財務諸表を理解しよう!貸借対照表編(2)【2015年 第3回】

【2015年 第3回 財務諸表を理解しよう!貸借対照表編(2)】 イメージ図で理解すると投資指標って簡単!

伊藤 美恵 ⇒プロフィール

 

 

せっかく参加した株式セミナーで聞いたことに対して、理解出来ないと感じたことはありませんか?その原因のひとつが、実は投資指標なのです。投資指標が理解出来るだけで、難しいと感じるハードルは、ずっと低くなります。では、どうしたら、投資指標を理解出来るのでしょうか?投資指標を理解するためのベースになるもののひとつ、貸借対照表について、先月に引き続き、学んでみましょう。

 

企業の総資産と純資産とは?

先月に引き続き、貸借対照表について学んでみましょう。負債は借金なので、企業の運営資金としての借入れだとイメージが沸くかと思いますが、総資産と純資産とは何でしょうか?一般家庭に置き換えて見てみましょう。

 

 

 

 

 

 

総資産というのは、現金・預金・保険・投資資産・土地などを指します。つまり、私たちが財産だと思っているものです。これを総資産と言います。

そして、住宅ローンや自動車ローン、教育ローンなどの借金は負債と言います。私たちが財産だと思っている総資産から負債(借金)を引いたものを、純資産と言います。純資産が、本当の意味での財産かもしれませんね。

なお、企業の場合、総資産のイメージは一般家庭とあまり変わりません。つまり、今、企業が保有しているすべてが、総資産に書かれているということです。しかし、企業にとっての純資産は、一般家庭とは少しイメージが異なります。

 

企業というのは、資金を調達し資金を運用しています。なお、資金の調達方法は2通りあります。まず1つ目の調達方法は、借金をして資金を調達する方法です。借金をして資金を調達すると、貸借対照表の右側に位置する「負債」が増えます。そして2つ目の調達方法が、一般家庭とは少しイメージが異なる純資産です。自分の持っている自己資金から調達したり、そして事業で稼いで資金を調達したりするところは、一般家庭と同じですが、企業の場合はこの2つ以外に、株主からお金を集めて資金を調達する方法があります。「純資産」も貸借対照表の右側に位置しています。

(補足:貸借対照表の左側に位置する「総資産」のことを、専門用語では「借方(かりかた)」と言い、右側に位置する負債と純資産のことを「貸方(かしかた)」と言います。)

 

企業は、貸借対照表の右側に位置する「負債」や「純資産」より資金を調達し、左側に位置する「総資産」へ投資します。スーパーなどの小売店であれば、貸借対照表の右側に位置する借入金、自分の持っているお金、株主から集めたお金、事業で稼いだお金などより資金を調達します。次に、貸借対照表の左側に位置する総資産の中で、商品を仕入れて在庫にし、そしてそれを売り上げたら売掛金や現金となり、またその現金で商品を仕入れるというようなイメージで、資金が循環していくのです。スーパーの貸借対照表の総資産には、商品、売掛金、現金という項目が存在しています。そして、決算日時点で会社の運用が上手く進めば総資産が増え、運用が上手くいかないと総資産が減ることとなります。

健全な企業の貸借対照表とは?

調達した資金を総資産にて運用し、資金を増やした企業は、総資産を増やすことができます。【図1 利益が増えた企業の貸借対照表】をご覧ください。総資産が増えた分だけ、純資産を構成している利益剰余金が増えることにより、更に純資産も大きくなるのです。こちらが、健全な企業の貸借対照表です。投資するなら、このような貸借対照表の企業が理想的であり、せめて3期分の貸借対照表を見て、毎年、利益や総資産を増やしている企業かどうかを確認しましょう。

 

 

 

 

 

 

 

欠損金が発生企業の貸借対照表とは?

では、【図2 欠損金が発生した企業の貸借対照表】をご覧ください。こちらは、人間で言うならば、ガンの初期を宣告され、手術すれば治る可能性がある段階というところでしょうか。調達した資金を運用した結果、資金を減らしてしまった場合は、欠損金が発生することにより、総資産が減ってしまうのです。欠損金があるということは、損益が赤字であるという意味です。欠損金が発生すると、場合によっては、将来の業績が不安定な状況になるのではないかと推測する必要が出てきます。

 

なお、2期、3期と赤字が続いている場合は、注意が必要となってきます。毎年赤字が続くということは、年々、純資産が減少し、したがって企業の財政状態が悪化していくということを示しているのです。ただし、多くあった欠損金が毎年減ってきている場合は、改善の兆しが見えている可能性がありますが、欠損金の金額だけでは判断ができません。合わせて、損益計算書やキャッシュフロー計算書、場合によってはIR情報(投資家向け情報等)も詳しく確認する必要があります。

 

 

 

債務超過に陥った企業の貸借対照表とは?

純資産の範囲内での欠損金ならば、まだ企業を解散してもお釣りが来ますが、企業が保有している純資産よりも欠損金が多い場合、企業は債務超過に陥ります。【図3 債務超過に陥った企業の貸借対照表】をご覧ください。つまり、総資産を全て売却しても、負債を全額返済することが出来ないことを意味し、企業は大変に危険な状態です。なお、債務超過が2期続くと、株式市場では上場廃止となります。この債務超過に陥った貸借対照表の企業は、投資不適格だと判断します。

 

 

 

 

 

 

いかがですか?これで、貸借対照表のイメージも何となくご理解頂けたのではないでしょうか。

次回は財務諸表(決算書)のひとつである「損益計算書」についてお話します。

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