【2013年 第2回 今月の数字2:相続税が2割もアップ!?】相続に関する数字エトセトラ
平川 すみこ ⇒プロフィール
このコラムでは、相続と関して知っておきたい話題を毎月の数字に絡めてお伝えしていきます。
2月の数字は「2」。相続税の改正が行われると申告・納税が必要になる方が増える見込みですが、できれば納税額は少なくすませたいもの。それなのに、相続税では納税額が2割もアップになる場合があります。さて、一体それはどういう場合でしょうか?
相続税額の2割加算
相続税には納付額が2割増しになる「相続税額の2割加算」という制度があります。
2割加算されるということは、加算前の相続税額が100万円だとすると、2割の20万円を加算して120万円納税しなければならないということです。ただし、誰もがというわけでなく、2割加算される者は限定されています。
■2割加算されるのは誰?
2割加算されるのは、「配偶者と一親等の血族」以外の者です。
逆に言えば、「配偶者」と「一親等の血族」は2割加算されないということです。
ここでいう「一親等の血族」とは、亡くなった方(被相続人)の父母と子になります。被相続人が養子縁組をして養子になっている場合は、養父・養母も含まれますし、養親になっている場合は、養子も含まれます。
例えば、「長男の妻」を養子にしている場合、その長男の妻は相続人にもなりますし、相続・遺贈で取得した相続財産にかかる相続税には2割加算されません。
また、孫は二親等の血族ですが、子が被相続人よりも以前に死亡しているような場合で、その子の代襲相続人になっている孫は一親等の血族に含めるため、2割加算しなくてよいことになっています。
よって、2割加算の対象となるのは、祖父母や孫・曾孫等(代襲相続人になる者は除く)、兄弟姉妹(甥・姪含む)、内縁関係の夫または妻、それら以外にも遺贈で相続財産を取得する者ということになります。
「内縁の妻」や「長男の妻(養子ではない)」、「(相続人ではない)姪っ子」は相続人にならないけれど、面倒をよく見てくれて感謝しているから遺言で財産を遺してあげよう(これを遺贈といいます。死亡保険金の受取人になっている場合も遺贈と同様の扱いとなります)ということもあるでしょう。その場合、遺贈で財産を取得した「内縁の妻」や「長男の嫁」、「姪っ子」の相続税は2割増しになってしまうのです。
■養子でも2割加算される場合がある!
ところで、被相続人の養子であっても、2割加算されてしまう者がいます。
それは、被相続人の孫や曾孫で養子になっている者、いわゆる「孫養子」です。(先述の代襲相続人になる孫・曾孫で養子になっている者は除きます。)
子が健在の場合、本来であれば、被相続人の相続で子が財産を取得して相続税が課税され、次にその子の相続で孫が財産を取得して相続税が課税されるところ、孫を養子にしていれば、被相続人の相続で直接孫に財産を取得させることができ、その分相続税を1回飛ばすことができてしまいます。
もちろん、養子にせずとも、遺言で孫に直接財産を取得させることもできますが、その場合、財産を取得した孫にかかる相続税は2割加算になります。
養子になっているから2割加算にならないのは公平ではないという考えになったのか、平成15年4月1日以降の相続から、孫養子は2割加算の対象者となっているのです。
■相続放棄をすると2割加算になる?
2割加算の対象者にならないのは、あくまでも「配偶者」と「一親等の血族(養子・代襲相続人含む)」であって、相続人かどうかは問いません。
ですから、祖父母や養子である孫・曾孫(代襲相続人になる者は除く)、兄弟姉妹(甥・姪含む)が相続人であったとしても、2割加算になってしまうのです。
逆に、配偶者と一親等の血族(養子含む)が相続放棄をして相続人ではなくなったとしても、遺贈で財産を取得した分の相続税は2割加算しなくてよいのです。
ただし、代襲相続人の孫が相続放棄をして相続人でなくなった場合、遺贈で財産を取得した分の相続税は2割加算の対象になります。なぜなら、相続放棄をするということは、代襲相続人の地位を放棄したということになるので、単なる孫(二親等)でしかないですよね、ってことなのです。
■2割加算にご用心!
今後の相続税・贈与税の改正予定をふまえ、相続税対策として
・基礎控除・生命保険の非課税を増やすために養子縁組をする
・生前贈与を行う
という動きが増えてくるかもしれません。
孫や曾孫を養子にした場合は、その者の相続税は2割加算になりますね。また、「相続時精算課税制度(2,500万円まで贈与税非課税)」が祖父母と孫の間でも適用できるようになる方向ですが、贈与者である祖父または祖母の相続においては、相続時精算課税制度で贈与を受けた分はすべて相続財産に加算し相続税を計算します。その際、受贈者である孫の相続税は2割加算の対象だということも念頭においておきたいものです。
2割の加算は結構多額になることもあるので、相続税の試算をしてみる際は、2割加算の対象者になる者がいないかどうか、いるなら2割加算をするように注意することが必要ですね。
相続税・贈与税の詳細や具体的な内容につきましては、最寄りの税務署や税理士にご確認ください。
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