【2010年 第1回 “投資助言FP” は新しいFPのスタイル】 金融危機から顧客を守れた理由
岩田 亮 ⇒プロフィール
2007年にサブプライム問題が発覚して以降、資産運用の世界は混乱を極めました。
聞くところによると、多くの金融アドバイザーが顧客資産を守れなかったとのことですが、この現実には特にしっかりと向き合い、「資産運用アドバイスのあり方」を見つめ直すきっかけにするべきだと考えます。
このコラムのシリーズは、従来の投資理論に疑問を呈しつつ、「この過酷な運用環境の下で顧客資産をきちんと守れる投資方法はどこにあるのか?」を追求したものです。
この連載を通して多方面の方々と意見交換をし、時には議論をすることで、この永遠のテーマについて、じっくりと掘り下げることができれば幸いです。
まずは臆せずに申し上げますが、この金融危機の2年の間、私の顧客資産はほとんど棄損いたしませんでした。
でもまあ、それは2年間だけのことですから「たまたま」だったのかもしれません。
しかし、私が表題の「投資助言FP」を志して助言業登録をし、投資アドバイスを極めようと10年以上にわたって投資研究に没頭してきた結果であることも事実です。
私がどのように考え、どう顧客資産を守ってきたのか、これより語り始めますのでまずは聞いてみてください。
今回の金融危機は100年に1度の出来事だからしかたなかった…投資関連の報道などを見ていると、そんな論調も目につきます。
でも私は、今回の出来事をそれほど特別なことだと思っておりません。
例えば今回日本株は6割下げましたが、実はこの20年間で同じような暴落は3回も起こっています。
上のチャートをご覧ください。
そして実際に計算してみてください。
1990年以降の資産バブル崩壊、2000年のITバブル崩壊の、そのどちらも下落率はちょうど6割です。
要するにこんなことはしょっちゅう起こること。当然これからも何度も起こります
。これが証券投資のリスクであり、証券投資(株式や投資信託)をアドバイスするのであれば、こういう暴落が起こっても顧客を泣かせないようにきちんと対応する必要があるわけです。
次回のコラムで書きますが、顧客資産を5割も棄損させてしまうと、ほぼ再起が難しくなって顧客のライフプランを破壊します。
この「大きく資産を減らさない」ことは、老後資金形成などの長期の資産運用サポートにおいて、何よりも重要なポイントだと私は考えています。
また今回の金融危機がショッキングだったのは、単純に株式が暴落したからではありません。
今までの常識では、株式から逃げた資金は債券に流れ込むことになっていましたから、株と債券の双方を持ってさえいれば分散投資の効果を享受することができました。
しかし現在のマーケットは相当に多様化しており、またデリバティブによって資金が大きく増幅されて前例のない動き方をするために、従来の投資理論がまったく通用しないことがわかってしまったというわけです。
2007~2008年にすべての投資信託が(ベア型投信を除いて)暴落してしまったのは、デリバティブの資金が世界中のマーケットから一斉に退散したためでした。
従来の投資理論では、この「マーケットサイズの急激な縮小」という現象は完全に想定外だったのです。
会社の経営戦略などにも言えることですが、商品を開発するにも営業戦略を立案するにも、まずもって重要なのは「環境変化に対応すること」だったはずです。投資運用の環境がこれほど大きく変化をしたのに、投資の理論だけが永遠に不滅…なんてことがあるはずはないのです。
現代ポートフォリオ理論が作られたのは1952年…そう、まさに戦後の話です。
高度成長はここから始まったわけですから、当時は長期投資に勝るアドバイスはありませんでした。
でも21世紀には21世紀の投資環境にふさわしい資産運用アドバイスが必要だというわけです。
そしてきっと今後の資産運用はますます難しくなります。
顧客は次第に「投資助言型のアドバイザー」を求めてこられることでしょう。
すなわち、(分散投資などの)投資の考え方を教えてくれるだけでなく、常に顧客とともにあって、マーケットの変化を常に監視し、リアルタイムに投資行動のひとつひとつをサポートしてくれるアドバイザー、…それが「投資助言FP」です。
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