子育て世代に合う収入保障保険のポイント【2012年 第5回】

【2012年 第5回】 子育て世代に合う収入保障保険のポイント
ライフプラン別コラム – 子育て世代の生命保険入門

平野 雅章(ヒラノ マサアキ)⇒プロフィール

 

子育て世代ではまとまった金額の死亡保障が必要なケースも多いもの。一方、将来の教育費を考えると、保険料の負担は抑えて貯蓄に回したいところです。そうした世代にマッチする「収入保障保険」の仕組みとメリット・デメリットについて、今回は解説します。

 

 

 

 

保障額は少しずつ減っていく

「収入保障保険」とは、保障の対象となった人が死亡した場合や所定の高度障害状態になった場合、加入時に設定した保障期間が終わるまで、遺族に毎月一定の金額が支払われる保険です。

例えば、夫が30歳時に月の受取額を10万円、保障期間を60歳として加入後すぐに亡くなると、30年間、毎月10万円を遺族が受け取れることができ、受取総額は10万円×12ヶ月×30年=3,600万円となります。夫が10年後の40歳時に亡くなったとすると受取総額は10万円×12ヶ月×20年=2,400万円、50歳時では1200万円と、年月の経過により少しずつ保障額が減っていくという仕組みです。

受け取り方法を選べる

収入保障保険はお給料の代わりとして、毎月一定額を受け取ることができるという仕組みが基本ですが、多くの保険会社では一括で受け取る、あるいは毎月と一括の組み合わせで受け取ることも可能です。

例えば、大学入学前に収入保障保険に加入している父親が亡くなり、手元の貯蓄が充分でないという場合には、一括で受け取り大学の入学金や授業料に充てることができます。

ただし、一括で受け取る場合の金額は、毎月受け取った場合の受取総額より減ってしまいます。保険会社は、一括での支払い金額が毎月支払う金額の元の金額であり、元の金額に対し想定した利率での利息と元を取り崩した金額とを足して毎月支払うという計算をしています。つまり、遺族が毎月受け取る場合は利息の分が増えているということになります。

受け取りの保証期間がある

保障期間の終了間近で保障の対象となった人が死亡した場合、遺族が受け取れる金額がとても少なくなってしまうということが考えられますが、「最低支払保証期間」というものがあり、多くの保険会社では1・2・5年などから選択できます。

例えば、月の受取額10万円で最低支払保証期間5年を選択した場合、保障期間が残り5年に満たない時点で死亡した場合でも、5年間(60回)に渡り10万円、合計600万円を受け取ることができます。

収入保障保険のメリット

子育て世代では、年齢を重ねると将来の教育費負担なども減っていくため、必要保障額は減っていくのが一般的です。収入保障保険は、期間の経過とともに受け取れる金額が減少していくため、合理的に必要な保障を確保しやすい点が大きなメリットといえるでしょう。
徐々に保障額が減っていく分、保障額が一定の定期保険に比べ、保険料を大幅に抑えることができます。

例えば、30歳男性が普通の定期保険に保険期間10年、保障金額3000万円で加入した場合、月の保険料は30歳時4,700円、40歳時7,900円、50歳時16,400円程度です。一方、30歳男性が収入保障保険に保険期間60歳、月の給付金額10万円(給付金総額3,600万円)で加入した場合、月の保険料は60歳まで2,800円程度となります。

また、メリットとして必要な保障額を決めやすいという人もいます。現在の生活費から公的な遺族年金を引いた金額を、月の受取額として設定すればよいというのがその根拠です。

ところが第2回の記事で書いたように、子どもがいる妻が受け取れる遺族年金の金額は子どもが高校を卒業すると減ってしまうため、子どもが大学や専門学校に行くと先程の計算方法で設定した月の受取額では足りなくなります。また、入学金や家のリフォーム費用といった一時的にかかる金額は、この計算方法では反映されません。さらに、まとまった貯蓄がある場合は、生活費は貯蓄を取り崩して対応できる部分もあり、この計算方法では保障額が過剰になることも考えられます。結局、簡易な計算方法のため、必要な保障に対し過不足が発生する可能性があるのです。

過不足なく保障額を決めるには、第3回の記事で書いたように「必要保障額」を算出し、その金額と収入保障保険における加入当初の一括受取額がほぼ一致するように月の受取額を決めるのが、手間は掛かりますが合理的といえるでしょう。

収入保障保険のデメリット

毎月受け取る場合は、一括で受け取る場合より増えた部分、つまり利息と考えられる部分が所得税の対象となり、税金が掛かる場合があります。また、受取った遺族が国民健康保険に加入している場合は、国民健康保険料が増えてしまう場合があります。これらの点をデメリットとして挙げる人もいますが、私は必ずしもデメリットとして捉えてはいません。

収入保障保険は、一括で受け取ることを基本と考え保障額を決めた方が合理的なのは、既に触れたとおりです。一括で受け取れば、一括で受け取る定期保険や終身保険と同様に、所得税の対象や国民健康保険料の計算の対象となることは避けられます。一括受取を基本とし、毎月受け取ることで受取総額を増やすという選択肢もついた保険として認識すれば、メリットとして捉えることもできると考えています。

次回の記事では、自分に合った収入保障保険の商品を選ぶポイントを解説したいと思います。

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