退職時に知っておきたい労働法【2016年 第4回】

【2016年 第4回 退職時に知っておきたい労働法】退職を考えたときに読むコラム

菅野 美和子(スガノ ミワコ)⇒ プロフィール

人生で何度か退職を考えるときがあると思います。
仕事が合わない、人間関係に不満がある、会社が倒産したなど不本意な退職もあるでしょうが、夢を実現するための退職もあります。
新しいスタートを切るために、退職をめぐる法律やルールを知っておくことも大切です。

 

退職届はいつまでに?

会社の就業規則を見たことはありますか?

会社の憲法とも言われる就業規則には必ず退職に関する規定があり、退職届は1ヵ月前までに出すなどのルールが定められています。まずは会社のルールを確認しましょう。

引き継ぎもきちんとして、お世話になった会社とトラブルは起こしたくないもの。
退職を決めたら、まず上司に伝えて、そのあとに正式な届を出すとスムーズにいくでしょう。

「人手不足を理由に退職させてくれないがどうすればよいか」という相談を受けることがあります。
しかし、退職の意思を伝えているのに、退職できないということはありません。
きちんと退職届を出し、意思表示をします。この場合は「退職願」ではなく「退職届」を出しましょう。

労働基準法には労働者からの退職の申し出について規定はありませんが、民法では申出から2週間で退職(労働契約の解除)できるとなっています。

ただし、2週間前に退職を伝えればよいということではなく、就業規則に従うのがベストです。
また、退職時の引継ぎを義務として就業規則に定めている会社もありますので、就業規則違反とならないように対応することも大切です。

なお、1年間などの契約期間を定めている場合は、更新時以外での退職は、契約の途中解約になります。
勝手な理由で退職すると損害賠償を請求される可能性もあります。
「やむをえない退職理由」を明確にして、トラブルが起きないように注意することも必要です。

退職時に有給休暇は買い取ってもらえる?

仕事が忙しく年次有給休暇を使えず、退職時に40日間そのまま残っているということもあります。
使えなかった有給休暇を買い取ってほしいという希望も出されます。

それでは、会社に残った有給休暇を買い取る義務はあるのでしょうか。

買い取る義務はありません。もともと有給休暇とは労働者が公休以外に自由に休みを取ることを目的にしていますので、休めなかった分を買い取るという本来の趣旨に反するルールは法律にはありません。

ただし、退職時に買い取ってはいけないという法律もないので、会社の判断しだいです。

有給休暇は在籍中に使用できる休暇ですので、退職後は消えてしまいます。
退職日までに使用しないと権利を失います。

有給休暇は労働者の権利です。会社は有給休暇を使わせないということはできません。
ただし、会社には「時季変更権」があります。
たとえば、社員全員が同じ日に休暇を申請すると業務に支障をきたすので、他の日に変更するように求めることができます。

有給休暇を全部取りたいのであれば、退職日に合わせて計画的に取得するしかありません。
有給休暇が残っているからといって、いったん受け付けられた退職日を変更してほしいというのは、好ましいことではないでしょう。

突然会社を辞めてほしいと言われたら?

解雇にはそれ相当の理由が必要です。
就業規則などに解雇事由を示すことが必要で、経営の悪化や著しい勤務成績の不良、無断欠勤し出社しないなどの合理的な理由がないと解雇が無効とされます。

合理的な理由もなく解雇することはできません。

また、解雇を行う場合は、30日前に予告を行う必要があります。
予告を行わず「明日からこなくてよい」などのように即時解雇する場合は、30日分の解雇予告手当を支払うことが必要です。

突然の解雇を告げられた場合は、理由を文書で求めるなどしておきましょう。

私たちが店で製品を購入するとき、その製品を確認して説明を受けて納得して購入します。これは売買契約です。
会社等で働くということは、労働契約を結ぶことです。
簡単に言えば、「労働者は決められた仕事をする。会社はその対価として賃金を支払う」という契約です。
ですから最初に仕事の内容や賃金を確認しておかねばなりません。

その契約を打ち切るのが退職です。

最初に確認した条件がだんだん合わなくなり退職することも人生の選択ですが、気持ちよく次のステップに踏み出せるように、基本的なルールは知っておきたいものです。

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