コモディティ投資の新しい形―TOCOM NEXT(トコム・ネクスト)の活用方法 【yahoo!コラム転載 2010年 6月掲載】

本コラムは、2010年4月~2014年6月に「Yahoo!Japanファイナンス マネー」にて連載された マイアドバイザー®連載コラムのバックナンバーになります。

執筆者名:ファイナンシャル・プランナー 三次理加

TOCOM NEXTとは

3月23日、東京工業品取引所(以下、東工取)に「日経・東工取商品指数先物」が上場されました。日経・東工取商品指数とは、東工取に上場している原油や金など9商品から算出される総合的な商品指数のこと。配分比率は、金など貴金属がおよそ37%、原油などエネルギーがおよそ59%です(グラフ参照)。この指数を対象とした先物取引が「日経・東工取商品指数先物取引」で、愛称は「TOCOM NEXT(トコムネクスト)」。ちなみに、TOCOMとは東京工業品取引所の英文表記でTokyo Commodity Exchange, Inc.の略称。「TOCOM NEXT」という愛称は、同指数が東工取の次世代ラインナップの中核となることや、既存の投資商品にはない新しい投資環境を提供する、という意味を込めてつけられたそうです。

株の場合、個別銘柄の分析を行って投資をするのは大変。一方、株価全体の先行きを予測して投資するのであれば、日経225ミニ先物などで売買を行うことが可能です。同様に、原油や金など個別商品の分析を行って投資をするのは一般の投資家には難しいこと。今までは、商品全体の値動きを表す総合的な商品指数は、国内には上場されていませんでした。でもこれからは、商品全体の先行きを予測して投資したいと思えば、TOCOM NEXTで売買を行うことが可能となります。

TOCOM NEXTの特徴

TOCOM NEXTの一1番目の特徴は「決済期限がない」ということ。ここが従来の商品先物取引とは異なる点です。そのため、FX取引と同様に長期的視点に立った投資を行うことができます。

2番目の特徴は、通常の商品先物同様に、今後、指数が上昇すると思えば「買い」から、指数が下落すると思えば「売り」から取引を行うことができるということ。

3番目の特徴は、「証拠金」という少ない資金で大きな取引ができるということ。証拠金に対する総取引金額の倍率も日経225ミニ先物と同程度。日経225ミニ先物の場合、最小取引単位である1枚あたりの総取引金額は、同先物価格を100倍して算出します。たとえば、同先物価格が10,500円の場合、1枚あたりの総取引金額は、10,500円×100倍=105万円。仮に証拠金4万円程度※ とすれば、証拠金に対しておよそ26倍規模の取引となります。※会社により異なる。一方、TOCOM NEXTの場合、最小取引単位である1枚あたりの総取引金額は、同指数値を5,000倍して算出します。。たとえば、日経・東工取商品指数が280ポイントの時、1枚あたりの総取引金額は280ポイント×5,000倍=140万円。証拠金は6万円程度※ なので、証拠金に対しておよそ23倍規模の取引を行うことができます。※会社により異なる。

6万円程度の証拠金でおよそ140万円規模の取引をするのですから、当然、価格変動リスクは大きなものになります。たとえば1枚売買した場合、±0.1ポイントの価格変動では、±0.1ポイント×5,000倍=500円の損益が発生します。仮に、280ポイントの時に1枚買ったとしましょう。その後、20ポイント上昇し300ポイントとなった時に決済すれば、利益は20ポイント×5,000倍=10万円。逆に20ポイント値下がりし260ポイントとなった時に決済すれば、損失は-20ポイント×5,000倍=-10万円。でも、取引する際に必要とした証拠金は6万円。ということは、決済した結果、4万円の資金不足!ということになってしまいます。
そのため、通常の商品先物取引やFX取引と同様、追証拠金(おいしょうこきん)制度があります。仮に6万円の証拠金の半額である3万円を超える含み損失が発生した場合には、含み損失の範囲内で取引会社が請求する額(=追証(おいしょう)という)を入金するか、または取引を決済するかのどちらかを選択しなければなりません。取引に際しては、仕組みやリスクを十分に理解しておく必要があります。

TOCOM NEXTの活用

日経225ミニ先物やFX取引と同様の感覚で取引できるTOCOM NEXT。頻繁に売買したい投資家向けかといえば、そうでもありません。2010年5月20日現在、国内には商品に投資する投資信託が50本程あります。もし、100万円規模でこれらの投資信託を購入することを検討しているのであれば、代わりにTOCOM NEXTを1枚買っておく、という方法もあります。

たとえば、指数が280ポイントの場合、280ポイント×5,000倍=140万円の総取引金額を入金して1枚買います。理論上、指数値は0ポイント以下にはなりません。そのため280ポイントで買った場合、最大の損失は、-280ポイント×5,000倍<-140万円。つまり、140万円を上回る損失は発生しません。たとえ追証が発生しても既に入金した総取引金額の範囲内となるため、追加資金を入金する必要はありません。

商品に投資する投資信託は、約3%の購入手数料※のほか、運用中は0.68~2.30%の信託報酬、解約時には約0.5%の信託財産留保金※などのコストがかかります。一方、TOCOM NEXTのコストは売買手数料のみ。オンライン口座であれば1枚片道500円程度※です。コストが安く済む分、商品価格上昇時の果実利益も増える可能性が高くなります。※会社により異なる。

投資スタイルにあわせて売買できるTOCOM NEXT。コモディティ投資の新しいカタチが始まった、といえるかもしれませんね。

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