【2014年 第2回】「相続」ということ~遺産相続の基礎知識~- それぞれの終活をプランすること
山根 裕子⇒プロフィール
「相続」と一言で言いますが、様々な事が含まれています。一度に考えようとするととても広範囲になってしまいます。相続にはいろいろな立場の関係者が登場します。それぞれの立ち位置によって望ましい相続は異なることもあります。ご家庭ごとに事情は違いますから相続には誰にも共通する「正解」はありません。事前にわかっていればできること、できないことなど、整理をしながら説明していきます。
相続のスタートは被相続人の死亡だけ
相続というのはその対象になる方(被相続人と呼びます)に属していた財産などをその方の死亡により、一定の身分の人(相続人といいます)が承継すること全てを言います。
どのように受け継ぐかということは法律(民法)で定められています。
財産が多いとか少ないとかに限らず必ず引き継がれなくてはなりません。
引き継ぐ人がいない場合には国庫に没収されます。
戦前は「家督相続」という制度で「その家を構成するものは人も財産も戸主のもの」という原則で戸主
から戸主へ引き継がれていました。さらに、戸主は死ぬまで戸主ではなく、「隠居」することでその地
位が引き継がれるようなこともありましたが、現在は法律上の隠居制度はなく、相続のスタートは被相
続人の死亡だけです。
死亡の時期というのは通常は医師が死亡と判断した時点ですが、失踪宣告の場合は行方がわからなくな
って7年たった時が死亡の時期となります。
認定死亡という制度もあります。水難、火災その他の事変によって死亡したのは確実であるけれど遺体が見つからないという場合、役所の認定で戸籍上死亡として扱うことがあります。
災害による特別な失踪宣告の場合は不明から1年経過をしたところで失踪宣告がなされますが、東北の震災の時には特別の事態ということで、3ヶ月の経過で手続きが行われました。
相続財産にはプラスの財産とマイナスの財産があります。
引き継がれる財産を相続財産といいます。(遺産ともいいます)
相続財産にはプラスの財産とマイナスの財産があります。
プラスの財産は土地や建物、現預金の他に有価証券や貸付金などがあります。
マイナスの財産としては借入や損害賠償債務、連帯保証債務、未払いの税金や医療費などが相続の対象
になります。
相続による承継とされないものもあります。
(1)被相続人のみに属する地位や権利義務(一身専属権利義務といいます)
(2)生命保険金、死亡退職金、遺族年金など、一定の契約や法律に基いて支払われるもの
(3)位牌やお墓など(祭祀具といいます)
これらは被相続人が亡くなったから引き継がれるものではないという趣旨で定められています。(1)
の例としては雇用契約や委任契約の当事者としての地位、代理人としての地位、親権者の地位など身分
に関する権利義務があります。
これらのものを引き継ぐとしても、それは民法の「相続」によるものとは異なります。
被相続人の財産を相続できる人というのは民法で定められています。
配偶者と①被相続人の子②被相続人の直系尊属(父母)③被相続人の兄弟姉妹です。
①②③と配偶者の組み合わせになりますが、遺言がない限り①と②とか①と③などの組み合わせはありません。
②は①がいない場合に相続人になります。③は①も②もいない場合にのみ相続人になります。
①または③が相続人になる場合に①または③が既に死亡している場合には、その子供は①または③に代わって相続人になります。(代襲相続といいます)
相続人を確認するためには戸籍をさかのぼります。戸籍というのは生まれた時に親の戸籍に出生として始まり、いろいろな事情で戸籍簿が変遷して死亡の記載がされます。
スタートから揃えるのでなく、死亡から遡ります。新しく記載がされた時には必ず「どこの何という戸籍からこの戸籍にやってきた」という事が書かれているのでそこを1つずつ戻っていくことで出生までもれなく戻ることになります。
その過程で新たな相続人が登場することもあるわけです。
相続人が確定して、相続する財産を一覧にして、誰がどのよう
に相続するかということを決めていきます。遺言という形が遺
されていれば、それに従って手続きをします。
それがない場合は相続人同士の話し合いをします。それでもまとまらない時には民法で定められた割合に従って財産を分けていくことになりますが、何でも半分とかというのは実際上は困
難なことなので、何とか話し合いなどで解決しようとします。
財産の分け方についてのお話は次回にいたします。
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