フリーキャッシュフロー【2014年 第6回】

2014年 第6回 「フリーキャッシュフロー」-会社四季報チェックポイント

長谷 剛史(ハセ タケシ)プロフィール

 

株式投資の王道は、会社四季報に掲載されている項目を理解し活用することです。前回は株価の傾きに最も影響を与えるものとは?ということで「ROE」・「株価のトレンド」を取り上げましたが、今回は黒字倒産を事前に見抜くには?ということで「フリーキャッシュフロー」についてみていくことにしましょう。

 

 

キャッシュフロー計算書

企業が作成する決算書に「キャッシュフロー計算書」があり、キャッシュ=お金の期首・期末の状況及び会計期間内にお金が増減した要因が掲載されています。最近では貸借対照表や損益計算書よりもキャッシュフロー計算書が重視される傾向にあります。

商品やサービスを提供してもすぐに代金を回収できるわけではありませんので、売上とお金の動きにはタイムラグが生じます。その反面、仕入れや借入金の返済で企業からお金が出ていきますので、手元にあるキャッシュが増加しなければ資金繰りが苦しくなり最悪は倒産する可能性があります。

投資家にとっては、投資先企業の倒産が一番怖いわけですので、利益だけを見るのではなく資金繰りがうまくいっているのかどうかをキャッシュフロー計算書で確認することは非常に大切です。

キャッシュフロー計算書は、キャッシュの動きをわかりやすく表示するため、大きく「営業キャッシュフロー」・「投資キャッシュフロー」・「財務キャッシュフロー」の3つに内容が分かれています。

「営業キャッシュフロー」…企業が日常の営業活動から稼ぎだしたお金の動きを表しており、本業での儲けでお金が増加しているかどうかがわかります。つまり、プラスになるのが普通ですのでマイナスになっている場合は、問題を抱えているのではないかと考える必要があります。

「投資キャッシュフロー」…事業を維持拡大するためのお金の動きを表しており、企業の経営方針を確認することができます。積極的な拡大戦略をとる場合は、設備投資にお金を振り向けますのでマイナスになります。一般的にはマイナスになっている企業が多いです。

「財務キャッシュフロー」…企業がどのように資金調達を行い、また返済したのかがわかります。例えば、銀行から借り入れすればプラスになり返済すればマイナスになります。プラスマイナスどちらがいいかは一概には言えず、企業の方針によります。

フリーキャッシュフローとは?

 「営業キャッシュフロー」と「投資キャッシュフロー」を足したものが、フリーキャッシュフローになります。本業で稼いだお金の範囲内で投資を行っているかどうかを見ることができます。マイナスだと例え利益が倍増していたとしても、企業からお金がでていっていることになり黒字倒産に陥る危険性があります。

ただし、成長企業は設備投資等にお金を使っていきますので、一期がマイナスになるのは問題ではありません。2期連続マイナスだとかなり企業からお金が出ていっていることになりますので要注意ですし、投資先として避けたほうが無難でしょう。

会社四季報には2期前と前期のキャッシュフローが掲載されていますので、ユニチャームを例にみてみましょう。(CF=キャッシュフローの略)(2014年秋号より)

2期前 :営業CF(687)+投資CF(-533)=154

前期 :営業CF(956)+投資CF(-582)=374

この例だとお金が企業内に残っていくため問題はありませんが、利益がでていても倒産することもありますので、フリーキャッシュフローは必ず確認するようにしましょう。フリーキャッシュフローは配当原資でもありますので、投資家にとってはチェックしなければいけない指標の1つです。

まとめ

「フリーキャッシュフロー」をチェックすることで、企業の資金繰り悪化による黒字倒産を見抜くことができます。つまり、いくら利益がでていてもお金が底をつく可能性はありますので、会社四季報で確認するようにしましょう。

今回で「会社四季報のチェックポイント」は終了です。株式投資の王道は会社四季報を読みこなし活かすことですので、メディア等に流されるのではなく、自分自身で投資先を選別できる力を付けましょう。

*上記は個別銘柄を推奨するものではなく、わかりやすく解説するため掲載したに過ぎませんのでご注意ください。

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