【2015年 第6回 シンガポールからの報告「東南アジアを席巻する日本食」】
「いまシンガポールで起きていること」-シンガポール在住ファイナンシャルプランナーからの報告-
永柄 正智
シンガポールの「いま」をお伝えしてきた連載も今回が最終回となりました。 そこで、今回はシンガポールで感じる「日本食の人気」についてお伝えします。 多くの人種や国籍の人たちが共に暮らす多民族国家のシンガポールでは、世界各国の料理を気軽に楽しむことができます。その中でも、現在、シンガポールで急激に増加しているのが日本食の飲食店です。
皆様、こんにちは。シンガポール在住のファイナンシャルプランナー 永柄正智です。
私が日本の神戸からシンガポールに移住してきてから、約1年半が経過します。
私もそうですが、日本を離れて海外で生活している方のほとんどは、日本食を恋しく感じています。しかし現在、シンガポールでは日本食の飲食店がどんどん進出しており、日本食が市民の間でも一般的なものになってきています。
このような人気の背景にはどのような理由があるのでしょうか。
■シンガポールの食文化
日本でも最近は共働きの方が増えていますが、シンガポールでは以前から女性の社会進出が進んでおり、外で食事をすることが一般的です。なかには3食すべてを外食ですませるという人も決して珍しくありません。そんなシンガポールの人たちにとっては、食に対する関心は並々ならぬものがあるようで、実際にローカルの方々の日常の話題は食べ物に関することが多いようです。
■日本食の人気の背景
シンガポールで日系の回転寿司チェーンにいくと、「いらっしゃいませ。」という声で店内に案内されます。日系の飲食店で共通して感じることは、日本式のサービスで「おもてなし」を行ない、味も現地化しすぎていないことです。日本人の私にとっては、日本語のサービスは妙に安心感を覚えるのですが、逆に海外の方にとっては、身近な場所で日本観光をしている感覚が日本食のお店を選ぶひとつの理由なのかもしれません。
さてシンガポールでは実際にどれぐらいの値段がするのでしょうか。
日系のラーメン店でラーメン一杯を食べた場合の値段は約1,500円です。感覚的には日本の約2倍です。いまや日本と比べても物価がかなり高くなっていると感じるシンガポールですが、それを考慮しても、ただ単にお腹を満たすためだけに支払う金額ではないように思います。おそらくシンガポールの人達は、日本の味とともに、日本のサービスや雰囲気も含めてラーメンに対してお金を払っているのではないかと思います。
日本を離れてわかることのひとつに、日本のサービスのクオリティーの高さがあります。最近では海外で、日本のサービスの価値が大きく認められてきているように思います。
■シンガポールはASEAN進出の起点
寿司やラーメン、焼き鳥、とんかつ等々、あらゆる日本食の飲食店がシンガポールに進出してきていますが、進出の目的地はシンガポールにとどまらず、ASEAN全体を見据えたもののようです。
世界各国の駐在員が集まり、ASEAN各国との人や情報が行き交うシンガポールは、さながら「ショーケース」のような役割を担っています。シンガポールで事業が成功すれば、他国への進出の道も開けます。さらに、年後半にはASEAN経済共同体(AEC)の発足が予定されています。ASEAN地域は、今後の成長が見込まれる地域でもあり有望な市場です。人口の減少や少子高齢化で内需の拡大が難しい日本企業にとっては、ASEAN地域への進出の足掛かりとして、シンガポールが選ばれているようです。
■日本の文化が武器になる
私は最近の訪日外国人の急増は円安だけが理由ではないと思います。
外国人の方々が、日本の飲食店やサービス、日本の製品などを通じて、日本が持つ文化や生活習慣、おもてなしの心などに素直に感動し、日本に行ってみたいと思う人が増えているのだと思います。
これからの日本の成長にとって、海外からの消費を取り込むことはとても重要です。世界に日本の良さを積極的にアピールし、日本のファンを増やすことができれば、日本の未来への成長に大きく貢献していくのではないでしょうか。
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