【2013年 第9回 今月の数字9:争いの根源は民法の条文にあり!?】
相続に関する数字エトセトラ
平川 すみこ ⇒プロフィール
このコラムでは、相続に関して知っておきたい話題を毎月の数字に絡めてお伝えしていきます。
9月の数字は「9」。相続における法定相続人や相続分については民法に規定がおかれています。現行の民法の規定が遺産分割の際に相続人たちが争う根源となっている~という意見もあり、最近では規定の一部が憲法に違反するという最高裁判決もでましたが、民法ではどのように規定されているのでしょうか。
ある人が死亡した場合に、その人の所有していた財産は誰が相続する(取得する)のか。相続の法律的なことは民法に定められています。民法887条、889条、890条では、誰に相続によって財産を取得する権利があるのか、そして民法900条には相続分が規定されています。
■民法900条では相続分はどのように規定されているか
では、民法900条をみてみましょう。
昭和22年5月3日より新民法の適用により家督相続から均等相続となり、その後、法定相続分が改正されて昭和56年1月1日以後の相続より現行の規定となっています。
均等相続とは、第900条4項にあるように「子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする」ということです。
例えば、亡くなった人に相続人となる子が3人いたら、3人の法定相続分は均等にした3分の1ずつです。亡くなった方に配偶者もいると、同条1項より配偶者が2分の1で、残りの2分の1を3人の子が3分の1ずつなので、子の相続分は6分の1ずつとなります。
このように、民法では同じ子どもなら年長か男子か、家を継ぐのかといったことは一切問わずに相続分は均等と規定されています。
では、実際に均等に分割しないといけないのでしょうか? 2010年2月のコラム「均等に分割しなきゃいけないの?」にも記述していますので、ご参照下さい。
■均等相続が争族のもとになることも
民法で相続分が規定されていても、遺言で分割を指定したり、相続人全員の合意のもとで、法定相続分と異なる分割をすることは可能です。
とはいえ、遺言がなくどのように分割するかを相続人同士で決めようとすると、主張されるのは民法で規定されている法定相続分です。「法律で均等となっているんだから均等に分割しよう」「自分にも法定相続分は相続する権利がある」。
一方、「相続分じゃ少なすぎる」「均等に分割するなんて納得できない」と均等相続に不満を主張することもあるでしょう。
遺産分割でもめてしまって、裁判所の調停や審判にまでいくと、最終的には法定相続分での分割になりやすいそうです。民法が定める法定相続分は、遺言で指定がない場合にどのような割合で分割すればよいかの目安を示したものだといえます。
しかし、民法が均等相続を定めていることが、争族のもとになっていることが多いのも否めないでしょう。
■子どもでも均等ではない規定がある!?
均等相続を掲げている民法900条4項ですが、但し書きにはこうあります。
ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1(中略)とする。
図の例でみると、子Xは非嫡出子(婚外子)なので、相続分は嫡出子である子A、子Bの2分の1となります。例えば遺産1億円を法定相続分で分けると、子A、子Bがそれぞれ4000万円に対し、子Xは2000万円だということです。
この民法の規定は、亡くなった人と同じ血を分けた子でありながら相続分に差異があるのは、法の下の平等を定めた憲法に反する、として長年裁判で争われてきました。
そしてついに、平成25年9月4日の最高裁大法廷において、「合憲」とされていた平成7年の判例が見直され、「婚外子相続差別は違憲」であるという判断が示されました。これにより、民法900条4項但し書きも改正されていくことになるでしょう。
■円満相続には民法は不要!?
違憲判断、法改正の是非はさておき。今まで、婚外子相続差別について争われてきたのは、民法にしたがって法定相続分どおりに分けようとしたからではないでしょうか。
先ほどの例では、子Aと子Bが子Xの事情や心情を思いやり、同じ子として3分の1ずつ均等に分割しよう、と全員合意の上で決めることができます。もしくは子Xの相続分を子Aや子Bよりも多くするように決めることもできるのです。
民法の規定は目安なのですから、当然の権利としてふりかざしたりとらわれたりせず、相続人同士でお互いのことを思いやり譲り合う心をもって円満に分割することが、相続の望ましい形だといえるでしょう。
なお、遺言では法定相続分とは異なる分割を指定することができますが、法定相続分どおりに分けてくれればいいから遺言するまでもないと考える方も多くいらっしゃいます。その場合でも、法定相続分どおりに分けるように遺言しておくことが、相続争いを防ぐことにつながります。
ぜひ遺言しておくようにしましょう。
具体的な相続における財産分割や遺言に関することは、弁護士等にご確認・ご相談ください。
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