オバマ大統領再選後の世界【2012年 第11回】

【2012年 第11回】 オバマ大統領再選後の世界 ケース別コラム – 経済統計から考える資産運用

有田 宏 (アリタ ヒロシ)⇒ プロフィール

 

 

2012年アメリカ大統領選挙でオバマ大統領が再選されました。このことによりアメリカがどの方向に行くのか?そして世界経済への影響そして懸念は?

 

 

 

2012年のアメリカ大統領選挙の結果

2012年アメリカ大統領選挙、結局は現職の民主党オバマ大統領が共和党ロムニー候補を獲得選挙人数で332名対206名の差で下しました。得票率は50.8%対47.6%。大接戦という下馬評でしたが、予想以上の差が付いたようです。

次の図は2008年と2012年の大統領選挙で獲得した州を党派別に色分けしたものです。オレンジは民主党、赤は共和党を表しています。数字は各州の選挙人の数(編集の関係で、一部抜けているところがあります)です。

2008年大統領選挙

 

2012年大統領選挙

Wikipediaより

2008年のマケイン候補と比べて、今回ロムニー候補が新たに獲得した州は、図のインディアナ州(選挙人11名)とノースカロライナ州(選挙人15名)のみ。接戦州の殆どをオバマ氏が制したことが今回の勝因でしょう。

ただ、大統領と上院は民主党、下院は共和党という“ねじれ”は解消されず、政治の停滞が懸念されています。当面差し迫った問題は、2012年末から2013年初頭にかけてのブッシュ減税の失効と債務の自動的な削減。いわゆる“財政の崖”と言われているもので、議会が何も対応できなければこれらが現実的なものになります。これがオバマ大統領再選後のアメリカの株価急落の要因とも思われます。

過去4年間のオバマ政権の経済政策の成果と方向性は、医療保険制度改革、製造業の強化、輸出の増大、緩和的な金融政策というところでしょう。オバマ大統領の経済政策のせいかどうかは断言はできませんが、アメリカ経済は失業率が高止まりしたままですが、雇用者数、住宅市況などに明るい兆しが見え始め、これがオバマ再選の最も大きな要因かと思います。

賢明な政策が実行されることに期待

今後の外交はアジア重視の政策が想定されるでしょう。そのためにはTPP交渉の推進をしていくのではないでしょうか。ただ、アメリカがTPPにより積極的となることと、難航しているTPP交渉が進展するということは別物です。アメリカが自国の国益をより強固に主張すれば、交渉はより困難になることも考えられます。アジア重視という事で中国との関係ですが、最近強くなっている中国の内向き姿勢とアメリカのアジア重視、これは経済面だけに関わらず外交、軍事面においても。中国の新体制の出方も大きいでしょうが、過去を見るとどちらかというと共和党より民主党政権の方が米中関係はぎくしゃくしていたように思えます。

現職のオバマ大統領の再選という事で、経済政策は大きな変更は無いかと思われます。しかし政策の実行には共和党の協力が必要になります。共和党の政策をある程度受け入れなければ、具体的な政策に進展は望めません。ただ共和党にとって厄介なのは小さな政府を掲げるいわゆる茶会党の影響。しかも茶会党自体も一枚岩ではありません。これを制御するのは容易なことではないでしょう。

2008年のリーマン・ショック、最も市場の激震が走ったのは9月15日のリーマン・ブラザーズの破たんした時ではなく、9月29日のアメリカ下院での経済安定化法案が、当時の共和党の統制がとれなかったために否決された時でした。

まだ、ヨーロッパは不安定な状態、まだ火薬が充満しています。アメリカは2大政党の対立の火花を世界にまき散らさず、賢明な政策を実行して欲しいものです。

 

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