【2008年 第9回 資産台帳を作成しましょう!】地域コラム 東海
松山 智彦(マツヤマ トモヒコ)⇒ プロフィール
相続問題といえば、遺族の間で遺産争奪をしたり、相続税を逃れるために脱税行為するなどドラマで見かける絵を想像されがちですが、実際には、もっと身近で誰にでも起きうる問題があります。
どのような問題かを今回は遺産に係る部分に絞ります。
遺産分割の手続
相続は死亡した時点で発生します。死亡した人を被相続人といいます。相続が発生するとその財産(つまり遺産)は、法定相続人の共有財産になります。法定相続人とは、民法上の相続人で通常は被相続人の配偶者と子供になります。相続が発生すると、まず財産の全体像を把握しなければなりません。また、法定相続人の確定をしなければなりません。その後、相続人が集まって遺産分割協議が行われます。この協議が纏まると、遺産分割協議書を作成します。署名、捺印と印鑑証明書を添付します。その後、遺産分割の実行を行うのですが、例えば、銀行から預金を引出す時、遺産分割協議書の原本と全員の印鑑証明書(3ヶ月以内の発行のもの)が求められるケースが多いです。
遺産分割の手続を文章にすると、簡単なように見えますが、遺族にとっては結構手間です。しかも、相続税の申告・納税期限は10ヶ月。
また、遺産を相続するかどうかの判断は3ヶ月という時間的な制約があります。また、遺産分割には遺族の思惑があって利害の一致がなかなか難しいものです。被相続人が希望する分割方法などについては、死んでからでは意見する事はできません。
遺言で遺族や遺産についての考えを残す
被相続人が意見するためには、遺言を残すという方法があります。遺言には、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言があります。遺言には、財産の内容、分割方法、遺言執行人の指定などの他、法的な効果はないけれど、遺族への思いや分割の考えを付言という形で残す事ができます。また、例えば介護をしてくれた子供の配偶者など法定相続人以外の人に財産を残すためには遺言が必要になります。遺産分割は、遺言があれば原則それに則って行われます。
資産台帳で遺言作成の準備を
遺言を作成するためには、今の財産の全てを把握しなければなりません。しかし、富裕層でない人であっても意外に全体を把握していないようです。また遺言に記載する不動産などは、住所地ではなく地番で記載するなど記載方法に決まりがあります。ネット系金融機関の場合には、通帳などがありませんので、遺族が把握する事が困難なケースも予想されます。そこでオススメしたいのは、資産台帳の作成です。
決まったレイアウトはありませんが、不動産、預金、株式、債券、投資信託、ゴルフ会員権など、またマイナス財産であるローンや保証債務などをできるだけ正確に記載し、一覧に纏めておきます。例えば不動産の場合には登記している内容がベストです。株式の場合には、購入日、取得価額、株数、預け入れしている証券会社の口座番号を記載するのが良いでしょう。これらを一覧にする事で、自分自身の財産の全体像の把握ができ、財産を分け方の検討が容易になります。それだけでなく、財産の残し方、継承の仕方で今のままで問題がある場合、例えば。遺族が2人、財産は土地しかなく、できれば分割したくない場合、生命保険に加入するなどをして財産分けがスムーズに行くように生前に手を打つことも可能です。
資産台帳は、遺族のためだけでなく、自分のこれまでの生き様を表している・・・。これは台帳を作られた人の意見です。
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