【2012年 第2回】 保険を考える前に知っておきたい遺族年金
ライフプラン別コラム – 子育て世代の生命保険入門
平野 雅章(ヒラノ マサアキ)⇒プロフィール
なんとなく決めがちな生命保険の死亡保障額について、前回の記事では必要保障額という考え方を紹介しました。遺族の今後の支出と収入を見積もり、支出から収入を差し引いた金額が必要保障額です。その金額に生命保険の死亡保障額を合わせれば、過不足のない保障を得ることができます。ところが遺族の主な収入の1つである遺族年金について、どの期間、いくらぐらい受け取れるかを把握している人はとても少ないのです。必要保障額を計算して、生命保険の死亡保障額を決めたという人がほとんどいないのは、そのせいかも知れませんね。そこで今回は遺族年金について解説していきます。
どの期間、遺族年金をもらえるの?
遺族年金とは、みなさんが加入している公的年金から、死亡したときに残された配偶者や子に支払われる年金です。遺族年金には遺族基礎年金、遺族厚生年金、遺族共済年金の3つがあり、どの遺族年金を受け取れるかは、亡くなった人の職業によって異なります。年金の種類によって、遺族年金を受け取れる遺族の範囲も異なりますが、ここでは高校生以下の子どもがいるご夫婦で夫が亡くなった場合を考えます。
自営業など国民年金に加入していた人の妻は、遺族基礎年金を受け取ることができます。ただし、受け取れる期間は、子ども全員が高校を卒業する(18歳の年度末を過ぎる)までです。
サラリーマンなど厚生年金に加入していた人の妻は、遺族基礎年金と遺族厚生年金を受け取ることができます。遺族基礎年金を受け取れる期間は、自営業などの人の遺族と同じです。一方、遺族厚生年金は妻が生きている限り受け取ることができます。
いくらぐらい遺族年金を受け取れるの?
まず、遺族基礎年金ですが、基本額は年間で約78.9万です。子どもがいると加算があり、子ども2人までは1人につき22.7万円、3人目以降は1人につき約7.6万円が基本額に加えられます。
厚生年金に加入していた人の妻は、さらに収入と加入月数に応じた遺族厚生年金を受け取れます。例えば、平成15年4月入社で平均標準報酬額*が35万円、加入月数100月の人の遺族は年額約45.9万円を受け取ることができます。なお、加入月数が300月に満たないときは300月で計算されますので、20代・30代の人が亡くなった場合でも、遺族厚生年金の金額が極端に少なくなったりはしません。
また、夫の死亡時に子どもがいない妻は遺族基礎年金が受け取れないので、その救済策として中高齢寡婦加算という上乗せがあります。中高齢寡婦加算は、夫が亡くなった時に子どもがいて遺族基礎年金を受け取っていた人でも、子どもが18歳になった年度末に妻が40歳以上であれば受け取ることができます。受給期間は妻が65歳になるまでで、受給額は約59.2万円です。
さて、特に厚生年金に加入していた人の妻には多くの年金と加算があるので、混乱してきたかもしれません。夫が平成15年4月入社で平均標準報酬額*35万円、厚生年金の加入月数100月、死亡時の遺族は妻と子どもが1人の場合、どのように遺族年金を受け取れるか図で整理してみました。
子どもが高校を卒業するまでは、年150万円近い金額を受け取ることができ、その後も100万円以上の受給額が続きます。想像よりも受け取れる金額が高かったという人が多いのではないでしょうか。
*平均標準報酬額とは、平成15年4月以降の厚生年金加入期間中の給与とボーナスを所定のルールで合計し、加入月数で割った金額です。それ以前では、ボーナスが厚生年金の保険料および受給計算の対象外でした。
保険を考える時は必ず遺族年金の試算を!
年間で百数十万円を受け取れるのであれば、遺族年金を考慮するのとしないのでは、必要保障額に何千万円も差が出てしまいます。生命保険を考える時には必ず、遺族年金で受け取れる金額の試算をしたいものですね。
遺族年金の試算はファイナンシャルプランナーなどに依頼することもできますし、多くの保険会社は遺族年金を考慮して必要保障額が試算できるソフトを用意していますので、保険商品を選ぶ前に、まず遺族年金と必要保障額の試算を依頼するのもよいでしょう。
前回と今回の記事で、遺族の主な支出である教育費と、主な収入である遺族年金について解説してきました。次回の記事では、必要な死亡保障の金額である必要保障額について、詳しい計算の仕方や金額の目安をご紹介します。
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