【2015年 第3回】○○円の壁なんて関係ない!転勤族妻の仕事の選び方~後編
がんばる転勤族の妻たちが「お金」でもっと得するお話
松原 季恵
転勤族の妻は夫の転勤により仕事が変わることが少なくありません。 前編では○○円の壁の仕組みを理解することで、転勤族の妻が夫の転勤により仕事探しをされた場合の、年収の考え方が分かってきました。 ではこれらの壁を意識することが最も良い仕事の選び方なのでしょうか。 今回後編では○○円の壁に関わる社会保険制度のしくみについてお伝えします。この社会保険のしくみを知ることで、お仕事選びにきっと迷いがなくなるでしょう。
皆さん、お仕事を選ぶとき何を目的にしていますか。
お金を稼ぐこと、社会貢献、やりがい、社会とのつながり、家事の息抜き等様々にあると思いますが、「収入を得ること」は最も重要な目的のひとつではないでしょうか。
前編で○○円の壁の仕組みをみてきましたが、そこには社会保険制度が深く関わっていました。まずその社会保険とはどのような仕組みになっているか見ていきます。
社会保険は国民の生活を守り、安定を図るもの
130万円の壁を境に社会保険料の支払いが発生し、家庭の負担が増えます。
社会保険には、医療保険(健康保険)と年金保険、介護保険、労働保険があり、これらの保障を受けるために、私たち国民は主に収入の中から保険料を支払います。
<社会保険制度の概要イメージ>
会社員の妻が社会保険の壁を超えて支払う保険料は、家計から失ったのではなく将来の備えとして蓄えられていると言えます。
そして、社会保険は働き方によって保障の内容が変わります。例えば…
国民健康保険と健康保険は違う
130万円の壁を境に支払うものの一つに国民健康保険料がありました。
これがもし、健康保険の適用事業所に勤め、勤務時間と勤務日数の両方が通常の従業員のおおむね4分の3以上になれば、国民健康保険の被保険者から健康保険の被保険者になります。
国民健康保険と健康保険は違うものです。例えば、健康保険の被保険者には傷病手当金と出産手当金があります。これらは病気やケガあるいは出産で仕事を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に一定の金額が支給されます。
これは国民健康保険の被保険者にはなく、夫の健康保険の被扶養者にもありません。
国民年金と厚生年金は違う
130万円の壁を境に支払うものの一つに国民年金保険料もあります。
こちらも厚生年金保険の適用事業所に勤務し、勤務時間と勤務日数の両方が通常の従業員のおおむね4分の3以上になれば、厚生年金の被保険者になります。
国民年金と厚生年金も違うものです。厚生年金は国民年金の上乗せになるもので、厚生年金を払っていれば、将来国民年金と厚生年金の両方を受け取ることが出来ます(一定の支払い基準あり)。
確かに130万円未満に抑えていれば、保険料の支払いがなく年金を受け取ることができますが、厚生年金を受け取る人と比べて将来の備えは少なくなります。
こちらも国民年金のみを支払う被保険者や、夫の被扶養者にはありません。
このように保障が大きい健康保険と厚生年金ですが、その保険料は労使折半になっています。つまり会社が費用を一部負担してくれながら、万が一時の保障や亡くなるまでもらえる年金収入を増やすことができます。
130万円の壁はなくなる?
前編で年収が130万円以上で社会保険料の支払いが発生するとお伝えしましたが、2016年10月からこの壁の基準が変わります。
パート社員は給与年収が106万円を超えたところで社会保険料を支払う必要が出てきます。
先述したように、これまでパート社員は正社員の所定労働時間の4分の3以上で年収が130万円以上の場合に社会保険料を支払っていました。しかし、2016年10月からは、以下の条件を満たした場合は社会保険料、つまり健康保険料や厚生年金保険料を支払わなくてはなりません。
①週20時間以上の労働
②年収106万以上
③勤務期間1年以上見込み
④従業員501人以上の企業
今回の改定は一部の大企業に限定されていますが、今後はその対象はさらに広がってくるでしょう。このように、社会保険制度というのは時代と共に変わっていくものです。
大切なのは目的を持つこと、
○○円の壁はその目的を達成させる手段の一つ
お仕事を探す時に考える○○円の壁。給与年収を130万円に抑えることで、“使えるお金”を効率的に増やすことができました。一方、給与年収が増え勤務時間が一定を超えると、その分社会保険制度から守られる保障を増やすことができます。
また、社会保険制度は時代と共に変わります。今、お仕事の基準として考慮していた社会保険制度は、今後通用しないことも出てきます。
このことから言えることは、お仕事を選ぶ際に大切なことは、2つの目的を持つこと。
ひとつは、何のために仕事をするのか。もうひとつは、得た収入を何に使うのかです。
転勤族の妻は転居を繰り返すことから、短期的な仕事になることが多く、仕事における自分の価値を感じられにくくなる可能性があります。だからこそ、社会保険制度(壁)等に合わせた受け身の仕事選びではなく、仕事に明確な目的を持ち、より能動的な選び方が大切です。
そして転勤族の妻は転居により未来の予測が付けにくく、ライフプランを立てにくいです。年に1度は夫婦で話し合い、住宅購入や教育資金等、中長期のライフイベントを確認しましょう。収入を得る目的が明確になれば、お仕事選びも迷いがなくなります。
夫の転勤は転勤族の妻にとって、ライフプランや仕事の目的を考える絶好のチャンス。
○○円の壁はお仕事選びの一つの手段とし、目的を見つけることができれば、今後のお仕事選びがますます楽しくなるでしょう。
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