マイアドバイザー® 勝田謙一 (カツタ ケンイチ)さん によるスポットコラムです。
一昨年来から繰り返されるコロナ感染症の拡大と鎮静。皆様の周りでも、感染して、加入している医療保険で給付金を請求された方がいると思います。その時代のニードに合わせ給付内容の進化を続けてきた医療保険。自分がコロナ感染症になったときの給付金を請求する際の条件の変更点や、保険業界の現状と今後加入する際の心得について、お話していきたいと思います。
勝田謙一⇒プロフィール
医療(入院)保険・自宅療養拡充の変遷
医療保険は、古くは日本の保険会社では入院特約として死亡保障にセットでしか加入できず、1970年代当初は外資系保険会社のみの取扱でした。1995年保険業法の抜本改正で、2001年第3分野完全自由化を受け、国内全生保で医療保険単体販売が解禁されました。
近年、医療(入院)保険は、入院日数の短期化を踏まえ、従来の「入院日数×1日当たりの給付金」という形から、一律金でまとまった額の給付金を受け取れる商品が開発されてきました。また、入院前後の通院、在宅での療養、重篤な病気になったときの一時金、働けなくなったときの給付、さらには、コロナ禍でのニードが高まった感染症になったとき保障する商品が販売されるようになりました。【図1】【図2】
みなし入院って?現在の変更点とは・・・
2020年4月金融庁「新型コロナウイルス感染症に関する保険約款の適用等について」により、保険契約者等保護の観点から、前例にとらわれることなく、柔軟な保険約款の解釈・適用や商品上の必要な措置を検討するよう、保険会社各社に要請されました。
病床逼迫等により自宅等や宿泊施設で療養する場合でも「みなし入院」として「入院しなくてもコロナ給付金がもらえる」ようになりました。その際、病院が記入する入院証明書に変えて、保健所が発行する療養証明書やHER-SYS画面コピー等、手続書類の簡略化もあり、手続き件数が増え、処理が追い付かず迅速な給付ができない事態も起こりました。
想定外の支払増の事態を鑑み、金融庁は9月1日に入院給付金の取扱い等に係る要請を行い、みなし入院基準を、重症リスクの高い人に限定し、それ以外の人は自宅療養の場合は給付対象外に変更されました。(図3参照)
【図3】
コロナ保険販売過熱と給付拡大の誤算
医療保険は、インターネット、通販等、非対面かつ簡単告知で加入できる商品も増え、感染急拡大に伴い、若年層の間でも関心が高まりました。生保各社(少額短期保険会社含む)は、呼応するようにコロナ専用保険や、特約給付を充実させた商品を相次ぎ発売してきましたが、感染拡大による給付金請求が生保全体で、2020年6月5.5億円、2021年6月53.1億円、2022年6月540.3億円、8月952億円、9月1,672億円と、2020年3月から給付累計で5,919億円に達しました(うちみなし入院は約9割)。
創業まもない少額短期保険会社では、コロナ給付を手厚くした商品を低廉な保険料で発売し加入が増えましたが、再三の保険料の値上げ、給付金減額を行ったにもかかわらず、販売停止となった商品もありました。
金融庁要請による柔軟な保険約款の解釈・適用した結果、コロナ感染症蔓延を受け、入院一時金支払商品を拡充した医療保険の加入者増以上に給付金支払増が収益悪化に拍車をかけたことは否めないでしょう。
今後、医療保険加入する際に留意すること
これまで死亡保険については天災等で死者が増えたときは支払わない旨と明記がありますが、経営破綻等以外では保険金削減されたことはありません。医療保険給付については、今回、みなし入院として、感染拡大防止・契約者保護の観点から特例的解釈により給付増大となりましたが、これまで長年販売されてきた医療保険は、給付増になっても販売停止となっていない商品がほとんどです。
給付を受ける方が増えるということはそれだけ医療保険の加入必要性へのニードが高まるということになりますが、約款には、給付対象を変更する旨はわかりづらい文言となっており、収益に見合わない商品は加入者増が見込まれても突然の契約内容変更、販売停止になることが明らかになりました。
医療保険は本来、公的医療保険では給付されない部分を補完するために加入するものですが、「加入したときと給付されるときの契約内容が変わる」今後、発売される商品もそうなるかもしれません。そうならないために下記留意点を踏まえ、定期的に契約内容の確認は必要ですね。
【留意点】
- 新発売商品で、保険金給付金支払が多くなった商品は、今後加入出来なくなる可能性あり
- 契約に際し、これまで以上に約款の免責事項を熟読する(わからない場合は、保険会社に確認する)
- みなし入院も、入院歴となり、見直し、追加加入の際には契約延期等、条件付き契約となるケースも
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