【2016年 第2回 退職後の医療保険の賢い選び方】退職を考えたときに読むコラム
菅野 美和子(スガノ ミワコ)⇒ プロフィール
会社に勤務しているときは、健康保険のことなど、ほとんど考えることはないでしょう。
退職後、まず必要に迫られるのは「保険証」です。
保険証のない生活は不安ですので、退職後に加入する医療保険を決めなければなりません。
退職後の医療保険は、ちょっと知識を持っておくと賢く選択できますよ。
退職後の医療保険 選択肢は3つ
退職後の医療保険には、次の3つがあります
① これまでの健康保険を継続する。(任意継続被保険者と言います)
② 国民健康保険に加入する。
③ 健康保険の扶養家族(被扶養者)になる。
退職後の収入は雇用保険からの失業給付だけになる人がほとんどです。
そうなると家計のやりくりも大変です。少しでも支出は減らしたいですね。
どの医療保険に加入しても、病院にかかったときの医療費の自己負担は原則3割ですし、入院などで高額な医療費がかかったときの自己負担も同じです。
医療保険を選択するにあたってのポイントは「保険料」です。
健康保険の扶養家族になる
まず、健康保険の扶養家族になれるかどうか、調べてみましょう。
会社の健康保険に加入している家族がいれば、その扶養家族になると保険料はゼロです。
扶養家族になるには、年収が130万円未満で、扶養する人(健康保険に加入している人)の年収の半分未満という基準があります。
雇用保険からの失業給付を受け取ると、その失業給付も収入とみなされます。
雇用保険の失業給付(基本手当)を受ける場合は、基本手当1日分が3,611円以下(障害のある人は別)であれば扶養家族として認められますが、3,612円以上であれば失業給付が終わるまでは扶養家族になれません。
雇用保険からの給付金ばかりではなく、年金や健康保険の傷病手当金等も収入に入ります。
収入基準を満たし、扶養家族になれると、保険料を節約できます。
これまでの健康保険を継続する
これまでの健康保険を継続できる人は、2ヵ月以上健康保険に加入している人です。
退職後20日以内に手続きをしなければなりません。保険料は現在の保険料の2倍になります。
退職後は会社負担分がなくなるので、全額自己負担しなければならないということですね。
ただし、保険料には上限があります。
協会けんぽの場合は28万円(標準報酬月額)を上限として保険料を計算します。
28万円に保険料率を掛けた額が自己負担の上限額です。保険料率は都道府県によって異なります。
つまり、現在の保険料の2倍、あるいは28万円で計算した保険料のうち、低い方が任意継続の保険料です。
健康保険組合に加入している人は、各組合で確認してください。
国民健康保険料に加入する
国民健康保険料は、住んでいる市区町村によって計算方法や料率が異なります。
国民健康保険料については会社で聞いてもわかりません。住民票のある役所の窓口でたずねてください。
国民健康保険は前年の所得で計算されます。
たとえば、28年の4月末に退職した場合であっても、27年分の所得で決定されます。
フルに働いていた1年分の所得が対象となりますので、当然保険料も高くなります。
ここで気を付けておきたいのは、退職理由です。
倒産や解雇などいわゆる「会社都合」で退職した場合、前年の給与所得を3割に割り引いて国民健康保険料を計算するという制度があります。
この制度に該当する人は、任意継続より、保険料が安くなるかもしれません。
退職理由の確認は、会社から受け取る離職票やハローワークが発行する雇用保険受給資格者証で行います。
退職理由が会社都合の場合はまず、離職票を持って国保の窓口で相談します。
そこで保険料を確認し、あらかじめ調べておいた任意継続の保険料と比較しましょう。
任意継続期間は2年間です。
その途中で国民健康保険に加入したい、健康保険の扶養者になりたいなどの理由ではやめることができません。
保険料を期日までに納付しないと、資格を失ってしまいますので、注意してください。
初年度は任意継続の保険料が安くても、2年目は国民健康保険料が安くなることもあります。
すぐに就職が決まれば、就職先の健康保険に加入できますので、少しでも負担が軽くなるように退職後の医療保険を選択してください。
最後に注意しておきたいこと。
退職前に、本人や扶養家族が高額療養費の対象となり、今後も療養が続くようであれば、保険料が高くても任意継続したほうがよい場合もあります。
健康保険組合に加入している人は、メリットの高い独自給付があれば、任意継続したほうが有利になる場合もあります。
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