【 2010年 第2回】 破綻会社株式の損益通算 資産運用に必要ないまどきの経済知識
有田 宏 ⇒プロフィール
日本航空が2010年1月19日付で会社更生法適用を申請し、2月20日をもって上場廃止となる予定です。
株式は100%減資となる予定。つまり株式は全くの無価値となり、株主としての議決権も無くなります。
企業破綻で株式が無価値となった場合の損失の税金の扱いを考えてみましょう。
まず、上場廃止前であれば、上場株式等に該当し市場での売却による譲渡損は次のような扱いになります。
①株式等の譲渡所得から控除。
②上記で控除しきれない損失は上場株式等の配当所得から控除。
③以上でも控除しきれない損失は、翌年以降の株式等の譲渡所得および上場株式等の配当所得から控除。この控除は翌年以降3年まで繰越が可能。
上場廃止後は上場株式等の特例が使えなくなり、上記①の当年の株式等の譲渡所得からの控除のみとなります。
ただし現実として上場廃止後は株式の売却は困難となるでしょう。
さらに、破綻による100%減資により株式が無価値となった場合、株式を売却していないのでそもそも譲渡損失自体が発生しません。
したがって株式の譲渡所得からの控除すら出来なくなります。
ただし、個人に対する救済策として特定管理株式という制度が有ります。
特定口座内の株式が上場廃止時に特定管理口座が開設されていれば、特定管理口座に特定管理株式として移行します。
特定管理株式が下記のいずれかを原因として無価値となった場合、証券会社から発行される「価値喪失株式に係る証明書」を確定申告書に添付することにより、株式が無価値となったことによる損失は“みなし譲渡損失”としてその年の株式の譲渡益より控除することが出来ます。
ただし上場株式等の配当所得からの控除および3年繰越控除は出来ません。
(1)解散による清算結了。
(2)破産手続開始の決定。
(3)会社更生法による発効済株式の全部の消滅。
(4)民事再生法による発効済株式の全部の消滅。
(5)預金保険法による特別危機管理の開始決定。
注意が必要なのは「価値喪失株式に係る証明書」が発行される条件として、上場廃止後も証券保管振替機構での取扱が継続される必要が有ります。証券保管振替機構による取り扱いが継続されない場合は控除そのものが出来ません。
特定管理口座に移行できるのはあくまでも特定口座内の株式のみです。一
般口座の株式は特定管理口座に移行できず、したがってその年の株式の譲渡所得との損益通算も出来ません。
以上は一般的なケースです。企業破綻の場合さまざまなケースが想定されます。
例えば100%減資とともに既存株主に新株引受権を割り当てる場合など、対応が変わってくる可能性が有ります。
株式が無価値になると同時にその損失も通算できなくなるというようなことは、避けられるものであれば避けたいものです。
不明な点は速やかに(遅くなっては手遅れのことも)取引証券会社に問い合わせるべきでしょう。
日本航空の場合は下記の点がポイントのなりそうです。
(1)現在取引している口座は特定口座か?
(2)特定管理口座は開設されているか?
(3)上場廃止後も証券保管振替機構での取扱が継続されるか?
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