【2016年 第6回 定年前後の退職】退職を考えたときに読むコラム
菅野 美和子(スガノ ミワコ)⇒ プロフィール
定年が近づくと、いつまで働くかと迷うことが多いようです。
退職後の生活への不安、年金額への不安などにより、少しでも長く働くことを検討する一方、仕事から解放されたい気持ちなどもあり、いろいろな思いが交錯します。
退職後のお金に対する不安を少しでも解決できるように、ポイントをまとめてみます。
セカンドライフの生活費
生命保険文化センターが行った意識調査(平成28年度)によると、夫婦2人で老後生活を送る上で必要と考える最低日常生活費は22万円、ゆとりある老後生活を送るには34.9万円となっています。
退職後の生活費がどのくらい必要であるかは各家庭によって異なります。
子どもが独立しているか、住宅ローンが終了したかなどでも大きく異なります。
我が家の生活費を把握することが必要です。
退職とは、働いて得る収入がない生活へ入ることです。
退職後の生活費をカバーするのが、雇用保険の失業給付や公的年金などの、社会保障制度です。
これらの制度以外にも、退職後に負担する社会保険料や税金などについても知っておくと役に立ちます。
退職時期と雇用保険
60歳以降の退職では、退職時の年齢により雇用保険からの失業給付が異なりますので、注意が必要です。
雇用保険の失業給付は65歳をさかいにして異なります。
65歳前に退職すると失業給付である基本手当を最大150日分(自己都合や定年退職の場合)受け取ることができますが、65歳以降に退職すると基本手当の最大50日分を一時金(高年齢求職者給付金)として受け取ることとなります。
いずれにしても、失業給付を受けるには、働く意思があり、実際に求職活動するなどの条件を満たさなくてはなりません。
退職時期については、雇用保険からの失業給付だけを考えると、65歳以降の退職は不利になります。
最大で150日分受け取れるかもしれない給付金が50日分になってしまうからです。
しかし65歳以降も引き続き働けることができるのであれば、働き続けることにより給与が入り、家計にとってはプラスになります。
雇用保険の給付金だけで判断できません。
65歳以降で退職したとき、要件を満たせば50日分の給付金が受け取れるのですから、少しでも長く働いて、それまで給与収入を得て老後資金を確保するというのもよい方法ではないでしょうか。
定年退職と老齢厚生年金
老齢厚生年金の支給開始年齢までは働こうと考える人も多いです。
60歳代前半で支給開始年齢になると老齢厚生年金(報酬比例部分)を受取れますが、それだけでは生活費に不足するでしょう。
また、老齢厚生年金には給料が多くなると減額される仕組みがあります。
年金が減額されない範囲内で働きたいという人も多いのですが、年金が減額されない程度を条件にすれば、給料もそれなりに低くなります。
年金は支給停止されても、しっかり給料を得て老後資金を蓄えるというもの方法です。
60歳以降も引き続き厚生年金に加入すると、将来受け取れる老齢厚生年金額が増えます。
継続して働くことは、給料を得て老後資金を蓄えながら、同時に未来の年金額も増やすことができるということです。
年金支給開始年齢以後に退職すると、65歳前までは、雇用保険の基本手当と老齢厚生年金は両方受給できません。
ただし、65歳到達直前の退職など、退職時期によっては両方合わせて受け取れることもありますので、個別に確認してください。
退職後の支出
60歳になる前に退職すると、退職後は国民年金に加入しなければなりませんが、60歳以降は国民年金への加入義務はありません。
ただし、退職時に国民年金の第3号被保険者である配偶者がいる場合は、配偶者は60歳になるまで国民年金に加入しなければなりません。
平成28年度の国民年金保険料は16,260円ですので、退職後の生活においては負担感があるかもしれません。
退職後の生活がきびしければ免除申請もできますが、免除となると、将来の年金額が減ります。
国民年金保険料については、きちんと払えるようにやりくりできるといいですね。
退職後に負担が大きいと言われるのは住民税です。
住民税は後払いです。
たとえば3月末に退職した場合、その年の6月分からの住民税を自分で支払うようになりますが、税額は前年の1年間フルに働いているときの所得に対するものです。
退職後の1年間は現役時代と同じだけの住民税を支払うことになります。
毎月給料から控除されていた会社員時代は、住民税を支払っているという実感がなかったかもしれませんが、退職後は3ヵ月分をまとめて支払うことになるので、負担感が増します。
退職後に入ってくるお金、出ていくお金を理解して、退職後の生活に備えておきましょう。
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