生命保険の保険料水準は下がったと言えるでしょう。保障額が変わらなくても、見直しでメリットを得られる可能性は今後も充分にあると思われます。
家族構成や状況に変化があればもちろんのこと、何も変化がなくても数年に1度は生命保険を見直すようにしたいものです。
次回の記事では学資保険について、メリット・デメリットをじっくり考えてみたいと思います。
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