【2014年 第6回】2014年各国のGDPは? 知っておきたい、投資・経済・金融の考え方
有田 宏 (アリタ ヒロシ)⇒ プロフィール
実質GDPという側面から主要国を見てみます。さらに各国の人口の変化幅は異なります。人口を加味したGDPから、別の側面が見えてくることも有ります。
各国GDPの推移
2014年の世界経済の動向、年末には少し早いですが、主要国の今年のGDPの動向を見てみましょう。
今年は、一般的にアメリカの好調、EU・日本・新興国の低迷という図式だと言われています。それでは、IMFの予測した先進国(G7)と新興国(BRICS)のGDP成長率を見てみましょう。
青い棒グラフはIMFが今年の10月に公表した各国の実質GDP成長率です。先進国ではイギリス、カナダ、アメリカの順に続き、その次がドイツと日本です。フランスは低迷し、イタリアはマイナス成長です。
一方、新興国について、中国とインドは一時の勢いは衰えていますが相対的に高い成長率を保っています。次が南アフリカ、そして、ブラジルとロシアは低迷しています。
GDPを引き上げる要素については、労働、資本、さらにこの2つ以外の要素の全要素生産性(技術革新など)に分けられます。
労働力が増えればそれだけGDPが引き上げられるわけです。もしGDPが増えても、その増加率が労働力の増加率に追いつかなければ、付加価値の一人当たり配分量が少なくなる、すなわち、社会が貧しくなるわけです。実際にその国の潜在的な労働力を計るのは難しい面が有りますので、ここではそれを人口の伸び率に置き換えてみましょう。
グラフのオレンジの棒グラフは実質GDPの成長率から、それぞれ人口の伸び率を差し引いたものです。
要するに、国民一人当たりの実質所得がどれだけ増えたか、国民の豊かさの変化とも言えましょう。
先進国ではイギリスとアメリカの伸び率が高い点は変わりません。次のグループではカナダ、ドイツ、日本がほぼ同じ数字になっています。日本はGDPの成長率そのものは低いですが、人口が減っています。人口減を加味した場合の成長率は逆に高くなっています。イタリアはそもそもマイナスでしたが、次にフランスもマイナスに沈んでいます。
新興国は、中国とインドの趨勢は変わりませんが、南アフリカは、人口の増加率が高いため。人口の伸び率を加味するとほぼゼロとなっています。殆ど人口が増えていないロシアは大きな変化は有りません。ただブラジルはマイナスに転換しています。
まとめとしては、先進国は英米が好調、ユーロ圏ではドイツと南欧のフランス、イタリアの2極に分かれ、日本は消費税引き上げ前の駆け込み需要もあり、意外と手堅い数字となっています。新興国では中国、インドは成長率が落ちたとはいえ高い水準を維持する一方、ブラジル、ロシア、南アフリカの資源国は非常に低迷していると言わざる負えません。
まとめ
このようにGDPとは言っても、人口の伸び率を加味すると違ったものが見えてきます。ただ、これが国民の豊かさをそのまま表しているかと言えるかどうかは疑問が有ります。それぞれ貿易取引を行っていますので、為替レートの変動も国民の生活に大きな影響を及ぼします。
今回は2014年だけを見ましたが、過去の趨勢から比べてみてもまた違う見方が出てきます。中国は非常に高い伸び率ですが、過去には14%以上の成長率の時期が有りました。そこから比較すると、中国の国民にとり2014年は豊かさが大きく増えた、という実感には乏しいかもしれません。
このように数字というものは、その結果だけではなく他のデータで加工してみると違う側面もまた見えてきます。いろいろな角度から分析してみるのも面白いでしょう。また、表面的なデータのみにとらわれて、それで一喜一憂するのも、裏で動いている重要な底流を見逃すことにもなりかねません。
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