【2011年 第3回】銀行に預金していて損することがある? ~投資初心者~
長谷 剛史(ハセ タケシ) ⇒プロフィール
銀行に預金していれば、絶対に損することはないのでしょうか?超低金利時代とは言え数字上お金は増加しますが、実際の価値も増加しているのかどうかを考える必要があります。今回は、運用利回りとインフレ率について一緒に考えていきましょう。
まずは、インフレについて見ていきます。インフレとは、「モノの値段が上がり、お金の価値が下がること」です。現在100万円の自動車を購入しようと思えば、現金100万円用意すれば購入することができます。それでは、1年後に購入しようと思い現金を銀行の1年定期に預けた場合を検討してみましょう。
仮に1年定期の金利が0.5%だったとすると、1年後の現金は100万5千円になります(税金は考慮せず)。一方、同じ1年間に物価が1%上昇すると、1 年後の自動車は101万円になります。それでは1年後、100万5千円の現金で101万円の自動車を購入することができるでしょうか?これがインフレリスクです。(下記参照)
現 在 : 現金100万円 自動車100万円
↓金利0.5% ↓物価1%上昇
1年後 : 現金100万5千円 自動車101万円
運用利回りとインフレとの関係ですが、運用利回り2%を達成できたとしてもその間のインフレ率が3%であれば、実質的な利回りは-1%になってしまいます。つまり、インフレ率を上回る運用利回りを確保できなければ、実際のお金の価値は目減りしてしまうことになります。
過去100年の世界の先進国のインフレ率は2~3%ですので、この率で物価が上昇し続けると約30年で物価が倍になります。日本も例外ではなく下記の通り物価が上昇しています。
1970年
2005年
米10kg 1,860円 ⇒ 4,080円
ビール大瓶1本 132円 ⇒ 337円
旧国鉄運賃(50キロ) 210円 ⇒ 820円
また、インフレは、私達が将来受け取る老齢年金にも影響が出ます。昔は物価が1%上昇すれば、受け取る年金も完全物価スライドで1%上昇しました。お金の 価値が目減りすることはなかったわけです。ところが、小泉改革により今後の年金制度維持を考え、物価スライド制からマクロ経済スライド制に変更されまし た。つまり、物価が1%上昇しても受け取る年金は1%上昇しない仕組みになりました。
ここ最近の日本は、デフレ(「モノの値段が下がりお金の価値が上がること」)の状況ですので、インフレリスクは理解しにくいかもしれません。しかし、これだけ長くデフレが続いている国は世界でも例がありませんので、今後は物価が上昇していくことが予想されます。
結論として、インフレリスクを考えると銀行に預金していても損することがあります。また、受け取る年金も目減りする可能性が高いわけですから、好む好まざるとに関わらず投資が必要な時代になっているのではないかと思います。最低でもインフレ率を上回る運用利回りを目指す必要があります。
次回は投資の3つのポイントについて解説しますので、楽しみにお待ちくださいね。
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