【2013年 第3回 今月の数字3:3ヶ月以内に熟慮しなくっちゃ!?】
相続に関する数字エトセトラ
平川 すみこ ⇒プロフィール
このコラムでは、相続と関して知っておきたい話題を毎月の数字に絡めてお伝えしていきます。
3ヶ月以内にやらなければいけない手続き
3ヶ月以内にやらなければいけない手続きに、「相続放棄」と「限定承認」があります。相続が開始したら、相続人になる人は、相続を単純承認するか、限定承認するか、あるいは放棄するかを選択することができるのですが、相続放棄と限定承認をする場合は、「相続開始を知ったときから3ヶ月以内」に手続きをする必要があります。
3ヶ月以内にしっかり考えて決めましょう!ということで、この期間を「熟慮期間」と呼ぶのですが、何もせずに3ヶ月経過すると、単純に承認したということになるので注意が必要です。
■相続放棄ってどういうこと?
遺言がない場合などは、遺産をどう分けるか相続人全員で話し合い(分割協議)をすることになりますが、その際に、財産は一切いらないからと、自分の分割割合をゼロにするということがあります。これは事実上「相続放棄」してはいますが、正式な「相続放棄」とは違います。
正式に「相続放棄」をするということは、相続人としての地位・権利を放棄することです。そのため、相続放棄をすると最初から相続人ではなかったということになるのです。
相続人ではないということは、相続分もありませんから、分割協議に加わることもできませんし、先月のコラムで取り上げた「遺留分」もないということです。
■なぜ相続放棄をするの?
遺産の中には、亡くなった方の借金(マイナスの財産とも言われます)も含まれますので、相続人であれば、その借金を引き継がなければいけなくなります。現預金や不動産のような資産(プラスの財産とも言われます)がたくさんあれば、そこから返済することもできますが、プラスの財産はないのに、マイナスの財産だけを背負ってしまうということも!
先述の、事実上の「相続放棄」では、遺産は一切もらわないのですが、だからといって、借金の返済義務を逃れられるわけではありません。お金を貸している人(債権者と言います)から「あなたは相続人なんだから、あなたがお金を返して!」と請求されても文句は言えないのです。
でも、相続人にならなければ、借金の返済義務は生じませんよね。このように亡くなった方が多額の借金を残していたというような場合に、相続放棄を選択する人が多いようです。
■相続放棄は3ヶ月以内に!
相続人にならないという正式な「相続放棄」は、家庭裁判所に申述をして受理されるという手続きをする必要があり、その期間には「3ヶ月以内」という制限があります。
詳しくは2011年6月のコラム「相続放棄はいつまでにやればいいの?」
https://www.my-adviser.jp/column/detail.php?id=426
にも記述しておりますので、ご参照いただければと思いますが、注意すべきは、この期間を過ぎてしまうと、「単純承認」したこととなり、以降、相続放棄ができなくなってしまうことです。
最近の家庭裁判所は、3ヶ月を過ぎていても、明らかな相続財産の処分行為がなければ、弾力的な運用により相続放棄の受理を認める傾向にあるようですが、やはり3ヶ月以内に申述するにこしたことはありませんよね。
そのためには、相続が開始したら、借金のようなマイナスの財産がないかどうかの調査が重要になってきます。マイナスの財産がないと思って、プラスの相続財産について処分行為(名義変更や売却)をしたというような場合は、それで「単純承認」したものとみなされ、その後借金の存在を知ったとしても相続放棄をすることはできなくなってしまうからです。
■限定承認も3ヶ月以内に!
「相続放棄」をすると初めから相続人ではなかったことになるということは先述しましたが、それはもちろん相続人としてプラスの財産も一切相続できないことを意味します。
そうすると、プラスの財産に先祖代々の家宝(!)があるような場合、相続人になるはずだった全員が相続放棄をしてしまって誰も相続する者がいなくなると困る、ということもあるでしょう。
そのような場合、プラスの財産を越えるマイナスの財産分のついては免除してもらえる「限定承認」を選択することもできます。
「限定承認」する場合は、やはり相続開始を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に申述をする必要がありますが、「相続放棄」は自分だけが単独で放棄するという選択をして申述ができるのに対し、「限定承認」は相続人が複数いる場合は、全員で申述しなければいけません。
「限定承認」は「相続放棄」に比べると、手続き等も煩雑なためか、選択する人もあまり多くないようです。司法統計年報によると、平成23年の「相続放棄」の年間申述受理件数が約16万件だったのに対し、「限定承認」は約900件だったそうです。
ひとり暮らしの高齢者も増える中、亡くなった方に借金などのマイナスの財産があるかどうかを把握することが難しくなってきているといえます。遺族が知らずにマイナスの財産を相続して大きな負担を背負い込むことがないように、きちんと把握して、必要に応じて期間内に相続放棄等の手続きができるように、と亡くなる方にも考えておいていただきたいもの。
その際に、活用できるのが「エンディングノート」です。生きている間に、借金や債務があることを直接伝えられないというような場合でも、「エンディングノート」に書いておくことで、マイナスの財産があることを把握してもらいやすくなるでしょう。
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