発達障がい児を持つ会社員のパパママのための知識 ~発達障がいと障害年金②~【2013年 第11回】

【2013年 第11回 発達障がい児を持つ会社員のパパママのための知識 ~発達障がいと障害年金②~ 】
発達障がいの子をもつ家庭のためのファイナンシャル・プランニング

平野 厚雄(ヒラノ アツオ)⇒ プロフィール

このコラム連載は、ファイナンシャルプランナーとして、社会保険労務士として、発達障がいを持つ子の父親として、私が何を感じ何をしてきたのか?そして、発達障がいを持つ子の親が知っておくべきことは何か?という視点で執筆していきたいと思います。

 

3つのハードル

前号では、発達障がいでも障害年金をもらえるチャンスがある、ということを書きましたが、障害年金をもらうには、クリアしなければならない3つのハードルがあります。今号ではその3つのハードルをご紹介します。
1、初診日要件
障害年金をもらうためには、原則として初診日に何らかの年金制度に加入していなければなりません。

初診日とは、その障害の原因になった傷病について、初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日をいいます。健康診断によって疾病が発見され療養が指示された場合は健康診断日、関連疾病があるときはその疾病について診療を受けた日が初診日となります。障害年金を請求する上で初診日を特定することは非常に重要です。なぜなら、その初診日に何の年金制度に加入していたのか?ということで支払われる障害年金の種類が決まるからです。

そして、障害年金を請求するにあたって最初にすべきことは「初診日の証明」です。
証明の仕方は、診療の経緯によって異なります。最初からずっと同じ病院にかかっている場合は、現在の病院に障害年金請求用の診断書で証明してもらいます。現在の病院と初診の病院が異なる場合は「受診業況等証明書」を初診の病院に作成してもらいます。

しかし、初診日から障害年金を請求するまでに時間が経過しているときなどは、病院が廃業している場合もあります。また医師法において、診療録(カルテ)の保存期間は最終通院日から5年と決められているので「受診状況等証明書」を取得できないケースも出てきます。そのような場合は「受診状況等証明書を添付できない理由書」を作成して、次の病院で「受診業況等証明書」を作成してもらいます。

 

なお、発達障がいの初診日については、「発達障害は、通常低年齢で発症する疾患であるが、知的障害を伴わない者が発達障害の症状により、初めて受診した日が20歳以降であった場合は、当該受信日を初診日とする」と取り扱われることになっていますので、個々の諸事情によって注意が必要です。

2、保険料納付要件
障害年金も社会保険制度の1つなので、支給事由が起こる前に保険料が支払われていることが必要になります。
原則として「初診日の前日の時点で、初診日の月の前々月までに保険料の滞納が1/3を超えていないこと」という条件をクリアしなくてはなりません。
しかし、特例としてこの条件をクリアできない場合は、初診日時点で65歳未満であれば初診日の月の前々月から直近の1年間に保険料の滞納がなければクリアすることができます。例えば初診日が4月12日の場合、初診日の月の前々月が2月になりますので、前年の3月から今年の2月まで保険料が全て支払われていなければなりません。

 

そして、ここで重要になってくるのが、「保険料免除」です。

原則要件と特例要件、どちらもポイントになるのは保険料の滞納期間の有無です。どちらも滞納期間が一定期間以上あると障害年金はもらえないということになります。勘の鋭い方でしたらお気づきでしょうが、保険料免除期間は、この保険料納付要件にカウントされるということです。つまり、きちんと保険料免除申請をしておくことが、とても重要であるということです。

 

3、障害等級該当要件
障害年金が支給されるためには、障害によってどのような状態にあるかが重要です。
どの時点で障害の状態を判断するかというと、原則として初診日から1年6ヵ月経過した日です。それまでに治った場合は、いずれか早い方の日となります。障害認定日の障害の状態によって障害の等級が決定されます。障害等級は厚生年金の場合が1級から3級まで、国民年金は1級と2級があります(症状が重い方が1級になります)。

 

障害等級は、診断書や申立書等の書類を基に、障害によって日常生活や労働にどのような支障があるかを考慮して日本年金機構が決定します。診断書をお医者さんに依頼するときに、日常生活で困っていることをきちんとお伝えすることが非常に重要になります。また診断書に記載されたことを申立書で補足することもとても大切です。

参考までに障害等級とその状態を簡単にまとめると以下の図の通りになります。

 

 

 

 

 

 

障害年金は初診日に加入していた制度から支給されるということですが、国民年金は20歳になってから加入することになります。

では初診日が20歳前で、どの制度にも加入していなかった場合はどうなるのでしょうか?その場合でも、20歳前に初診日があることを証明できれば20歳になったときや、その後に障害等級に該当するようになれば国民年金から障害基礎年金が支給されます。

 

障害年金を請求できるタイミングは障害認定日が20歳前のときは20歳になったときに、障害認定日が20歳を超えている場合は障害認定日です。障害認定日とは、基本的には初診日から1年6ヵ月を経過した日となります。

20歳前の障害で障害年金を請求するためには、日常生活にどのような支障があるか?実際にどのように通学していたのか?をきちんと記録に残すようにして下さい。また日頃からお世話になっているお医者さんがいないようでしたら、20歳時点で診断書を作成してもらえそうな病院に1年程前から受診しておくことをお勧めします。

 

障害年金の最終回である次号では、ある事例をご紹介したいと思います。

 

<Fight4uの紹介>

 

「Fight4u」は、自閉症等の発達障がい児・者のお父さん等のランナーもしくはランナーのサポーターの方を中心に組織されたグループ「Run4u」の兄弟グループです。「Fight4u」では、格闘技を通じ社会に対して「発達障がい」についてのメッセージを発信しています。「Fight4u」のコンセプトは以下の5つです。

 

(1)格闘技を通じて健康を維持・向上しましょう!

(2)発達障がいに関する理解と支援を求めるメッセージ付きのTシャツや、パンツ、スパッツ、胴衣にロゴをつけて、社会にメッセージを発信しましょう!

(3)障がいのあるなしに拘わらず、誰もが活き活きと輝き、豊かに暮らせる社会「インクルージョン社会」の実現をめざしましょう!

(4)子どもを守るため、親御さんも強くなりましょう!

(5)格闘技を通じて、親子関係を深めましょう!

 

この「Fight4u」は格闘家だけが対象ではありません。格闘技は見る専門の人、昔格闘技をやっていた人、子どもに格闘技をやらせたい人、格闘技を通じて健康になりたい人、格闘技に興味がある人等、何らかのかたちで格闘技に関係している人、興味を持っている人であれば歓迎です。この「Fight4u」の活動にご興味がある方は、以下のHPよりお問い合わせください。

「FP社会保険労務士事務所 柔コンサルティング http://www.yawara-bjj.jp/

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