【 2010年 第3回 】お勤め先で確定拠出年金が導入されたら
長谷 剛史⇒プロフィール
企業が退職金を約束し従業員が退職金の心配をせず仕事に専念することができた時代は過ぎ去りました。
厳しい国際競争を勝ち抜くために退職金の負担は負いたくないと考えている企業が増加しています。
こうした背景から、企業の規模を問わず導入が広がっているのが確定拠出年金という退職金制度です。
まずは、仕組みとポイントを見てみましょう。
運用は加入者自身が判断して決めます
将来の年金受け取り額は運用実績によって個人ごとに異なります。
加入者ごとに口座管理
いつの時点でも各加入者の資産額がいくらあるかがわかります。
持ち運びができる制度
職業が変わっても、その時点での資産を転職先で継続して運用できます。
税金のメリットがあります
掛金や運用益に税金はかからないですし、年金を受け取るときは公的年金等控除などの優遇措置を受けることができます。
受け取りは60歳以降
60歳以降に年金もしくは一時金で受け取ることができます。
原則、60歳まで引き出すことはできません。
次に、確定給付の退職金制度との違いを簡単に図式化してみます。掛金は企業が拠出します。
・ 確定給付年金
給付(約束)=掛金(変動)+運用(想定⇒変動)
運用が想定以下になると(掛金)が増加し、運用が想定以上になると(掛金)が減少します。⇒ 責任は全て≪企業≫が負います
・ 確定拠出年金
掛金(約束)+運用(想定⇒変動)=給付(変動)
運用が想定以下になると(給付)が減少し、運用が想定以上になると(給付)が増加します。⇒ 責任は全て≪個人≫が負います。
ある企業の例をご紹介すると、今までと同じ退職金を受け取るためには確定拠出年金を2.5%で運用する必要があります。
実際の利回り<2.5% だと今までの退職金を下回る退職金になってしまいます。
逆に、実際の利回り>2.5%だと、今までの退職金を上回る退職金になります。
確定拠出年金では、多くの退職金を受け取るのか?少ない退職金しか受け取れないのかは従業員の問題になります。
つまり、確定拠出年金がお勤め先で導入されれば、好む好まざるとに関わらず資産運用の知識が必要になります。
先程の例の運用利回り2.5%を確保するには預金だけでは難しいですよね。
つまり、確定拠出年金を最大限活用するためには、仕組みを理解し目標を定め積極的に運用を行うことが大切です。
運用の仕組みは次の4点ですが、資産運用で大事なポイントが全て備わっています。
1、60歳迄引き出せない ⇒ 長期投資
2、毎月拠出する ⇒ ドルコスト平均法
3、複数の運用商品から選択できる ⇒ 分散投資
4、運用益は非課税 ⇒ 課税の繰り延べ
仮に、30歳から60歳まで確定拠出年金に加入した場合(拠出額上限毎月51,000円)の運用利回りの差による受け取る退職金の違いを見てみます。
運用利回り1% 受け取る退職金 2,142万円
運用利回り3% 受け取る退職金 2,979万円
運用利回り5% 受け取る退職金 4,262万円
運用利回り1%と5%を比較すると受け取る退職金の差額は約倍になりますので、将来計画に大きな影響を与えることは確実です。
☆ 今回のポイント ☆
1、確定拠出年金がお勤め先で導入されたら、退職金の額は従業員の心構えで増加したり減少したりします。
つまり、自己責任ですので他人任せにすることはできません。
2、確定拠出年金を最大限活用するためには、仕組みを理解し積極的に資産運用を行うことが大切ですので、これからの時代は資産運用の知識・勉強が必須になります。
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