2014年 第4回~遺言でできること、できないこと②~- 相続の実際の現場からレポ
竹原 庸起子(タケハラ ユキコ)⇒プロフィール
相続専門のファイナンシャルプランナー・行政書士の中野庸起子です。前回は、法律で定められている各種遺言の文中に「生きている間にもできるけれども、遺言でもできること」「生きている間にはできないので、遺言に書かなければ効力が生じないこと」についてお伝えしました。今回は、よく「これは遺言に書けるのか、効力があるのか、それとも書けないのか」と相談を受けることから、「遺言に書けるけれども法的な効力はないこと」についてお伝えします。
遺言書を残したい人にとっては、遺言書は自分の死後に家族が読む生前のメッセージですので、いろいろと遺言に書きたいと思われるのではないでしょうか。遺言に書くのは自由ですが、書いても法的拘束力がないことがあります。つまり、「家族へのメッセージ」にはなりますが、その内容を実行するかどうかは残された家族次第で、法律上それを実現しなければならない義務はないことです。それはいったいどのような内容でしょうか。今までに私が遺言の書き方相談を受けた内容では、下記のような例が挙げられます。
みんな仲良く暮らしてほしい。
残された奥さんを子供たちで協力して大切に面倒をみてほしい。
自分の家を相続した人は相続した後は一生その家に住んで、他へは売るな。
愛するペットの面倒を看てほしい。
自分が死んだら臓器提供したい。
遺体は解剖にまわしてほしい。
自分が死んだら○○と○○は離婚しなさい。
自分が死んだら長男ではなく次男が跡取りになりなさい。など
他にも、先日とある取引のある葬儀社の担当者から「『自分が死んだら○○を自分の養子にする』と遺言書に書けば、生きている間にはいろいろな事情があってできないけれども、自分が死んだらできるのではないかと、お客様から聞かれたのですが、できますか。」と問い合わせがありました。
これはできません。養子縁組は養父母も養子も生きている間にしかできないのです。自分が死んだら跡取りが居なくなるから、死んだら○○が養子になってくれればいいのではと思ってのことですが、残念ながらできないのです。
「こんなこと書いても効力ないって、そりゃそうでしょ」と思うことかもしれませんが、遺言書を残したいという人からの相談では案外聞かれることです。
では、もし、法的効力がないけれども自分が死んだら家族に伝えたいメッセージがあるのでしたら、それは遺言書ではなく「エンディングノート」で残してはいかがでしょうか。遺言という法律上の形式にとらわれずに想いのまま書けますし、自分の思いを自分の言葉で伝えられます。遺言を書く側も残された側も、お互いが「ありがとう」という感謝を示すには「遺言書」と「エンディングノート」と両方ともを、「争族」ではなく「想族」のための必須アイテムにしてはいかがでしょうか。
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