【2013年 第12回 発達障がい児を持つ会社員のパパママのための知識 ~発達障がいと障害年金③~】
発達障がいの子をもつ家庭のためのファイナンシャル・プランニング
平野 厚雄(ヒラノ アツオ)⇒ プロフィール
このコラム連載は、ファイナンシャルプランナーとして、社会保険労務士として、発達障がいを持つ子の父親として、私が何を感じ何をしてきたのか?そして、発達障がいを持つ子の親が知っておくべきことは何か?という視点で執筆していきたいと思います。
起きてしまった事例
前号では、障害年金をもらうためのクリアしなければならない3つのハードルをご紹介いたしました。今月号は、その障害年金の知識が無かったために起きてしまった事例について取り上げたいと思います。
●保険料滞納のリスク
20歳から自営業をはじめて31歳で障害状態になったAさんとBさんがいました。Aさんは、所得が少ないということで、20歳からきちんと保険料免除の申請をして、承認をえていました。しかし、BさんはAさんと同様に所得は少なかったのですが、面倒で保険料免除の申請をすることなく滞納していました。
この場合どういう結末になるかというと、Aさんは障害年金がもらえて、Bさんは障害年金をもらえません。この差は何かというと30歳までの保険料納付記録が「保険料免除期間」なのか「保険料未納期間」なのか、ということです。実態は、どちらも保険料を払っていません。しかし、きちんと申請をしたのか?しなかったのか?ということで差がでます。
Aさんの保険料納付記録は、保険料免除期間(120月)ですので、原則要件「初診日の前日の時点で、初診日の月の前々月までに保険料の滞納が1/3を超えていないこと」を満たします(保険料滞納期間はありません)。しかし、Bさんの保険料納付記録は、保険料滞納期間(120月)ですので、それまでの被保険者期間の1/3超が滞納期間ですのでアウトです。
その後、もしAさんが障害認定1級となれば、1級障害基礎年金973,100円(平成25年10月現在)を非課税でもらえます。それが、10年間であれば9,731,000円、20年間あれば1,946,200円、30年間であれば29,193,000円です。
いかかでしょうか?その後のキャッシュフローでこれだけの差になってしまうのです。いかに保険料免除申請しておくことが大切かということがお分かりいただけると思います。
したがって、もし所得の状況で国民年金保険料を払うことが困難な場合は、万が一の時に備えて、滞納するのではなく、きちんと免除の申請をしておくことが大切です。(※説明を分かりやすくするために物価変動や保険料納付の時効は考慮していません)
●初診日の重要性
次に障害年金を受給できる場合の初診日の重要性について、ある男性(Cさん)の例を紹介したいと思います。
30歳男性独身Cさんは、大学を成績優秀で卒業後、都内の上場大手食品メーカーに正社員として就職しました。しかし、就職後、職場の同僚や上司との関係がうまく築けず、いじめや差別にあうようになってしまい、上司からも仕事に営業ノルマ達成を厳しく責められる毎日でした。体調を崩してしまい、精神的にもダメージをうけて仕事を続けられなくなっていまいました。そこで、退職を決意します。退職ししばらくは自宅でゆっくりし療養したいと考えています。そして、今まで仕事に追われていたので、体調がおかしくなってから1回も病院に行っていません。ようやく病院にも行こうと思っています。
ここでポイントになることがあります。この病院に行く日がいつになるのか?ということです。
今回、Cさんの場合、この病院に行く日が初診日です。皆さんは、会社を辞める前に病院に行った方が良いと思いますか?それとも辞めた後に行った方が良いと思いますか?
もう、お分かりですね。この場合は、会社を辞める前に病院に行かなくてはいけません。なぜなら、この初診日によって障害年金として何がもらえるのか(障害基礎年金のみになるのか?障害厚生年金ももらえるのか?)ということが決定してしまうからです。
正社員として勤めるということは、厚生年金保険の被保険者です。そして、退職後は国民年金の被保険者ということになります。障害年金は、初診日に加入している制度によって障害厚生年金か障害基礎年金かきまるということでした。つまり、会社を辞める前(厚生年金の被保険者期間中)に病院に行き、初診日を確保しておくことが重要なのです。
例えば、Aさんが退職前に病院に行き退職後に障害等級3級と認定されれば、初診日が在職中にあるので3級の障害厚生年金がもらえますが、もし、退職後に病院に行った場合、障害基礎年金の対象になります。しかし障害基礎年金は、障害等級3級は対象外になりますのでもらうことができません。障害等級2級の場合だったら、障害厚生年金と障害基礎年金のみになるのか?ということになります。
いかかでしょうか?このように、初診日が退職日前になるのか、退職後になるのか、ということがその後の経済的状況に大きな差を生んでしまいます。これは極端な話、一日違いでも同じです。
現在、障害年金がTVやニュースで取り上げられることが多くなりました。しかし、障害年金この初診日についての重要性も伝えているケースはほとんどありません。したがって、お客様等が同じ状況で会社の退職を考えているようで、まだその体調悪化について病院に行っていないようでしたら、今後のことを考えて、病院に行くことをおすすめしてください。
以上、3回にわたり障害年金についてとりあげてきましたが、正しい知識を持っていることで損することは避けられますので、日々情報収集することが大切です。
「Fight4u」は、自閉症等の発達障がい児・者のお父さん等のランナーもしくはランナーのサポーターの方を中心に組織されたグループ「Run4u」の兄弟グループです。「Fight4u」では、格闘技を通じ社会に対して「発達障がい」についてのメッセージを発信しています。「Fight4u」のコンセプトは以下の5つです。
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