【2016年 第3回 病気で退職するときに】退職を考えたときに読むコラム
菅野 美和子(スガノ ミワコ)⇒ プロフィール
健康が一番と言われますが、元気にやりたい仕事ができることは幸せなことですね。
人間関係も良好で、会社に不満もないのに、突然の病気で仕事を続けられなくなることは、誰にでも考えられます。
病気退職には、通常の退職以上にさまざまな不安が生じます。
少しでも不安をなくし生活できるように、知っておきたいことがあります。
退職後も健康保険の給付金はもらえる?
健康保険には傷病手当金という休業保障制度があり、病気やケガ(業務上の病気やケガは対象外)で働くことができず、会社から給料をもらえないときに給付金が支給されます。
傷病手当金は法改正で複雑な計算方法になりましたが、1ヵ月休業した場合は、目安として、自分の給与(総支給額)の3分の2程度と理解しておきましょう。
退職後も継続してこの給付金を受け取ることができますが、健康保険に継続して1年以上加入していることという条件があります。
ですから、勤続1年以上の人は、退職後も傷病手当金を受け取れると考えていいでしょう。
支給期間は支給開始日から1年6ヵ月です。
会社を辞めても、傷病手当金が支給されるので、急に収入がとだえることはありません。
給付金を受け取りながら療養できます。
雇用保険からの給付金はもらえる?
退職後は、ハローワークからの失業給付の権利も発生します。
一定の条件のもと、求職期間中に支給されるのが「基本手当」です。
ところが、基本手当は、働く能力がある人が仕事に就けない場合に支給される給付金です。
「働く能力」とは、特別の能力や資格のことではなく、仕事があれば今すぐに働ける状態を言います。健康であるとか、育児や介護で働けない状態ではないなどです。
病気療養中は働く能力がないとみなされます。
傷病手当金を受け取っている間は、失業給付は支給されません。
ただし、元気になれば就職活動ができます。働ける状態になったときに、基本手当を受け取れます。
通常は退職後1年経過すると基本手当はもらえませんが、あらかじめ受給期間を延長(最長4年まで)しておくことができます。
まずは、ハローワークで延長の手続きをしておきましょう。
健康保険から傷病手当金を受け取って病気治療に専念し、働けるようになったら、雇用保険から基本手当を受け取って仕事探しをすることができるということです。
退職後の健康保険や年金は?
傷病手当金を受け取っている場合は傷病手当金も収入となり、収入基準を超えると健康保険に入れません。
扶養家族になれない場合、医療保険は任意継続か国民健康保険を選択することになります。
高額な医療費がかかり、高額療養費が1年に4ヵ月以上支給されるときは、自己負担額が軽減されますので、任意継続を選ぶと有利になることがあります。
病気療養期間中であっても、20歳以上60歳未満の人は国民年金へ加入しなければなりませんが、国民年金の保険料を支払うのも大変ですね。
離職票など、退職を確認できる書類をもって、年金事務所や国民年金課に相談に行ってください。
病気療養等で生活が苦しいときは免除になる可能性があります。
手続きしないで放置しておくのは、NGです。
なぜなら、年金をもらえなくなったり、将来の年金額が少なくなったりすることがあるからです。
障害年金の手続きも検討
病気が重くなると、障害年金の申請も考えられます。
健康保険の傷病手当金は1年6ヵ月経過するともらえなくなるので、病気が長期化し働けないような状態が続くのであれば障害年金を検討しましょう。
がん患者さんの障害年金請求も増えてきました。
「がんで障害年金をもらえるの?」と思われる方もありますが、抗がん剤治療などのために働くことが困難なケースもあります。
障害年金を受け取るには、保険料納付や初診日などの条件を満たしていなければなりませが、障害年金という可能性もあたってみましょう。
うつ病などの精神的な疾患でも障害年金を請求できます。
病気のために働けない、あるいは働き方が制限される、日常生活に制限を受けるなどの状態になった場合は、障害年金の可能性がありますので、専門家への相談をおすすめします。
傷病手当金と障害年金を同時に受け取るようになっても、両方はもらえません。
両方の受給期間が重なったら、原則として傷病手当金はもらえません。
ただし、障害厚生年金より傷病手当金が多い場合は、その差額が傷病手当金として支給されると理解してください。
このような公的な制度を利用することにより、病気退職後の生活が少しでも安定すればと思います。
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