【2016年 第1回 確定拠出年金を活用した資産形成】資産形成と万一に場合に備えて 知っておきたい公的な制度
恩田 雅之(オンダ マサユキ)⇒プロフィール
2016年のメインテーマは「資産形成と万一の場合に備えて知っておきたい公的な制度」です。
コラムの掲載は、隔月(偶数月)の6回になります。
第1回目のコラムでは、NISAの陰に若干隠れた感のある「確定拠出年金」について取り上げていきます。
はじめに
企業年金は、給付される年金額が確定している「確定給付型」と年金原資が確定している「確定拠出型」の2つ分かれます。
近年は、企業の負担の大きい「確定給付型」から「確定拠出型」への移行が進んでいます。
また、「確定拠出型」は企業が掛金(年金原資)を拠出する「企業型確定拠出年金」(以下:企業型DC)と個人が掛け金(年金原資)を拠出する「個人型確定拠出年金」(以下:個人型DC)に分かれます。
以下では、平成27年度税制改正での改正点が多かった「個人型DC」についてみていきます。
今回の改正点
個人型DCの改正点で注目したいポイントは、専業主婦等の第三号被保険者や公務員等共済加入者、企業年金加入者も個人年金へ加入(平成29年1月1日以降)できるようになった点と拠出規制単位が月単位から年単位に変更になった点です。
*ただし、企業年金加入者については、会社が規約に定めた場合に限ります。
それぞれの拠出限度額(年金原資となる額)は、
・第3号被保険者 年額27.6万円(月額2.3万円)
・公務員等共済加入者 年額14.4万円(月額1.2万円)
・企業年金加入者 年額24.0万円(月額2.0万円)
になります。
また、従来から個人型DCを利用できた、自営業等の第1号被保険者(年額81.6万円:月額6.8万円)や、企業型DCや確定給付型年金(厚生年金基金等)を実施していない企業の従業員(年額27.6万円:月額2.3万円)については、現在と同じ拠出限度額です。
*第1号被保険者は、国民年金基金との合算枠になります。
個人型確定拠出年金のメリット
個人型DCのメリットは、主に税制面にあります。
1.拠出時は、全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)。
2.運用時の運用益(利子、配当、分配金、売却益等)は非課税。
3.受取時は、給付金を年金形式で受取る場合は「公的年金等控除」、一時金で受け取る場合は「退職所得控除」の適用を受けることができます。
*2、3に関しては企業型DCも同様のメリットがあります。
確定拠出年金(個人型、企業型とも)のデメリット
原則60歳まで、途中引き出しができません。
確定拠出年金(個人型、企業型とも)のリスク
加入者個人が運用成績に対して責任を持ちます。運用が好調であれば年金額が増え、不調であれば年金額が減ることになります。
ただし、目標の年金額に達した段階で、運用中に商品の入替え(スイッチング)を行い、預金等の安定資産での運用することもできます。
まとめ
個人型DCや企業型DCも、「通常の資産運用(収益に対して課税される運用)」と同じマーケット(株式市場、債券市場等)に対して投資信託等を利用して投資を行います。
運用商品の選択の良し悪しや世の中の景気動向等に運用成績が左右される点は、「通常の資産運用」と同じです。
但し、上記のように税制面での優遇措置(収益に対して非課税)により税金部分を運用資産として回せますので、「通常の資産運用」に比べて高い複利効果が期待できます。
今後利用できる対象者も増える「個人型DC」は、老後に備えた資産形成を考える上で検討すべき「公的な制度」かと、考えます。
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