【2012年 第8回】 相続税:東海地方 の場合は? エリア別コラム – 地域:東海甲信越
松山 智彦(マツヤマ トモヒコ)⇒プロフィール
地域コラムの東海甲信越を担当します松山智彦です。私のコラムでは静岡県を中心にご案内をいたします。8月のテーマは「相続」。
今回は静岡県だけでなく、名古屋国税局が管轄する東海地方における“相続税“を取り上げてみます。
○ 統計データより
名古屋税務署管轄における平成22年発表の相続税に統計情報(国税庁発表)によると、課税対象となる被相続人の数は8,379人(全国では49,891人)、納付した相続人の数は20,040人(同122,705人)、納付税額は1,852億円(同1兆1753億円)になります。
これを相続財産額別(課税価格ベース)の被相続人の数を見てみますと、以下の表のようになります。
課税対象なので、1~2億円の価格帯がもっとも多いというのがこの表でわかります。1億円以下より1~2億円の価格帯が多いのは、課税対象でない被相続人の分が、申告の必要がないためデータに反映していないためと思われます。
因みに課税価格50億円の場合の相続税納税額は、25億円近くになります(実際の金額は財産の状況や特例適用の有無、相続人数等を考慮して計算します)。
相続税の納税申告の期限は相続の開始(被相続人の死亡)から10ヶ月以内とされています。これは相続人による協議が終わらなくても、申告が必要になりますので注意して下さい。
○ 遺言
遺言についてのデータも見てみましょう。2010年度の全国統計では、公正証書遺言作成が81,984件、自筆証書遺言検認申立が14,996件(日本公証人連合会資料)でした。
遺言を作成する事は、被相続人の財産処分に関する意思を相続人に伝えられ事が最大のメリットと言えます。また、相手(この場合は推定相続人)の意思確認も必要としないので、原則として自分の思いのまま作成する事ができます。但し、変な遺言を作ってしまうと余計なトラブルを発生させてしまうので、いくら自由だからといっても相続人の気持ちも充分考慮する必要があります。また、遺言はその形式を民法で定められています。その形式に則らないと遺言として認められない場合があります。
自筆証書遺言の場合は、本文、氏名、日付を自筆(代筆やワープロ等での作成は不可)し、押印しなければなりません。
遺言を作成しないまま相続が発生すると、相続人全員の協議によって処分方法を決定します。相続財産は相続開始時に相続人全員の共有財産になるため、処分には全員の同意が必要になります。しかも相続税が課税される場合には、10ヶ月以内に納付手続きが必要になります。
遺言を作成しておくと、相続人全員による協議をする必要がなくなります(もちろん、協議して遺言とは異なる処分を行う事も可能です)。スムーズな相続手続きのためにも、遺言を作成しておくことは残された人へのちょっとした配慮だと言えます。
○ 相続税の改正はまじか?
あえてひらがなで“まじか”と表現しました。「間近」と「マジか」を引っ掛けています。2012年の夏の国会では、消費税増税法案の審議がされていますが、税収を増やす方法として、ここ数年相続税に注目が集まっていました。昨年は、基礎控除額の変更と相続税率テーブルの変更等が議論され、法案成立寸前でした。基礎控除額の計算式は、「5000万円+1000万円×法定相続人の数」ですが、これを4割減の「3000万円+600万円×法定相続人の数」にするところだったのです。
被相続人ベースでの相続税の納税対象割合は、全国で2010年に死亡した人が約120万人なので、4.16%になります。基礎控除額が減額されると、この数字が10~20%になると言われています。例えば、課税価格7000万円、相続人が配偶者と子2人の一般的な家庭の場合、これまでだったら課税対象にならなかったが、新しい基礎控除額でざっくりと計算すると約200万円の納税が必要になります。
相続税対策は、他人事でなくなる日が近いかもしれません。
○ おまけ:相続時精算課税制度利用者数
相続時精算課税制度とは、事前にその手続きをする事によって、生前に贈与した財産を相続したものとして、相続開始時に再計算する制度です。親が65歳以上、子が20歳以上の場合に適用を受けることができます。適用を受けるとそれ以降の贈与財産については、累計2500万円までが課税される、それを超えた部分から一律20%の贈与税が課税されます。
そして、相続開始時に対象財産で再計算を行い相続税額を確定させます。この場合、予め納付していた贈与税額が相続税額より多い場合には還付を受ける事ができます。この制度のメリットは、事業承継など生前に財産を継承させたい場合に、贈与税の負担が軽くなる事が挙げられます。
2010年度の利用者数は相続人ベースで3980人です。
○ おまけ2:相続税の2割加算対象者数
相続税の2割加算とは、配偶者及び1親等(子または親)以外の者が相続財産を受取った場合に、加算されるものです。相続は、本来先祖代々財産や伝統を受け継いでいく行為で、その対象者は子供と配偶者であるべきですだと私は考えています。つまりそれ以外の人は、本来あるべき相続人ではないといえます。もちろん個別の事情があるかと思います。
2010年は14,104人が対象者で、全体の1割ほどでした。意外と多い印象を受けました。
データ出所:相続税課税状況(国税局)
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