【2013年 第10回 知っておこう!歳の差夫婦の遺族年金のポイント その1】
歳の差カップルのライフプランニング
川崎 由華⇒プロフィール
歳の差夫婦でも、特に夫が年上の夫婦は、平均余命が大きく違ってくることから、妻が独り身になった時の生活を考えることもあるでしょう。
経済面の漠然とした不安を解消するべく、今回は遺族年金について、歳の差夫婦が知っておくべきポイントをお伝えします。
遺族年金
東京オリンピックの開催は7年後の2020年、リニア中央新幹線の品川―名古屋間の開通は14年後の2027年、一体自分たちはいくつになってどんな暮らしをしているのだろうと想像してみたり、毎日の生活の中でふと人生の残りの時間を考えるときというのは、少なからずありますよね。
歳の差のある夫婦は、歳の差があるからゆえに、共に過ごせる時間をお互いが意識し、一人遺った場合の生活を話し合うことがあるのではないでしょうか。
特に、年上の夫が生活の担い手である歳の差夫婦にとっては、遺された妻の経済面について気になることも多いでしょう。
一家の大黒柱である夫が亡くなった後の経済的な生活保障の柱になる公的制度は、遺族年金です。
遺族年金は、歳の差があることが受給できる年金額に影響することはありませんが、夫(妻)が亡くなったその時にどんな形で年金加入していたのか、経済的に支えられ遺された家族は誰で何歳であったのか、という2点がポイントになってきます。
亡くなった者が国民年金に加入中であれば遺族基礎年金のみ、厚生年金(共済年金)に加入中であれば遺族基礎年金と遺族厚生年金(遺族共済年金)の受給となり、遺族の年金加入状況は関係ありません。
遺族基礎年金は、妻と18歳までの子に限られ、子がいない妻や18歳までの子がいる夫には支給されないのです。
これらを踏まえ、いくつか事例を挙げて、紹介していきます。
~事例1~
会社員45歳の夫(厚生年金加入歴23年)が死亡。遺されたのは、33歳の専業主婦の妻Aさん(妊娠中)、3歳の子ども。
事例1のポイントは、亡くなった夫の厚生年金加入歴が23年(25年未満)であること。そして、妻が妊娠中であることです。
亡くなった時に夫は厚生年金の加入者であり、子どもがいることから、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方が、子どもが18歳になった年度末まで支給されます。
現在、妊娠中の妻ですが、父親が死亡した時に胎児だった子どもは、生まれてから遺族年金の対象になり、2人目として遺族基礎年金の支給額に加算されます。
また、厚生年金に加入した直後に死亡した時でも、25年加入したものとして計算して遺族厚生年金は計算されるという、遺族に手厚い制度になっています。
遺族厚生年金の年金額は、夫の老齢厚生年金の4分の3を、原則として生涯にわたって受け取ることができます。
よって、下図のように遺族年金を受給することができます。
~事例2~
昨年脱サラし、自営業者になった45歳の夫が不慮の事故で死亡。遺されたのは、33歳の専業主婦の妻Bさん。
事例2のポイントは、自営業者、つまり国民年金加入時に突然に亡くなったこと。そして子どもがいないことです。
長年、厚生年金加入者であったとしても、亡くなった時点の加入状況で遺族年金が決まるため、Bさんに遺族厚生年金は全く支給されません。
ただし、例えば会社員の時にがんと診断され、体調がおもわしくなく退職して国民年金加入者となり、がんが分かって5年以内に亡くなった場合など、厚生年金加入中に初診日があり、初診日から5年以内に亡くなった場合には遺族厚生年金の支給対象となります。
そのうえ、Bさんには子どもがいないために遺族基礎年金も支給されず、結局Bさんが受け取れる公的な遺族年金は一円もありません。
さらに言えば、たとえBさんが会社員(厚生年金加入者)であったとしても、遺族年金には関係しないので要注意です。
事例1と2は、夫妻の年齢が同じであり、亡くなる直前までの夫の収入が同額であったとしても、遺族年金によってある程度の生活を支えていけるAさんと、遺族年金が全く支給されないBさんとで、夫に万が一のことがあった時の公的年金収入による経済的状況は大きく違ってきます。
このように、受給できる年金額を知っておくことは、万が一の時の備えをしておくために必須であり、漠然とした不安を解消できることにも繋がります。
民間保険をいかに活用するのか、どのくらいの貯蓄をしておくのか、その他何か対策が取れるのかを夫婦で話し合っておきましょう。
次回は、再婚の年上の夫に万が一のことがあった事例などを基に、さらに年の差夫婦の遺族年金についてお伝えします。
*年金額は平成25年度9月の給付額を示しています。
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