【2015年 第7回 財務諸表を理解しよう!キャッシュフロー計算書編(2)】 イメージ図で理解すると投資指標って簡単!
伊藤 美恵 ⇒プロフィール
せっかく参加した株式セミナーで、聞いたことに対して理解出来ないと感じたことはありませんか?その原因のひとつが、実は投資指標なのです。投資指標が理解出来るだけで、難しいと感じるハードルは、ずっと低くなります。では、どうしたら、投資指標を理解出来るのでしょうか?投資指標を理解するためのキーポイントは、財務諸表を理解するのが近道です。今回も引き続き、キャッシュフロー計算書について、学んでみましょう。
投資キャッシュフローとは?
前回、キャッシュフロー計算書には3種類のキャッシュフローがあるとお話しましたね。二つ目は投資キャッシュフローです。言葉の通り、投資活動に関わるキャッシュフローです。例えば、設備投資や余剰資金などによる有価証券などでの運用などです。投資キャッシュフローは、殆どプラスになることはありません。ここの数値は、企業の未来のために、いくら投資しているかを示しています。企業とは、設備投資をすることで、本業で利益を生み出し続けていくものです。未来の企業のためにお金を使うという投資をすれば、投資キャッシュフローがマイナスになるのです。それが、設備投資であれば、投資キャッシュフローはマイナスになるかもしれませんが、本業で稼ぐ力に転換できれば、将来的に営業キャッシュフローが増えることに繋がるのです。
なお、有価証券や固定資産を売却した場合は、キャッシュが入ってくるため、投資キャッシュフローはプラスになります。しかし、投資キャッシュフローがプラスになった場合は、一概に喜んではいけません。その増えた理由が何であるかが重要なのです。積極的に、投資をした結果、投資キャッシュフローが増えたのであれば、問題はないかもしれません。もちろん、本業がプラスであることが前提です。本業が上手くいかず、本業にうつつを抜かし、マネーゲーム的な投資活動をした結果、投資キャッシュフローが増えたのであれば、一時的なものと判断せざるを得ません。
営業キャッシュフローが増えたのであれば問題ありませんが、通常は設備投資などによりマイナスになる投資キャッシュフローがプラスの場合、なぜプラスになったかの原因を調べなくてはなりません。営業赤字のため、保有していた有価証券や土地を売却し、企業がキャッシュを調達していることがあるからです。5月のマイアドコラム「貸借対照表と損益計算書の繋がり編」でも、この辺りについてお話しましたね。特別利益での増収、つまり売却できる資産にも限りがあります。売却できるものが無くなった時から、純損失が出ることとなります。だからこそ、毎年、本業で生み出す収益が大切なのです。この特別利益の内容は、損益計算書だけではなく、キャッシュフロー計算書の投資キャッシュフローでも確認することが出来るのです。
財務キャッシュフローとは?
三つ目は財務キャッシュフローです。言葉の通り、財務活動に関わるキャッシュフローですが、借入れや増資などが関係しています。借入れ(金融機関からの融資や社債発行など)や、株式発行などの増資を行った場合は、財務キャッシュフローはプラスになります。そして、借入れの返済や社債の償還、自己株式取得による支出(自社の株式を買い戻すための支出のこと)があった場合は、財務キャッシュフローはマイナスになります。
ここでのポイントは、財務キャッシュフローがプラスに転じた場合、将来的に返済の必要のある借入れによるものなのか、将来的に返済の必要としない増資によるものなのか、確認しなければなりません。もし、財務キャッシュフローが借入によるプラスの場合、その借入れが企業にとって前向きな姿勢での借入れなのか、それとも企業にとって後ろ向きの姿勢での借入れなのかを調べなくてはなりません。例えば、営業キャッシュフローが大きくマイナスに転じた時、財務キャッシュフローが急に増えた場合は注意が必要です。もしかすると、資金繰りのために、増やした借入れを充てて、一時的にその場を凌いだ可能性も考えられるからです。
最終的には有価証券報告書を確認しよう
なお、キャッシュフロー表のみでプラスになった理由やマイナスになった理由を判断することは正直難しいと思いますので、企業の有価証券報告書と一緒に確認しましょう。有価証券報告書は、企業のホームページのIR情報等より確認することができます。有価証券報告書には、各キャッシュフローがなぜプラスになったのか、マイナスになったのかの詳細が【事業の状況】欄に文章できちんと記載されておりますので、目を通してみると良いでしょう。
さて次回は、「フリーキャッシュフロー」についてお話します。
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