【2015年 第12回 株価純資産倍率(PBR)実践編】 イメージ図で理解すると投資指標って簡単!
伊藤 美恵 ⇒プロフィール
せっかく参加した株式セミナーで、聞いたことに対して理解出来ないと感じたことはありませんか?その原因のひとつが、実は投資指標なのです。投資指標が理解出来るだけで、難しいと感じるハードルは、ずっと低くなります。今月は、株価純資産倍率(PBR)の実践編ということで、実在する企業の株式を取り上げて説明したいと思います。
最近の株価純資産倍率(PBR)の傾向
株価純資産倍率(PBR)とは、「株価」が「1株当たりの純資産」の何倍の水準を表すかを見る指標でしたね。株価純資産倍率(PBR)は、企業の実際の企業価値、つまり帳簿上の純資産と株価を比較しているものであり、通常は、直近の帳簿の純資産を利用します。まず、純資産を発行済株式数で割って、1株当たり純資産(BPS)を求めます。その後、株価が一株当たり純資産の何倍の水準か求めるのです。
最近は自社株を除く発行済株式数で1株当たり純資産(BPS)の計算をするのが一般的となりました。自社株を買う企業は、様々な理由が考えられますが、代表的なものは、株主に対する還元をしようと自社株を買って消却をすることです。自社株を買うことにより、市場で出回っている株式の1株当たりの純利益を増やすことができるのです。もちろん、株価純利益(PER)も割安になりますし、純利益が増えれば配当の原資にもなります。そのため、実態に近づけるために、実際は自社株を除く発行済株式数で1株当たり純資産(BPS)を求めるのです。
株価純資産倍率(PBR)の求め方
今回もサービス業である(株)オリエンタルランド(4661)の株価純資産倍率(PBR)を見てみたいと思います。ディズニーリゾートなどを経営する(株)オリエンタルランドの株価純資産倍率(PBR)の指数はどうなっているのでしょう。(オリエンタルランドの詳しい業務内容については、2015年10月のマイアドコラムをご覧ください。)
今回は、皆様が比較的に情報を取得しやすいYahoo!ファイナンス及び、オリエンタルランドHPより、数値等を引用させて頂きました。もし、yahoo!ファイナンスにないデータがありましたら、企業のHPに必ずIR情報がありますので、有価証券報告書や決算短信などを見てみましょう。今回は、自社株を除く発行済株式数が分かりませんでしたので、直近の決算短信より引用してきました。第2四半期末自己株式数が334,130,783株でした。なお、①~⑤の数字が入っているものは、上記データの数字を用いています。今回は、ほぼ全てのデータが計算された形でHP上にて公開されております。計算したのは、自社株を除く発行済株式数のみでした。一応、こんな風に計算されていることを皆さんに想像して頂く為に、図と計算式をご紹介します。
まず①第2四半期決算短信時純資産・③実績BPSと④実績PBR・⑤株価終値がそれぞれ、Yahoo!ファイナンスへ記載されており、②自社株を除く発行済株数もオリエンタルランドHPに記載されていますので、イメージ図に当てはめてみましょう。592,275百万円(第2四半期決算短信時純資産)を334,130,783株(自社株を除く発行済数)で割ると、約1,772,58円(1株当たりの純資産)です。
592,275百万円(第2四半期決算短信時純資産)÷334,130,783株(自社株を除く発行済数)≒1,772,58円(1株当たりの純資産)
1株当たりの純資産(BPS)が求められたら、「⑤株価÷③1株当たり純資産(BPS)」で計算すれば、④株価純資産倍率(PBR)が簡単に計算できます。
7,100円(株価)×1,772.58円(1株当たり純資産)≒4.01倍(株価純資産倍率)
比較検討しよう
株価純資産倍率(PBR)が1倍を割るということは、1株当たりの純資産より株価が低い状態であることを指します。1株当たり純資産は、企業が解散した時に、名目上、株主が受け取れる1株当たりの金額です。株価純資産倍率(PBR)が1倍割れの場合は、株価よりも現時点で企業を解散した時に、株主が受け取ることができる金額の方が高い、すなわち、株価が割安であることを示しています。
ただしあくまでも、万が一、企業が解散した場合、株主よりも債権者(企業にお金を貸している金融機関や、社債を保有している人等)が優先されますので、あくまでも名目上です。なお、株価純資産倍率(PBR)だけの指標で投資を判断しないことです。なぜならば、株価純資産倍率(PBR)は、過去の純資産を元に計算したものであり、将来の成長力も利益の見通しも反映しているデータではないため、様々な他の投資指標と共に利用してください。
また、比較検討は同業他社と比べてください。他の業界の指標と比べても仕方がありません。
今回は同業他社と比較はしておりませんが、株価純資産倍率(PBR)の目安の指標(1倍)と比較すると、(株)オリエンタルランドの株価純資産倍率(PBR)は4.01倍と、割高であることが分かります。なぜ割高なのかと考えると、前回の説明と同様でオリエンタルランドの株式は人気があるからです。すなわち、株式は人気投票と同じなのです。人気が高い株は、高値が付くのです。
まとめ
イメージ図を、実際の企業で試してみましたが、いかがでしたか?株価純資産倍率って、意外と簡単だと思えませんか?まずは、前回お話した株価収益率と共に、様々な企業の株価純資産倍率も併せて見て、沢山イメージして株価純資産倍率(PBR)も攻略してみてくださいね。
次回は、配当利回りと配当性向(基礎編)についてお話致します。
この記事へのコメントはありません。